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ジョブを隠して、幼馴染と旅をしよう
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暖かい日のある朝。
ホックスの幼馴染、フィーネからお願いをされて、朝から会っていた。
フィーネの願いとは、ホックスの持つ鑑定をしてもらう、というもの。
ホックスとフィーネが育ったタソガレ村は王国の端、辺境伯領にある村々の一つに数えられ、末端の村だった。
村には年に一度、教会の神父が来て成人を迎える子供のジョブを調査するために派遣されてくる。
フィーネは今年の神父が来ていた頃、親と山でイノシシ狩りしに行っていた為、会い損ねてしまった。
幸いなことに封術師として、代々継いできた家の生まれであるホックスは無事にジョブを引き継げていた。
封術師とは、小さいもので瓶や樽に封をする役割、大きいもので大罪を冒した罪人や凶悪な魔物を封印する役割を持つジョブである。
ホックスは封術師というジョブに加え、生まれつき鑑定眼を持っていた。
慎重な両親はホックスの将来を心配して、親族にも知人にすら話さず、態々ジョブの力を用いて鑑定眼を知る者は全員に封術を施した。
何も知らないホックスは特に仲の良かったフィーネに内緒という約束で、鑑定眼を教えていた。
そして神父の来訪に間に合わなかったフィーネが、『お願い。私を、鑑定して欲しいの。』と願い出たのだった。
ホックスは鑑定を行うと、鑑定結果に目を見開いた。
「フィーネ。落ち着いて聞いてほしい。君のジョブは"聖女"というようだ。」
フィーネは"聖女"と聞いて、不安そうに困惑してホックスに尋ねた。
「聖女って、あの?」
「そう。よくフィーネが読んでいた本に出てきた聖女様だよ。」
昔から読んでいた本を思い出して、クスッと笑みを浮かべる。
「あの絵本、だ~い好き!でも、だよ?もし絵本と同じなら、私は国元に行くことになるんだよね?」
「きっとね。」
「そしたら、さ。…ここに帰って、これるの、かな。」
「きっと、できないだろうね。今みたいに、こうやって話すことだって。」
「ーーそんなの、嫌だ!私は。ホックスと一緒なら、どこにでも行く!でも、離れ離れはやだぁ!」
フィーネは、瞳に大粒の涙を浮かべてホックスに詰め寄った。
「じゃあ、俺ん家に来るか?」
そんなフィーネにホックスは一つの提案を持ち出してみる。
「え?父さんと母さんにフィーネの事を話すんだ。二人とも秘密ごとには口が堅いんだよ。だから、さ。一緒に話してみないか?」
「ーーうん!」
フィーネは先程までのことが無かったかのように、パッと元気に頷いた。
「良いぞ。」
「え!?」
反対される事を前提に話をすると、間を置かずに父から許可が下りて驚くホックス。
「そうねぇ。ドルさんには悪いけど、逃してあげた方が良いかもしれないわね。」
ホックスの母は呑気そうに、手を口で隠して微笑む。
ドルとは、フィーネの父で、村一番の猟師だ。
「良いんですか?そんなことしたら、小父さんと小母さんに迷惑かけるんじゃ!」
「きっと数年後には可愛い嫁さんになるだろうし、な。」
「えっ!? 俺とフィーネはそんなんじゃねぇ!父さんも母さんも、何言ってるんだよ。」
突然の言葉に動揺してしまうホックスと、困惑するフィーネ。
それを温かい目で眺める大人二人は、夢見るように頬を緩める。
「まあまあ。将来のことなんて、誰にも分からないのだから今から期待しても仕方ありませんよ?」
「こういう身近な子が傍に居てくれたら、俺たちは安心できる。それにーー」
「お父さん?話が脱線してますよ。」
「すまんすまん。じゃあ早いうちに契約を交わして、旅支度せにゃならんぞ?」
「あの、契約って?」
ここでフィーネがホックスに質問した。
「お互いにフィーネの事を誰にも話さないっていう約束だよ。」
「へ~!ホックス、物知り!」
「父さんの受け入りだけどね。」
「「ハハハ」」「「フフフ」」」
それから暫くしてから、村人に内緒で旅支度するために準備を進めるのだった。
それから数日後、月が雲に隠れて辺り一面が暗くなった日。
準備の整ったフィーネはイビキを出す父を置いて、ホックスの元に来ていた。
「ありがとうございます!」
用意された荷物を受け取ると、フィーネは礼を告げる。
入れ物はホックスの母が手で縫い、一通りの小物セットを手先の器用な父が作ったものが入っている。
村の入り口で見送られ、ホックスとフィーネは二人旅をするのだった。
時は流れ。
ある国の豊かな街で、封術を生業に仕事をして少し裕福な家庭を築く一家がいたという。
ホックスの幼馴染、フィーネからお願いをされて、朝から会っていた。
フィーネの願いとは、ホックスの持つ鑑定をしてもらう、というもの。
ホックスとフィーネが育ったタソガレ村は王国の端、辺境伯領にある村々の一つに数えられ、末端の村だった。
村には年に一度、教会の神父が来て成人を迎える子供のジョブを調査するために派遣されてくる。
フィーネは今年の神父が来ていた頃、親と山でイノシシ狩りしに行っていた為、会い損ねてしまった。
幸いなことに封術師として、代々継いできた家の生まれであるホックスは無事にジョブを引き継げていた。
封術師とは、小さいもので瓶や樽に封をする役割、大きいもので大罪を冒した罪人や凶悪な魔物を封印する役割を持つジョブである。
ホックスは封術師というジョブに加え、生まれつき鑑定眼を持っていた。
慎重な両親はホックスの将来を心配して、親族にも知人にすら話さず、態々ジョブの力を用いて鑑定眼を知る者は全員に封術を施した。
何も知らないホックスは特に仲の良かったフィーネに内緒という約束で、鑑定眼を教えていた。
そして神父の来訪に間に合わなかったフィーネが、『お願い。私を、鑑定して欲しいの。』と願い出たのだった。
ホックスは鑑定を行うと、鑑定結果に目を見開いた。
「フィーネ。落ち着いて聞いてほしい。君のジョブは"聖女"というようだ。」
フィーネは"聖女"と聞いて、不安そうに困惑してホックスに尋ねた。
「聖女って、あの?」
「そう。よくフィーネが読んでいた本に出てきた聖女様だよ。」
昔から読んでいた本を思い出して、クスッと笑みを浮かべる。
「あの絵本、だ~い好き!でも、だよ?もし絵本と同じなら、私は国元に行くことになるんだよね?」
「きっとね。」
「そしたら、さ。…ここに帰って、これるの、かな。」
「きっと、できないだろうね。今みたいに、こうやって話すことだって。」
「ーーそんなの、嫌だ!私は。ホックスと一緒なら、どこにでも行く!でも、離れ離れはやだぁ!」
フィーネは、瞳に大粒の涙を浮かべてホックスに詰め寄った。
「じゃあ、俺ん家に来るか?」
そんなフィーネにホックスは一つの提案を持ち出してみる。
「え?父さんと母さんにフィーネの事を話すんだ。二人とも秘密ごとには口が堅いんだよ。だから、さ。一緒に話してみないか?」
「ーーうん!」
フィーネは先程までのことが無かったかのように、パッと元気に頷いた。
「良いぞ。」
「え!?」
反対される事を前提に話をすると、間を置かずに父から許可が下りて驚くホックス。
「そうねぇ。ドルさんには悪いけど、逃してあげた方が良いかもしれないわね。」
ホックスの母は呑気そうに、手を口で隠して微笑む。
ドルとは、フィーネの父で、村一番の猟師だ。
「良いんですか?そんなことしたら、小父さんと小母さんに迷惑かけるんじゃ!」
「きっと数年後には可愛い嫁さんになるだろうし、な。」
「えっ!? 俺とフィーネはそんなんじゃねぇ!父さんも母さんも、何言ってるんだよ。」
突然の言葉に動揺してしまうホックスと、困惑するフィーネ。
それを温かい目で眺める大人二人は、夢見るように頬を緩める。
「まあまあ。将来のことなんて、誰にも分からないのだから今から期待しても仕方ありませんよ?」
「こういう身近な子が傍に居てくれたら、俺たちは安心できる。それにーー」
「お父さん?話が脱線してますよ。」
「すまんすまん。じゃあ早いうちに契約を交わして、旅支度せにゃならんぞ?」
「あの、契約って?」
ここでフィーネがホックスに質問した。
「お互いにフィーネの事を誰にも話さないっていう約束だよ。」
「へ~!ホックス、物知り!」
「父さんの受け入りだけどね。」
「「ハハハ」」「「フフフ」」」
それから暫くしてから、村人に内緒で旅支度するために準備を進めるのだった。
それから数日後、月が雲に隠れて辺り一面が暗くなった日。
準備の整ったフィーネはイビキを出す父を置いて、ホックスの元に来ていた。
「ありがとうございます!」
用意された荷物を受け取ると、フィーネは礼を告げる。
入れ物はホックスの母が手で縫い、一通りの小物セットを手先の器用な父が作ったものが入っている。
村の入り口で見送られ、ホックスとフィーネは二人旅をするのだった。
時は流れ。
ある国の豊かな街で、封術を生業に仕事をして少し裕福な家庭を築く一家がいたという。
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