君の眼と精神

鈴鳴

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その日はすごくいい天気で、太陽の明るさに何かがふと照らされて目の当たりにするみたいだった。
そこにいるとあの日見た光景が何だったのか、いや、眩しければ眩しいほどきっと光を遮る影は濃く落ちて正体なんてわかるわけないと思うのに、頭の中に焼きつくようで恐ろしくなって僕は部屋を出た。
どこへ行く当てもなかったけどどこでもいいってほど自由でもなかった。この辺りには民家も少ないし、あっても昔から住んでいる人たちの瓦葺きの一軒家で、僕みたいな大きな背の男がのそのそ歩いていたって近所の年長者たちは誰も気に留めないだろうけど、だからこそ彼らの庭をふらつく不審者には歩ける地面も少なかった。
影が道に伸びるのだってどこか気が憚った。
その影の中を不意に白い猫が横切った。
この辺りに野良猫はあまりいない、けれどどの家も猫を外で放し飼いにしていて、珍しいわけじゃなかったけどその毛並みの白さと体の細さを美しいと思って僕はふらふら追いかけた。
ついていくのを待ってくれるみたいに水路沿いを猫は軽やかに歩いては駆け足になり、またゆっくりと歩いて、気づいたらよく歩く海辺の近くにまで来てしまっていた。この海は夜になると恐ろしげだけど、今はまだ明るくて、波の白と浜の砂に薄緑や光の反射が揺れていた。電車の中からこの景色を見るためにわざわざ路線を利用する電車マニアなんかもいるらしかった。歩く。線路沿い。赤い花が咲いている。緑と薄緑と白と、砂と影と、赤。白い猫が線路を横切った。踏切だ、海を背景に白い猫がいて、
踏切はもう既に降り切っていたけど、僕は猫を追いかけて線路の中に立った。
音が大きく響いて、膨張し…

「危ない!」

その音が 他の全部の音を掻き消して
僕の体は踏切の向こうまで突き飛ばされた。
空がひっくり返る 倒れ込む体、打ち付けられる 飛び散る 見開いた眼
そこに写ったのは、
割れるように勢いよく咲いた 赤い花だった。
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