前世の記憶を継承したけど、平穏を望みたい【完結】

青緑 ネトロア

文字の大きさ
10 / 15

しおりを挟む
 時間は少し遡り。

 火野が依頼を受けた陰陽師が居るであろう現場に式神の不死鳥の背に乗って向かっていた。

 遠目にも人避けの結界が薄い紫色を放って、ドーム状に展開されているのが見えていた。

 あと少しで目前に迫るという所で、急に不死鳥は止まり、火野に急ブレーキを掛けたような衝撃を受ける。

 あまりに急過ぎて受け身が取れずに危うく落ちそうになりながら上体を起こすと、何が起こったのかを見るが何もない。

「どうしたの?早く現場に行かなきゃならないってのに、こんな所で止まっちゃ駄目じゃない。ほら早く向かってちょうだい!」

 しかし火野の言葉には一向に従う気配も見せず、ただ一点を見つめている。

「あなた、どこかに行きたいっていうのかしら?私の命令よりも大事だっていうの。…あら?」

 そこでふと不死鳥から漏れ出る感情の中に恐怖が芽生えるのを知った火野は恐怖を覚えた。

 式神である不死鳥が恐怖を覚える相手というのが分からないからであった。

 不死鳥は式神の中で格が高く、また他家が先祖代々契約している式神と同様の格のため、そんな相手が存在するのかさえ理解できないからだ。

 更に言えば、不死鳥程の式神が怯えるという事は契約者である火野にも手が出せない相手ということである。

 しかし火野が指示を出すよりも早く方向転換して不死鳥が見ていた方向に向かっていく。

 それも先程のようなスピードでなく、ゆっくりと慎重に向かっていくと、見えてきた場所には1人の男が立っている。

 その場所目掛けて急降下を起こしたのだった。



「それに…」

『『むっ。』』「………」

 輝明の言葉を遮った元凶は赤く輝く不死鳥であった。

 不死鳥は疲れ果てている火野を離れた場所に乱暴に下ろすと、その巨体でゆっくりと輝明の前まで向かってくる。

 放り出された火野は契約者を突き放すように背から落とされたことに、呆然としていた。

「輝明さんじゃないですか!なんでこんな所に居るのですか!?」

 突然の出来事に驚いていた火野だったが、不死鳥が向かう場所には見慣れていた輝明が立っていることに気付いて声を上げてしまった。

 だが不死鳥は頭だけを火野に向けると、契約者に敵対するかのような眼差しで殺気を放って威嚇する。

「ひっ!?」

『…我の、契約者が、失礼をして、しまい、申し訳ありません。何卒、お許し頂ければ…』

 火野が悲鳴を上げるのをお構いなしに不死鳥は辿々しい言葉で許しを求めてきていた。

「だってさ。俺は別に気にしてないから許してあげな、テト。」

「ピィ…」

『感謝。感謝、いたします。して、あなた様の契約者は、こちらの…!? 申しわけ…』

 だが不死鳥が輝明に嘴を向けた瞬間、鉄鳥テトは輝明の方から素早く下りて巨大化するのだった、不死鳥よりも数割の大きさに。

「ガー!」

「はぁ、どうしてこうなったかな。」

 そしてテトの後ろで現実逃避したくて堪らない輝明が天を仰いでいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜

日々埋没。
ファンタジー
​「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」  ​かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。  その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。  ​レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。 ​ 地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。 ​「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」  ​新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。  一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。  ​やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。  レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

なんか修羅場が始まってるんだけどwww

一樹
ファンタジー
とある学校の卒業パーティでの1幕。

義妹がピンク色の髪をしています

ゆーぞー
ファンタジー
彼女を見て思い出した。私には前世の記憶がある。そしてピンク色の髪の少女が妹としてやって来た。ヤバい、うちは男爵。でも貧乏だから王族も通うような学校には行けないよね。

夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。

古森真朝
ファンタジー
 「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。  俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」  新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは―― ※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。

友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった

海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····? 友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))

処理中です...