俺らが好きなのはキミだけっ!

コハク

文字の大きさ
3 / 12
第1話:加速していく勘違い、妄想、そして恋心

3

しおりを挟む
 今より少し前、幸人と怜央が校舎裏へ移動したばかりの時へ遡る。
 視点は再び、碧へと切り替わる。

________________

 ……うーん。友沢先輩と大神先輩の行く末を見守るために、2人を追って校舎裏まで来たのはいいけど……。

「何話してるか全然わからないなぁ……」

 ぼくは思わずため息をつく。
 先輩たちは、建物の影に隠れているぼくから少し離れたところで話している。かろうじて表情と雰囲気はわかるのだけど、声はほとんど聞こえない。

 もう少し近づいてみようか、いやいやそれだとバレるかもしれない、などと悶々としていたその時だった。

「俺だって好きなんだよ!!」

 ……大声で言ったものだったからか、今の声は僕の耳にまで届いた。
 けれど……今のは聞き間違い?それとも幻聴だろうか?大神先輩の声でというセリフが聞こえるなんて……。
 好きって……言ったとしたら誰に?大神先輩の視線の先には友沢先輩しかいない……。ということは……え?まさか……本当に?
 バクバクとぼくの心臓がうるさくなるのを感じる。

 いやいや……いやいやいや!!さすがにありえないでしょ!きっとあれだよ!好きなアイドルとか、好きな映画とか、そんな当たり障りのない話題に決まってる!
 そうじゃなかったら、ぼくが大神先輩と友沢先輩の妄想をし過ぎて幻聴聞いたとか……。

 ……真相を確かめるためにも、やっぱりもう少し近づいて話を聞いてみよう、うん。大神先輩と友沢先輩の近くかつ、ギリギリ2人の視線から死角になるような場所へ、ぼくは慎重にジリジリと移動していく。

「お前って…………将来………だわ~」

「きみのその…………かえって…………」

 ……うん。部分的にだけど、ここなら先輩たちの声が聞こえる。このままバレないようにじっとして、2人の会話に耳を傾けていれば……。
 と思ったその時、ぼくの心を揺さぶったのは、またもや大神先輩の声だった。

「言っておくけど、俺が好きだって気持ちは誰にも負けねえ。絶対に振り向かせてみせる。ほかのやつなんざ渡してたまるか!」

 __ドサッ。

 驚くあまりにカバンを手から離してしまった。

 ……彼のあの真剣な表情、熱い宣言……。あぁ、これで確信した。
 これはぼくが妄想しすぎた故に見えた幻覚でもなんでもなく、本物の告白の現場……。大神先輩は友沢先輩のことが好きなんだ!
 でも、友沢先輩はその告白への返事を渋り、大神先輩はあんな大胆なアプローチを……!

「…………くん……櫻木くん!?」

「ッ!!」

 推測に頭を働かせていたぼくは、呼びかけられてようやくハッと我に返る。いつのまにか友沢先輩と大神先輩が近くに来ており、焦ったような表情でこちらを見ていた。

「さ、櫻木ちゃん……もしかして今の、聞いてた……?」

「……は、はい……」

 普段の余裕そうな態度から想像できないほどオロオロしながら、大神先輩はぼくに問いかける。本当は『聞いてない』と言うべきだっただろうが、思考回路がまだ正常に動いていなかったせいか、ぼくはその問いに対して思わず肯定してしまった。

 ぼくの答えを聞き、更に気まずくなってしまった様子の先輩たちの表情が目に映る。告白の現場を後輩に見られてしまったのだから、当然だろう。
 これ以上邪魔をしないように、一刻も早くこの場を離れなければ……!!

「あ、あの、誰にも言いませんので!」

 それだけ言って、ぼくは落としたカバン片手に、その場から走り去ろうとした……が。

「ちょっ、待って!!」

 がしっ、と大きな手がぼくの肩をつかみ、逃げ出そうとした身体はピタッと止まる。
 恐る恐る振り向くと、大神先輩のつり上がった目が、ぼくを見下ろしている。ぼくはゴクリと唾を飲み、大神先輩が何かを言うのを待つことしかできなかった。

「……さっきの、俺、本気だから」

「……えっ?」

 静かに……だけど真剣にそう言い放つ大神先輩に、ぼくは目を瞬かせる。
 ……?一体どういうことだ?そうぼくが頭を悩ませていると、ふと先程の大神先輩の言葉が頭に過ぎった。

『ほかのやつなんざ渡してたまるか!』

 ……それってもしかして、ぼくも含まれてる!?そういえば大神先輩、ぼくが友沢先輩と話してると、いつも割って入ってきたような……。
 つまり、大神先輩はぼくのことを友沢先輩を狙うとして見ていて、今の『俺は本気だ』っていうのは、『俺は幸人を本気で愛してるからお前に渡さない!』という宣戦布告ってこと!?

 いやいや誤解です大神先輩!ぼくは友沢先輩を取るつもりはありません!!むしろぼくはお二人の関係の進展を応援したいんです!

 ……と、とにかく大神先輩の誤解を解かなければ。ぼくは彼と視線を合わせて口を開いた。

「……あの、ぼくは先輩方の邪魔をするつもりはないんです……。むしろぼくは、先輩方の応援をしていますから!」

「……えっ?」

 はっきりと自分の意思を伝えてしまうと、目を見開いたまま固まる先輩方に会釈をし、2人に背を向けて走り出した。

 先輩たちはまだ何か言いたげだったようだが、これ以上推したちの間に挟まっているのは、見守り側のマナーに反する……!
 ……決して、早く家に帰って、新作のBLの小説を書きたいわけじゃない!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

先輩たちの心の声に翻弄されています!

七瀬
BL
人と関わるのが少し苦手な高校1年生・綾瀬遙真(あやせとうま)。 ある日、食堂へ向かう人混みの中で先輩にぶつかった瞬間──彼は「触れた相手の心の声」が聞こえるようになった。 最初に声を拾ってしまったのは、対照的な二人の先輩。 乱暴そうな俺様ヤンキー・不破春樹(ふわはるき)と、爽やかで優しい王子様・橘司(たちばなつかさ)。 見せる顔と心の声の落差に戸惑う遙真。けれど、彼らはなぜか遙真に強い関心を示しはじめる。 **** 三作目の投稿になります。三角関係の学園BLですが、なるべくみんなを幸せにして終わりますのでご安心ください。 ご感想・ご指摘など気軽にコメントいただけると嬉しいです‼️

【完結】ハーレムラブコメの主人公が最後に選んだのは友人キャラのオレだった。

或波夏
BL
ハーレムラブコメが大好きな男子高校生、有真 瑛。 自分は、主人公の背中を押す友人キャラになって、特等席で恋模様を見たい! そんな瑛には、様々なラブコメテンプレ展開に巻き込まれている酒神 昴という友人がいる。 瑛は昴に《友人》として、自分を取り巻く恋愛事情について相談を持ちかけられる。 圧倒的主人公感を持つ昴からの提案に、『友人キャラになれるチャンス』を見出した瑛は、二つ返事で承諾するが、昴には別の思惑があって…… ̶ラ̶ブ̶コ̶メ̶の̶主̶人̶公̶×̶友̶人̶キ̶ャ̶ラ̶ 【一途な不器用オタク×ラブコメ大好き陽キャ】が織り成す勘違いすれ違いラブ 番外編、牛歩更新です🙇‍♀️ ※物語の特性上、女性キャラクターが数人出てきますが、主CPに挟まることはありません。 少しですが百合要素があります。 ☆第1回 青春BLカップ30位、応援ありがとうございました! 第13回BL大賞にエントリーさせていただいています!もし良ければ投票していただけると大変嬉しいです!

アイドルくん、俺の前では生活能力ゼロの甘えん坊でした。~俺の住み込みバイト先は後輩の高校生アイドルくんでした。

天音ねる(旧:えんとっぷ)
BL
家計を助けるため、住み込み家政婦バイトを始めた高校生・桜井智也。豪邸の家主は、寝癖頭によれよれTシャツの青年…と思いきや、その正体は学校の後輩でキラキラ王子様アイドル・橘圭吾だった!? 学校では完璧、家では生活能力ゼロ。そんな圭吾のギャップに振り回されながらも、世話を焼く日々にやりがいを感じる智也。 ステージの上では完璧な王子様なのに、家ではカップ麺すら作れない究極のポンコツ男子。 智也の作る温かい手料理に胃袋を掴まれた圭吾は、次第に心を許し、子犬のように懐いてくる。 「先輩、お腹すいた」「どこにも行かないで」 無防備な素顔と時折見せる寂しげな表情に、智也の心は絆されていく。 住む世界が違うはずの二人。秘密の契約から始まる、甘くて美味しい青春ラブストーリー!

とあるΩ達の試練

如月圭
BL
 吉住クレハは私立成城学園に通う中学三年生の男のオメガだった。同じ学園に通う男のオメガの月城真とは、転校して初めてできた同じオメガの友達だった。そんな真には、番のアルファが居て、クレハはうらやましいと思う。しかし、ベータの女子にとある事で目をつけられてしまい……。  この話はフィクションです。更新は、不定期です。

とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~

無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。 自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。

可愛い系イケメンが大好きな俺は、推しの親友の王子に溺愛される

むいあ
BL
「あの…王子ーー!!俺の推しはあなたの親友なんだーーー!!」 俺、十宮空也は朝、洗面台に頭をぶつけ、異世界転生をしてしまった。 そこは俺がずっと大好きで追い続けていた「花と君ともう一度」という異世界恋愛漫画だった。 その漫画には俺の大好きな推しがいて、俺は推しと深くは関わらないで推し活をしたい!!と思い、時々推しに似合いそうな洋服を作ったりして、推しがお誕生日の時に送っていたりしていた。 すると、13歳になり数ヶ月経った頃、王宮からお茶会のお誘いが来て…!? 王家からだったので断るわけにもいかず、お茶会に行くため、王城へと向かった。 王城につくと、そこには推しとその推しの親友の王子がいて…!?!? せっかくの機会だし、少しだけ推しと喋ろうかなと思っていたのに、なぜか王子がたくさん話しかけてきて…!? 一見犬系に見えてすごい激重執着な推しの親友攻め×可愛いが大好きな鈍感受け

バツイチ上司が、地味な僕を特別扱いしてくる

衣草 薫
BL
理性的でクールなバツイチ上司・桐原恒一は、過去の失敗から、もう誰も必要としないと決めて生きてきた。 男が好きだという事実を隠し、「期待しなければ傷つかない」と思い込んできた部下・葉山直。 すれ違いと誤解の果てに、直が職場を去ろうとしたとき、恒一は初めて“追いかける”ことを選ぶ。 選ばれないと信じてきた直と、逃げないと決めた恒一。 二人の距離が近づくことで、直は「ここにいていい」と思える場所を見つけていく。 元ノンケ上司×自己肯定感低め部下の社会人BL。※ハッピーエンド保証。

きらきらしてる君が好き

書鈴 夏(ショベルカー)
BL
冴えない一般人である齋藤達也«さいとうたつや»は、夢を見た。それは幼い頃、友人であった柊湊«ひいらぎみなと»と交わした約束の夢。 「一緒にアイドルになろう」 早々に夢を諦めていた達也は感傷的な思いを抱きながら、友人の樋口凪«ひぐちなぎ»にアイドルのライブへと誘われ、奏«そう»というアイドルの握手会に参加する。 「ったつやくん……!?」 アイドルである奏の口から飛び出したのは、彼が知るはずもない自分の名前で── 青春BLカップ参加作品です。

処理中です...