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大人になったらキスをあげよう
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クレイグはため息をついた。
雪が降ると心が締め付けられるような気分になる。小さい頃は好きだった雪の日も、大人になってからは憂鬱にしか感じられなかった。
そして今日は、少し傷心気味でもある。
「クレイグ? 何考え込んでんだよ、ガラじゃないな」
窓に映ったウィルは、マフラーを巻いて暖かそうにしている。いま帰ってきたところだろう。ドアの開閉する音にすら気づかなかったのだから、相当耽っていたらしい。クレイグは窓の外を落ちていく雪の粒を眺めた。
「いや、小さい頃は雪の日が楽しみだったのに、いまじゃこんなに憂鬱だなと思ってさ」
「オレは今も好きだけど? いいじゃん、綺麗だしなんか特別な気分になる。まぁここじゃ量が多すぎて特別感は少し薄れたけど」
ウィルは元々、この国の中でも雪の少ない地方に住んでいた。だから特別雪が嬉しかったのだろう。クレイグは北寄りの寒い地域だったから、それほどの特別感は元々なかった。
「俺の地元はもっと降るぜ。お前なんか雪に埋まるくらいにな」
「オレが埋まったらお前もほとんど埋まるだろ」
「それもそうだ」
ウィルはマフラーを解いてコートを脱いだ。深いニットの色はウィルによく似合う。クレイグもカーテンを閉め、うんと背伸びをした。
ウィルの部屋にウィルがいないときに入っているのも、もう気にならないほどになってしまったらしい。居心地の良すぎるウィルの部屋は、今ではクレイグの部屋と言っても過言ではなかった。
「お前、なんか今日落ち込んでんの?」
ウィルが靴下を脱ぎながら尋ねてきた。手に持っている靴下は雪で濡れてしまっている。ウィルも足先の冷たさを気にしているようだ。
「……なんで?」
「なんか、元気ないように見えるから」
根拠がないわけではない。でもそれは形にならず、とても不確定だということだろう。ウィルは根拠のないことは言わないが、それでも聞いてくるということは、不確定な根拠にみえるそれも、ウィルには確かに映っているのだろう。
「まあ、……ちょっとね」
「ふうん。飯は? もう食った?」
「ああ」
「ならよかった。オレも食ってきたから」
そういってウィルはニットとその下に着ていた襟シャツを脱いだ。クレイグは上裸のウィルを眺める。そういえば一時期、この背中が好きで水泳部に毎日遊びに行っていた時期があった。たとえば外周の途中で抜け出したり、部活終了後に一緒に帰ろうと誘いに行ったり。だいたいいつも水泳部は終わるのが遅くて、ウィルが泳ぐのをいつも見ることが出来た。そしてその背中に、いつか肌を合わせたいと思ったこともあった。
今はもう覚えていないだろうが、クレイグをそうさせたのはまぎれもなくウィルだった。
いつものようにプールの外で待ち合わせをしていた。あれは高校3年生の、秋だった。
「悪い、待たせた」
「いや」
同じ塾に通っていたこともあって練習のない日以外は一緒に帰っていた。いつも少し、ウィルが遅れてくるのだ。柔らかい夕陽に照らされて、2人で並んで歩いていた。
ウィルが少し、落ち込んでいたのを知っている。それは無論、女子たちの専らの噂になっていたからだ。
「どう? 独り身になった感想は」
「……正直、楽だと思う。でも、彼女に対する罪悪感は重いな」
「なんでもうダメだって思ったんだ?」
「多分オレ、すごい夢想家なんだ。なんていうか、やっぱり彼女とキスするにしても抱き合うにしても、本当に心から愛してなきゃダメだって思っちゃって」
ウィルが言葉を選ばずに喋っているのがわかる。これが本音なのだろう。
クラスの殆どが公認していたから、破局の波紋が大きいのはわかっていたはずだ。それでもウィルが選んだのなら、それ以上の結果はないのだろう。
「ふうん」
「心の距離が遠かったんだ。彼女には何も話せなかった。オレのいまのところの結論である心の距離とキスの感覚が比例するなら、お前とキスした方がずっといいと思えるくらいなんだよ」
そう言い放ったウィルの横顔が夕陽に照らされる。そこに嘘や偽りはない。純粋に思ったことを親友に打ち明けた青年の顔だった。
「……もしお前が大人になったとき、そういうキスを経験してなかったら、俺がしてやるよ。そしたら、証明出来んだろ?」
「ならそれまでに、経験しとかないとな」
そういって無邪気に笑う横顔に、そのときは酷く胸が焦げ付いた。この男がこれから、どう育って行くのか、どう大人になって行くのかをみたいと心から思った。この先、陸軍へといく彼と、大学に進む自分では道が違いすぎる。漠然と大きな別れがあることはわかっていたが、それは予想以上に重たいものだった。その日から少しの間、クレイグの胸はウィルに満たされた。だがそれも時間とともに落ち着いて、卒業の頃には再会を誓って抱き合っても、親友同士の絆しか感じないようになっていた。
だから本当にあのときだけの、進学や別れに揺さぶられた不安定な心の求めた拠り所だったのだ。思春期特有の気の迷いだったのだと思う。それでも何故か思い出すと、あのときの青さが蘇って衝動に駆られた。
「クレイグ?」
クレイグは立ち上がってウィルの唇にキスを落とした。それは軽いもので、どんな女にもしたことがないほど優しいものだった。
「……ごめん」
「……オレが大人になったから?」
「……覚えてんのか」
「お前にされて、思い出したよ」
そういうとウィルは少し笑った。クレイグは内心、その笑みの理由がわからず狼狽える。
「クレイグさ、たまにはオレにも甘えろよ。お前はあの頃からいつも一人で背負ってばっかだ。ホントに」
「……癖なんだよ」
「損するぜその癖直さないと」
ウィルはそういってシャワールームに向かった。クレイグは触れた唇を撫でる。確かにあのとき、触れたかった唇に触れた。あのときと同じ、心が焦げ付くような思いがする。
「余計なお世話だよ」
鼻歌を歌うウィルの背中に届くまいとわかっていながらクレイグはつぶやいた。
いまの自分は大人だから、この焦げ付くような胸の痛みへ出す処方箋も知っている。
きっとこの先、どんなことがあっても自分はずっと、あの男の味方であり続けるだろう。自信過剰ではないが、ウィルもそのつもりだと思う。クレイグはベッドに寝転んだ。少しだけこのまま、夢心地のまま高校時代へ船旅に出よう。
シャワールームから漏れてくるウィルの鼻歌をBGMに、クレイグは眠りに落ちていった。
夜明け前夜
ここの空はトリステル合衆国よりずっと明るくて、町は故郷よりずっと暗い。
遠征の疲れが身体に溜まって来た頃、レイフは一人軍事車両の上に登って星を見上げていた。
東の最果てにあるこの国は、夜はひどく冷え込んで頬が痛い。国境争いのために国の軍隊や傭兵だけでなく植民地だった地域の傭兵や一般市民をも投入し、その傭兵の一部がバイオテロ組織と繋がっていたためにクリーチャーが少数ではあるが発見され、BSOCが出動したというのが今回の事件のあらすじだった。
しかし今回の事件は、過去のクリーチャーたちと大きく異なる。それは知能がないということだ。ただゾンビのように、うろつきまわっている。数が多く、ゾンビに殺傷されたり、その死骸などからウイルスを吸引したりして感染する可能性があったため難儀したが、知能がない相手を片付けるのは容易だった。
しかし部隊メンバーの気が重いのは、そこに投入された人間の量と、紛争解決のための手段としてウイルスが用いられたというところにあるだろう。いつものテロ事件はなにかの主張のために一部のテロリストが一般人を巻き込む形で起きる。人数としてはだいたい軽症者も含めて100名に満たないものが多い。
それに比べ、今回は政府が兵力増強のために用いたものだ。傭兵や一般市民の多くに粉末や薬液などで多くウイルスが散布されたらしい。それはこの国自体が他国に軍事介入されるほど小国で、発展途上にある国だからだろう。ウイルス開発がまだ発達していないのだ。そのため知能も持たず、ただ死なない屍として街をさまようだけとなってしまった。その処分とウイルス拡散防止が、今回のBSOCの使命だった。
レイフもここのところ連日連夜クリーチャーたちとガスマスク越しに対峙しているが、殆どが傭兵の軍服を身につけており、傭兵の仲間の悲痛な声を聞くことも多かった。今までも何度もあったことだが、今回はトリステル合衆国の上層部が自国の軍隊以外であれば全員射殺、焼却処分をBSOCに要請しているのだと聞いてからはより一層、レイフの心を締め付けていた。
「キツイですね、今回の遠征」
声は車の下から届いた。相棒のライフルを背負い手入れ道具を片手に持ったウィルがこちらを見上げている。
「ウィル……」
「これから処分される傭兵たちに、心を痛めてるんでしょう?」
ウィルはそう言いながらレイフの隣まで車両を登って来た。隣に並ぶとウィルが空に白い息を吐き出して少し笑う。そしてレイフが何も言わないのを見るとそのまま相棒の銃身の手入れを始めてしまった。
「……お前は、なんとも思わないのか」
「そんなわけないでしょう。生かしてあげたいです、出来ることなら」
ウィルそう言いながらもスコープを覗いたり油を差したり、手入れの手を休めない。
「……国のために戦っていたのに、国に殺されるなんてな。まぁ、彼らは国のためというより金のために動いているのかも知れないが」
「ええ、本当……それでも報われないですね」
ウィルの言葉も素通りしたように、レイフはなんの反応も見せなかった。
「俺はいつも、チームにお前たちは捨て駒じゃないと言ってる。それにお前が共感してくれてるのはよくわかってるよ。……でも、俺のその言葉が嘘で無い確証は何処にもない」
珍しくレイフが弱音を吐き出した。桁外れの統率力と判断力、そして射撃と体術の技術に裏打ちされた強い精神力さえも、この状況下では弱るのも仕方のないことかもしれない。
政府軍によって目の前で生きたまま焼かれる傭兵たちの姿は、強烈なメッセージ性を持って脳裏に焼き付けられる。政府軍のやり方にBSOCが強く抵抗出来ないのは、BSOCの医療チームを持ってしても、今回のウイルス感染の判別が非常に難しいからだ。
そして、このウイルスが恐ろしく強力で高い感染力を持っていることも手伝って、BSOCは政府軍のやり方に従うしかなかった。勿論何度かこのやり方については倫理に反するとBSOCの方でも議題に上がった。その会議に、レイフは遠隔会議システムで出席している。
その後違う方面から聞くに、政府側は最初から焼却処分を辞さない考えだったという。BSOC側の「感染者及び感染者疑惑者の閉鎖病棟への強制入院と、精密検査後の解放」に対しては「収容に時間と手間をかけることは犠牲を考えても現実的ではなく、検査方法も確立していないいま、その方法をBSOCが見つけるまで大量の傭兵や市民を入院させておく場所も経済的余裕もない」と断固拒否。BSOCの補助金の申し出に対しても経済の混乱を理由に退けたという。レイフは先陣を切って政府軍に訴えていたというから、今の情緒不安定は自分の力不足に絶望を感じたところから来ているのだろう。
「あなたのその言葉が、嘘で無い確証はないです。それはあなたの意向であって、オズウェルさん以外の上層部の意向とは少しずれていますしね。HQにとっちゃ、オレたちはきっと捨て駒なんです」
「ウィル、止めろ」
「あなたの方がよくわかってるはずだ。BSOCはニッポンの自衛隊じゃない。お飾りの軍隊でもなければ、慈善事業でもないんです。元々は国際的に認められた、命の消耗も必然と捉える恐ろしい機関でもあるんだ」
それはここ最近、ウィルが改めて思い直したことであった。
オズウェルは現在、出張で本国南部にいるため、代理としてエイブラハムという男が現在HQとして指令を出している。どうもその男の企みが、レイフやオズウェルの考える思想と反対の意思をたどっているらしい。レイフやオズウェルはこれまで隊員の命を守るために尽力して来た。それに心を動かされた隊員や、HQのメンバーも多い。だが、その思想をどういう思惑か書き換えたいようなのだ。
薄々ウィルは気づいていたらしい。BSOC上層部がオズウェルを厄介視しており、その後任として思想を書き換えるべくそのエイブラハムという男を司令部チーフに置こうとしているのだと。今回のオズウェルの出張は三ヶ月と期間も長く、こちらの支部の様子は伝えられていないというのはレイフとオズウェルの電話を聞いていてわかったことだ。これも無関係な話ではないだろう。
だが、オズウェルの優秀な部分を失うのは惜しいと思ったのだろう、司令を出すことのない副所長となるような話が浮上しているというのも聞かない話ではなかった。
「BSOCは元の、製薬企業連盟体質に戻ろうとしている。ここにあなたとオズウェルさんがいたから、うちの支部では人命が最優先されてきました。でも他支部ではいまだに多くの隊員が犠牲になってる。オレたちはぬるかったと言われれば、それまでです」
レイフの表情がぐしゃりと歪んだ。ウィルの言葉が痛い。自分が今まで手にかけて来たクリーチャーたちも、勿論元は人間だった。今更クリーチャーたちの命を奪うのを咎めたりは出来ない。それでも、ウイルスを体内に持っている人間は助けたくて、変異したクリーチャーなら殺してもいいなんて、判断の境目を見失いそうで怖くなった。
「オレ、クレイグのある研究の日次進捗を聞いている途中なんですがね。それがある国の脳死判定に関する記述からヒントを得たものでして。脳の組織自体が修復不可能な状態になったことを器質死、脳の機能が外部から測れなくなった状態を機能死というんだそうです。そしてその国では機能死を脳死、すなわち人の死としてカウントするようです。死を意味するのは機能死なんですよ、器質死じゃなくてね。だから、脳波を検知出来ないだけで、その意思疎通が出来ない状態をそのまま殺すのは、もしかしたら内側で生きていて外に発信することが出来ないだけなのかもしれないのに残忍なのじゃないかと議論が飛び交っているようなのです。でもこれは、クリーチャーにも似たことが言えるんじゃないかってね」
ウィルが淡々と話し続ける。レイフはこのウィルの話から、その思考が行き着く先を静かに見届けようとした。いつの間にか油を差す腕も止まっている。
「クリーチャーも今のところ、意思疎通は出来ない、こちらを敵視して襲いかかってくるということがわかっていますが、それが本当か、というところに着目したのです。身体が本能に従って捕食行動を起こすだけで、内側では仲間を殺したがる自分の身体に、泣いているんじゃないかってね。まだ研究も初期段階なのでわかってはいませんが、その可能性も大いにあると、クレイグは言っていました」
心臓がトクンと跳ねた。BSOCが自らの意志で考えて動いているのではなかったとしたら。ただ意思疎通が出来ないだけで自我がないのと同じにしてしまうことほど、怖いことはない。
「過去に会ったクリーチャーたちは研究から確かに本能に従う自分の意志で行動する高い知能を持っていたと証明できました。でも、ここのはそうじゃない」
ウィルは小さくため息を吐いた。
「……もちろん証明されたから殺してもいいというのは人間の勝手なエゴですが。でもそれがわかっただけで気が楽になりますよね。……オレにはここのBSOCたちが、苦しんでいるように時折見えることがあって、キャプテンもそんなようなことを考えてるんじゃないかって思ったんです」
ウィルの言葉に、レイフはうつむく。もう何を考えていいのかわからなくなって、レイフは力なく首を振った。見張り番のライトがあちらこちらを行き来しているのが少し遠くに見える。アルファチームからはトールが出ているはずだ。いま見ている光はトールのものかもしれない。
「いままでオレは、あなたが落ち込んだ時”あなたは正しい”と励まして来ました。でもそれは、あくまで自分の中の価値観での”正しい”だ。視点を変えれば間違っていると思われることも多々あったでしょう。それにはあなたも気付いてたはずです。それでもオレに励まされてくれました。だから、これからは言葉を変えます」
レイフはゆっくりと顔を上げた。これからウィルが言う言葉を、しっかりと顔を見て聞きたかった。
「オレはあなたがもし間違ったことをしようとしても、あなたを信じて着いて行きます。たとえ間違いだと思っても、オレはあんたが間違ったことはしないと信じてるし、ずっとその判断は正しいと励ましてきたオレにも責任がある。だからあなたは、迷わずに進んでください」
何が正しくて、何が間違いなのか。どの視点から見ても正しいと思われる事象なんてない。だからこそ、自分のやり方を全て受け入れてくれる人がいる心強さはかけがえの無いものだった。
「なぁウィル──」
「もう一度、政府に掛け合いに行きますか? 今度はオレも一緒に行きますよ、あんたは一人じゃ熱くなりすぎる」
なんでもお見通しなパートナーに、レイフは思わず笑いを漏らした。
「……ああ、ヒートアップし過ぎたら止めてくれ」
まだ夜は深い。しばらく朝は来ないだろう。
「じゃあさっそく、明日の抗議の作戦会議といこうか」
「ええ、十分すぎるほど時間はありますから」
二人は車の上から降りた。そして会議用テントに向かう。
「明日で決着をつけましょう」
「ああ」
その数日後から、感染疑いのある変異前の人々は焼かれることなく一箇所に集められることとなった。そしてBSOCからも追加で医療チームや研究チームが入国。さらにそのニ週間後には閉鎖病棟の建設が開始された。
雪が降ると心が締め付けられるような気分になる。小さい頃は好きだった雪の日も、大人になってからは憂鬱にしか感じられなかった。
そして今日は、少し傷心気味でもある。
「クレイグ? 何考え込んでんだよ、ガラじゃないな」
窓に映ったウィルは、マフラーを巻いて暖かそうにしている。いま帰ってきたところだろう。ドアの開閉する音にすら気づかなかったのだから、相当耽っていたらしい。クレイグは窓の外を落ちていく雪の粒を眺めた。
「いや、小さい頃は雪の日が楽しみだったのに、いまじゃこんなに憂鬱だなと思ってさ」
「オレは今も好きだけど? いいじゃん、綺麗だしなんか特別な気分になる。まぁここじゃ量が多すぎて特別感は少し薄れたけど」
ウィルは元々、この国の中でも雪の少ない地方に住んでいた。だから特別雪が嬉しかったのだろう。クレイグは北寄りの寒い地域だったから、それほどの特別感は元々なかった。
「俺の地元はもっと降るぜ。お前なんか雪に埋まるくらいにな」
「オレが埋まったらお前もほとんど埋まるだろ」
「それもそうだ」
ウィルはマフラーを解いてコートを脱いだ。深いニットの色はウィルによく似合う。クレイグもカーテンを閉め、うんと背伸びをした。
ウィルの部屋にウィルがいないときに入っているのも、もう気にならないほどになってしまったらしい。居心地の良すぎるウィルの部屋は、今ではクレイグの部屋と言っても過言ではなかった。
「お前、なんか今日落ち込んでんの?」
ウィルが靴下を脱ぎながら尋ねてきた。手に持っている靴下は雪で濡れてしまっている。ウィルも足先の冷たさを気にしているようだ。
「……なんで?」
「なんか、元気ないように見えるから」
根拠がないわけではない。でもそれは形にならず、とても不確定だということだろう。ウィルは根拠のないことは言わないが、それでも聞いてくるということは、不確定な根拠にみえるそれも、ウィルには確かに映っているのだろう。
「まあ、……ちょっとね」
「ふうん。飯は? もう食った?」
「ああ」
「ならよかった。オレも食ってきたから」
そういってウィルはニットとその下に着ていた襟シャツを脱いだ。クレイグは上裸のウィルを眺める。そういえば一時期、この背中が好きで水泳部に毎日遊びに行っていた時期があった。たとえば外周の途中で抜け出したり、部活終了後に一緒に帰ろうと誘いに行ったり。だいたいいつも水泳部は終わるのが遅くて、ウィルが泳ぐのをいつも見ることが出来た。そしてその背中に、いつか肌を合わせたいと思ったこともあった。
今はもう覚えていないだろうが、クレイグをそうさせたのはまぎれもなくウィルだった。
いつものようにプールの外で待ち合わせをしていた。あれは高校3年生の、秋だった。
「悪い、待たせた」
「いや」
同じ塾に通っていたこともあって練習のない日以外は一緒に帰っていた。いつも少し、ウィルが遅れてくるのだ。柔らかい夕陽に照らされて、2人で並んで歩いていた。
ウィルが少し、落ち込んでいたのを知っている。それは無論、女子たちの専らの噂になっていたからだ。
「どう? 独り身になった感想は」
「……正直、楽だと思う。でも、彼女に対する罪悪感は重いな」
「なんでもうダメだって思ったんだ?」
「多分オレ、すごい夢想家なんだ。なんていうか、やっぱり彼女とキスするにしても抱き合うにしても、本当に心から愛してなきゃダメだって思っちゃって」
ウィルが言葉を選ばずに喋っているのがわかる。これが本音なのだろう。
クラスの殆どが公認していたから、破局の波紋が大きいのはわかっていたはずだ。それでもウィルが選んだのなら、それ以上の結果はないのだろう。
「ふうん」
「心の距離が遠かったんだ。彼女には何も話せなかった。オレのいまのところの結論である心の距離とキスの感覚が比例するなら、お前とキスした方がずっといいと思えるくらいなんだよ」
そう言い放ったウィルの横顔が夕陽に照らされる。そこに嘘や偽りはない。純粋に思ったことを親友に打ち明けた青年の顔だった。
「……もしお前が大人になったとき、そういうキスを経験してなかったら、俺がしてやるよ。そしたら、証明出来んだろ?」
「ならそれまでに、経験しとかないとな」
そういって無邪気に笑う横顔に、そのときは酷く胸が焦げ付いた。この男がこれから、どう育って行くのか、どう大人になって行くのかをみたいと心から思った。この先、陸軍へといく彼と、大学に進む自分では道が違いすぎる。漠然と大きな別れがあることはわかっていたが、それは予想以上に重たいものだった。その日から少しの間、クレイグの胸はウィルに満たされた。だがそれも時間とともに落ち着いて、卒業の頃には再会を誓って抱き合っても、親友同士の絆しか感じないようになっていた。
だから本当にあのときだけの、進学や別れに揺さぶられた不安定な心の求めた拠り所だったのだ。思春期特有の気の迷いだったのだと思う。それでも何故か思い出すと、あのときの青さが蘇って衝動に駆られた。
「クレイグ?」
クレイグは立ち上がってウィルの唇にキスを落とした。それは軽いもので、どんな女にもしたことがないほど優しいものだった。
「……ごめん」
「……オレが大人になったから?」
「……覚えてんのか」
「お前にされて、思い出したよ」
そういうとウィルは少し笑った。クレイグは内心、その笑みの理由がわからず狼狽える。
「クレイグさ、たまにはオレにも甘えろよ。お前はあの頃からいつも一人で背負ってばっかだ。ホントに」
「……癖なんだよ」
「損するぜその癖直さないと」
ウィルはそういってシャワールームに向かった。クレイグは触れた唇を撫でる。確かにあのとき、触れたかった唇に触れた。あのときと同じ、心が焦げ付くような思いがする。
「余計なお世話だよ」
鼻歌を歌うウィルの背中に届くまいとわかっていながらクレイグはつぶやいた。
いまの自分は大人だから、この焦げ付くような胸の痛みへ出す処方箋も知っている。
きっとこの先、どんなことがあっても自分はずっと、あの男の味方であり続けるだろう。自信過剰ではないが、ウィルもそのつもりだと思う。クレイグはベッドに寝転んだ。少しだけこのまま、夢心地のまま高校時代へ船旅に出よう。
シャワールームから漏れてくるウィルの鼻歌をBGMに、クレイグは眠りに落ちていった。
夜明け前夜
ここの空はトリステル合衆国よりずっと明るくて、町は故郷よりずっと暗い。
遠征の疲れが身体に溜まって来た頃、レイフは一人軍事車両の上に登って星を見上げていた。
東の最果てにあるこの国は、夜はひどく冷え込んで頬が痛い。国境争いのために国の軍隊や傭兵だけでなく植民地だった地域の傭兵や一般市民をも投入し、その傭兵の一部がバイオテロ組織と繋がっていたためにクリーチャーが少数ではあるが発見され、BSOCが出動したというのが今回の事件のあらすじだった。
しかし今回の事件は、過去のクリーチャーたちと大きく異なる。それは知能がないということだ。ただゾンビのように、うろつきまわっている。数が多く、ゾンビに殺傷されたり、その死骸などからウイルスを吸引したりして感染する可能性があったため難儀したが、知能がない相手を片付けるのは容易だった。
しかし部隊メンバーの気が重いのは、そこに投入された人間の量と、紛争解決のための手段としてウイルスが用いられたというところにあるだろう。いつものテロ事件はなにかの主張のために一部のテロリストが一般人を巻き込む形で起きる。人数としてはだいたい軽症者も含めて100名に満たないものが多い。
それに比べ、今回は政府が兵力増強のために用いたものだ。傭兵や一般市民の多くに粉末や薬液などで多くウイルスが散布されたらしい。それはこの国自体が他国に軍事介入されるほど小国で、発展途上にある国だからだろう。ウイルス開発がまだ発達していないのだ。そのため知能も持たず、ただ死なない屍として街をさまようだけとなってしまった。その処分とウイルス拡散防止が、今回のBSOCの使命だった。
レイフもここのところ連日連夜クリーチャーたちとガスマスク越しに対峙しているが、殆どが傭兵の軍服を身につけており、傭兵の仲間の悲痛な声を聞くことも多かった。今までも何度もあったことだが、今回はトリステル合衆国の上層部が自国の軍隊以外であれば全員射殺、焼却処分をBSOCに要請しているのだと聞いてからはより一層、レイフの心を締め付けていた。
「キツイですね、今回の遠征」
声は車の下から届いた。相棒のライフルを背負い手入れ道具を片手に持ったウィルがこちらを見上げている。
「ウィル……」
「これから処分される傭兵たちに、心を痛めてるんでしょう?」
ウィルはそう言いながらレイフの隣まで車両を登って来た。隣に並ぶとウィルが空に白い息を吐き出して少し笑う。そしてレイフが何も言わないのを見るとそのまま相棒の銃身の手入れを始めてしまった。
「……お前は、なんとも思わないのか」
「そんなわけないでしょう。生かしてあげたいです、出来ることなら」
ウィルそう言いながらもスコープを覗いたり油を差したり、手入れの手を休めない。
「……国のために戦っていたのに、国に殺されるなんてな。まぁ、彼らは国のためというより金のために動いているのかも知れないが」
「ええ、本当……それでも報われないですね」
ウィルの言葉も素通りしたように、レイフはなんの反応も見せなかった。
「俺はいつも、チームにお前たちは捨て駒じゃないと言ってる。それにお前が共感してくれてるのはよくわかってるよ。……でも、俺のその言葉が嘘で無い確証は何処にもない」
珍しくレイフが弱音を吐き出した。桁外れの統率力と判断力、そして射撃と体術の技術に裏打ちされた強い精神力さえも、この状況下では弱るのも仕方のないことかもしれない。
政府軍によって目の前で生きたまま焼かれる傭兵たちの姿は、強烈なメッセージ性を持って脳裏に焼き付けられる。政府軍のやり方にBSOCが強く抵抗出来ないのは、BSOCの医療チームを持ってしても、今回のウイルス感染の判別が非常に難しいからだ。
そして、このウイルスが恐ろしく強力で高い感染力を持っていることも手伝って、BSOCは政府軍のやり方に従うしかなかった。勿論何度かこのやり方については倫理に反するとBSOCの方でも議題に上がった。その会議に、レイフは遠隔会議システムで出席している。
その後違う方面から聞くに、政府側は最初から焼却処分を辞さない考えだったという。BSOC側の「感染者及び感染者疑惑者の閉鎖病棟への強制入院と、精密検査後の解放」に対しては「収容に時間と手間をかけることは犠牲を考えても現実的ではなく、検査方法も確立していないいま、その方法をBSOCが見つけるまで大量の傭兵や市民を入院させておく場所も経済的余裕もない」と断固拒否。BSOCの補助金の申し出に対しても経済の混乱を理由に退けたという。レイフは先陣を切って政府軍に訴えていたというから、今の情緒不安定は自分の力不足に絶望を感じたところから来ているのだろう。
「あなたのその言葉が、嘘で無い確証はないです。それはあなたの意向であって、オズウェルさん以外の上層部の意向とは少しずれていますしね。HQにとっちゃ、オレたちはきっと捨て駒なんです」
「ウィル、止めろ」
「あなたの方がよくわかってるはずだ。BSOCはニッポンの自衛隊じゃない。お飾りの軍隊でもなければ、慈善事業でもないんです。元々は国際的に認められた、命の消耗も必然と捉える恐ろしい機関でもあるんだ」
それはここ最近、ウィルが改めて思い直したことであった。
オズウェルは現在、出張で本国南部にいるため、代理としてエイブラハムという男が現在HQとして指令を出している。どうもその男の企みが、レイフやオズウェルの考える思想と反対の意思をたどっているらしい。レイフやオズウェルはこれまで隊員の命を守るために尽力して来た。それに心を動かされた隊員や、HQのメンバーも多い。だが、その思想をどういう思惑か書き換えたいようなのだ。
薄々ウィルは気づいていたらしい。BSOC上層部がオズウェルを厄介視しており、その後任として思想を書き換えるべくそのエイブラハムという男を司令部チーフに置こうとしているのだと。今回のオズウェルの出張は三ヶ月と期間も長く、こちらの支部の様子は伝えられていないというのはレイフとオズウェルの電話を聞いていてわかったことだ。これも無関係な話ではないだろう。
だが、オズウェルの優秀な部分を失うのは惜しいと思ったのだろう、司令を出すことのない副所長となるような話が浮上しているというのも聞かない話ではなかった。
「BSOCは元の、製薬企業連盟体質に戻ろうとしている。ここにあなたとオズウェルさんがいたから、うちの支部では人命が最優先されてきました。でも他支部ではいまだに多くの隊員が犠牲になってる。オレたちはぬるかったと言われれば、それまでです」
レイフの表情がぐしゃりと歪んだ。ウィルの言葉が痛い。自分が今まで手にかけて来たクリーチャーたちも、勿論元は人間だった。今更クリーチャーたちの命を奪うのを咎めたりは出来ない。それでも、ウイルスを体内に持っている人間は助けたくて、変異したクリーチャーなら殺してもいいなんて、判断の境目を見失いそうで怖くなった。
「オレ、クレイグのある研究の日次進捗を聞いている途中なんですがね。それがある国の脳死判定に関する記述からヒントを得たものでして。脳の組織自体が修復不可能な状態になったことを器質死、脳の機能が外部から測れなくなった状態を機能死というんだそうです。そしてその国では機能死を脳死、すなわち人の死としてカウントするようです。死を意味するのは機能死なんですよ、器質死じゃなくてね。だから、脳波を検知出来ないだけで、その意思疎通が出来ない状態をそのまま殺すのは、もしかしたら内側で生きていて外に発信することが出来ないだけなのかもしれないのに残忍なのじゃないかと議論が飛び交っているようなのです。でもこれは、クリーチャーにも似たことが言えるんじゃないかってね」
ウィルが淡々と話し続ける。レイフはこのウィルの話から、その思考が行き着く先を静かに見届けようとした。いつの間にか油を差す腕も止まっている。
「クリーチャーも今のところ、意思疎通は出来ない、こちらを敵視して襲いかかってくるということがわかっていますが、それが本当か、というところに着目したのです。身体が本能に従って捕食行動を起こすだけで、内側では仲間を殺したがる自分の身体に、泣いているんじゃないかってね。まだ研究も初期段階なのでわかってはいませんが、その可能性も大いにあると、クレイグは言っていました」
心臓がトクンと跳ねた。BSOCが自らの意志で考えて動いているのではなかったとしたら。ただ意思疎通が出来ないだけで自我がないのと同じにしてしまうことほど、怖いことはない。
「過去に会ったクリーチャーたちは研究から確かに本能に従う自分の意志で行動する高い知能を持っていたと証明できました。でも、ここのはそうじゃない」
ウィルは小さくため息を吐いた。
「……もちろん証明されたから殺してもいいというのは人間の勝手なエゴですが。でもそれがわかっただけで気が楽になりますよね。……オレにはここのBSOCたちが、苦しんでいるように時折見えることがあって、キャプテンもそんなようなことを考えてるんじゃないかって思ったんです」
ウィルの言葉に、レイフはうつむく。もう何を考えていいのかわからなくなって、レイフは力なく首を振った。見張り番のライトがあちらこちらを行き来しているのが少し遠くに見える。アルファチームからはトールが出ているはずだ。いま見ている光はトールのものかもしれない。
「いままでオレは、あなたが落ち込んだ時”あなたは正しい”と励まして来ました。でもそれは、あくまで自分の中の価値観での”正しい”だ。視点を変えれば間違っていると思われることも多々あったでしょう。それにはあなたも気付いてたはずです。それでもオレに励まされてくれました。だから、これからは言葉を変えます」
レイフはゆっくりと顔を上げた。これからウィルが言う言葉を、しっかりと顔を見て聞きたかった。
「オレはあなたがもし間違ったことをしようとしても、あなたを信じて着いて行きます。たとえ間違いだと思っても、オレはあんたが間違ったことはしないと信じてるし、ずっとその判断は正しいと励ましてきたオレにも責任がある。だからあなたは、迷わずに進んでください」
何が正しくて、何が間違いなのか。どの視点から見ても正しいと思われる事象なんてない。だからこそ、自分のやり方を全て受け入れてくれる人がいる心強さはかけがえの無いものだった。
「なぁウィル──」
「もう一度、政府に掛け合いに行きますか? 今度はオレも一緒に行きますよ、あんたは一人じゃ熱くなりすぎる」
なんでもお見通しなパートナーに、レイフは思わず笑いを漏らした。
「……ああ、ヒートアップし過ぎたら止めてくれ」
まだ夜は深い。しばらく朝は来ないだろう。
「じゃあさっそく、明日の抗議の作戦会議といこうか」
「ええ、十分すぎるほど時間はありますから」
二人は車の上から降りた。そして会議用テントに向かう。
「明日で決着をつけましょう」
「ああ」
その数日後から、感染疑いのある変異前の人々は焼かれることなく一箇所に集められることとなった。そしてBSOCからも追加で医療チームや研究チームが入国。さらにそのニ週間後には閉鎖病棟の建設が開始された。
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