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探し人の影
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戦いが終わり、村人の避難と治療を手伝っていたリーシャンとユユノが戻ってきた。
村は建物がいくつか壊れ、村人も怪我人こそ出たが、幸いにも死人は出なかった。
結界と、二人の力に救われたのである。
激しかった戦闘を終え、村の周囲はすでに静けさを取り戻していた。
三人は訝しげに、動かなくなったドラゴンの体を見上げる。
「なかなか消えないんだけど……」
「魔獣は倒すと消滅するのが普通なのに。ディスクゥドも例外じゃないのよね? ユユノにも理由はわからないの?」
「さっぱり。まだ生きてるとか?」
冗談めかして言う。
するとデュラウは、冗談とわからず真面目に答えた。
「馬鹿を言うな。手応えはあった。首は切り落としたし、この血も本物だ。まさか首と胴体を離されて、まだ生きているなど──」
『まだ生きておる』
返り血で全身真っ黒なデュラウの反論する言葉を遮り嘲笑うように、首だけとなったドラゴンが唐突に喋った。
三人は驚愕の表情を浮かべながらも、武器に手を伸ばし身構える。
だが、切り離されたドラゴンの体が動くことはなかった。残った頭は何をするでもなく、口だけが動き言葉を発する。
『もう戦えはしない。我の体は強い生命力を宿していた。ゆえに首を落とされても、まだ生きているだけに過ぎない。しかしそれも長くは続かぬ。意識が途絶えたとき、そのまま死ぬこととなるだろう。非常に口惜しく恨めしいが、もはや一矢報いることも不可能』
淡々と告げられた言葉が真実であることは一目瞭然だった。
三人は警戒を解き、武器から手を離した。
『まさか人間一人に敗れようとは……』
ドラゴンは苦々しい口振りで言った。
『我の六もの分身体を倒したのにも得心がいく』
「えっ……分身体? 何それ?」
ユユノが驚き顔で二人を見やる。彼らも首を傾げるばかりだった。
ドラゴンは気にせず言葉を続けた。
『我の分身体が倒されたことを察知し、何事か調べるために向かわせた者共も帰らず、ならばと全戦力を投入したが全滅させられたと聞き、我自ら出向いたのだが……失敗だった。今にして思えば、他の手を取るべきだったと考えさせられる』
大剣のように大きく鋭い歯を全力で噛み締める。ギリギリと歯軋り音が響いた。強い後悔が顔だけで伝わるほどだった。
ドラゴンが告げたのは、四人が村に訪れてから起きた三つの戦い、その真実だった。
そして露わになる一つの欠落、ドラゴンの分身体との戦い。
四人の関与していない謎の戦いこそが、昨日から続く戦闘の火種だった。
降って湧いたような疑問に、三人は何やら考え込んでいた。
意を決して訊ねようとするユユノ。
「ねぇ、その分身体を倒したのって――」
しかし、その言葉はまたしても遮られてしまう。
『あぁ……もう意識が持たぬ。時間切れか。無念……』
「ちょ、ちょっと待って!」
制止の声を投げ掛けるユユノを無視し、
『魔王様……申し訳ありません……』
そう言い残し、長く残った息をとうとう断った。
すると、ドラゴンは光の粒子となり天に昇っていき、いずれ消えた。あっという間に、山のように大きな姿が消滅し、風景には少しばかりの寂しさが残った。遮る物がなくなり、代わりにすっかり陽が落ちた、星を散らす紺色の薄暗い空がお目見えする。
未だに残っていたドラゴンの吐いた炎による熱を、冷たい一陣の風が払う。夜風が運び込んだのは冷気だけではなく、静寂もだった。
残った三人は少しの間、黙っていた。
数秒間の沈黙。
三人はどこかソワソワしていた。
やがて耐え切れないとばかりに口を開く。
「──ひょっとして」
「──いや、間違いなく」
「──彼ね」
ユユノ、デュラウ、リーシャンは顔を見合わせた。
そして小さく頷き合う。
村は建物がいくつか壊れ、村人も怪我人こそ出たが、幸いにも死人は出なかった。
結界と、二人の力に救われたのである。
激しかった戦闘を終え、村の周囲はすでに静けさを取り戻していた。
三人は訝しげに、動かなくなったドラゴンの体を見上げる。
「なかなか消えないんだけど……」
「魔獣は倒すと消滅するのが普通なのに。ディスクゥドも例外じゃないのよね? ユユノにも理由はわからないの?」
「さっぱり。まだ生きてるとか?」
冗談めかして言う。
するとデュラウは、冗談とわからず真面目に答えた。
「馬鹿を言うな。手応えはあった。首は切り落としたし、この血も本物だ。まさか首と胴体を離されて、まだ生きているなど──」
『まだ生きておる』
返り血で全身真っ黒なデュラウの反論する言葉を遮り嘲笑うように、首だけとなったドラゴンが唐突に喋った。
三人は驚愕の表情を浮かべながらも、武器に手を伸ばし身構える。
だが、切り離されたドラゴンの体が動くことはなかった。残った頭は何をするでもなく、口だけが動き言葉を発する。
『もう戦えはしない。我の体は強い生命力を宿していた。ゆえに首を落とされても、まだ生きているだけに過ぎない。しかしそれも長くは続かぬ。意識が途絶えたとき、そのまま死ぬこととなるだろう。非常に口惜しく恨めしいが、もはや一矢報いることも不可能』
淡々と告げられた言葉が真実であることは一目瞭然だった。
三人は警戒を解き、武器から手を離した。
『まさか人間一人に敗れようとは……』
ドラゴンは苦々しい口振りで言った。
『我の六もの分身体を倒したのにも得心がいく』
「えっ……分身体? 何それ?」
ユユノが驚き顔で二人を見やる。彼らも首を傾げるばかりだった。
ドラゴンは気にせず言葉を続けた。
『我の分身体が倒されたことを察知し、何事か調べるために向かわせた者共も帰らず、ならばと全戦力を投入したが全滅させられたと聞き、我自ら出向いたのだが……失敗だった。今にして思えば、他の手を取るべきだったと考えさせられる』
大剣のように大きく鋭い歯を全力で噛み締める。ギリギリと歯軋り音が響いた。強い後悔が顔だけで伝わるほどだった。
ドラゴンが告げたのは、四人が村に訪れてから起きた三つの戦い、その真実だった。
そして露わになる一つの欠落、ドラゴンの分身体との戦い。
四人の関与していない謎の戦いこそが、昨日から続く戦闘の火種だった。
降って湧いたような疑問に、三人は何やら考え込んでいた。
意を決して訊ねようとするユユノ。
「ねぇ、その分身体を倒したのって――」
しかし、その言葉はまたしても遮られてしまう。
『あぁ……もう意識が持たぬ。時間切れか。無念……』
「ちょ、ちょっと待って!」
制止の声を投げ掛けるユユノを無視し、
『魔王様……申し訳ありません……』
そう言い残し、長く残った息をとうとう断った。
すると、ドラゴンは光の粒子となり天に昇っていき、いずれ消えた。あっという間に、山のように大きな姿が消滅し、風景には少しばかりの寂しさが残った。遮る物がなくなり、代わりにすっかり陽が落ちた、星を散らす紺色の薄暗い空がお目見えする。
未だに残っていたドラゴンの吐いた炎による熱を、冷たい一陣の風が払う。夜風が運び込んだのは冷気だけではなく、静寂もだった。
残った三人は少しの間、黙っていた。
数秒間の沈黙。
三人はどこかソワソワしていた。
やがて耐え切れないとばかりに口を開く。
「──ひょっとして」
「──いや、間違いなく」
「──彼ね」
ユユノ、デュラウ、リーシャンは顔を見合わせた。
そして小さく頷き合う。
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