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ーーー数年前
ある任務を受けて複数人が依頼対象となるものの始末するために貴族家へ入り込んでいた。
対象となる人物は依頼では成人していると知らされていたが、実際に調査して得られた情報である部屋にいる人物が該当する筈だった。
だが向かった部屋にいたのは少女といえる子供だった。
私達は子供まで手を掛けるほど、依頼を遂行したいわけではない。
そのため、そっと屋敷の外まで撤退した後だった。
この依頼自体が私達を誘き出すための罠だと理解できたのは警備が薄い門から外に出た途端、傭兵団に囲まれたからだった。
傭兵の一人が持っていた依頼書が私達に与えられた任務と同様だったことから嵌められたことを理解し、散り散りに逃げることを選択した。
必死に逃げ続けた結果、数十人いた仲間が既に数人まで人数が減らされ、中には息を引き取ろうとする者まで存在していた。
私はある一族の長となって導く筈だったが、こんな事で躓いたことを嘆いた。
そんな心境の中、茂みから足音が近付いて来ることに気が付いたが、身体には力が入らなかった。
だがそこには赤茶色の髪をした少女が立っていた。
命を狙われているのに、ここから遠ざけなければと意気込んで尋ねてみようと思ったが、少女の方が先だった。
「貴方達、こんなところで何をしているの?」
「いや、ちょっと仕事を失敗してしまってね。怖い人に追われているんだよ。」
「ふぅん、そうなんだ。」
「もし御両親が近くにいるのなら、私達と会った事は黙っていてくれないかな?」
それは自分たちに先が無いことを悟ったが故の言葉でもあり、ついでに少女が巻き込まれないようにするためだった。
もう既に命の灯火が尽きようとしている者がチラホラ見えていたことも起因していた。
だが少女は周囲を一瞥すると、無言で来た道を戻って行ってしまった。
それから数分が経った頃、再び茂みから今度は大勢の足音が聞こえ始めたことで、腹を括ろうと決意を固めようと身構えていたが、やってきた騎士の先頭にいたのは先程の赤茶色の髪をした少女だったことに驚いた。
「この人たちを助けてあげてほしいの。お願い」
騎士は無言で重傷を負った者から治療を始めた事で、消えかけていた灯火が戻ってきたことを感じた。
後から思えば、この時に主人として私達は認めていたのだと思ったのだった。
仲間達の治療が終わり、少女は家に連れて帰ると言い出したことには流石の騎士も動揺したようだが、真剣な少女の瞳で決定された。
森林を抜けて直ぐに見えてきた建物が屋敷だと分かると、少女は貴族なのではないかと気付いてしまった。
建物の前では騎士が大勢控えており、中央には大柄な男が剣を地面に刺して待っていた。
「お父様、帰りました。」
「ティリア。心配をかけるんじゃない。さあ、こっちへおいで」
「駄目。この前、"私の誕生日は何が欲しい"かって聞いていたよね?」
「ああ、そうだな。だが何故ここで」
「私、この人達を専属侍従にすることに決めたの!だから誕生日プレゼントは要らない!」
「それは駄目だ。そいつらは危険だ、治療が終わり次第、追い出してくれる。」
「じゃあ、その時は私も付いていく!」
「なっ!?」
「もし許してくれないなら、お父様なんて、もう読んであげないんだから!」
「分かったから。侍従にしても良いから。だからそんなことを言わないでおくれ!」
「流石、私自慢のお父様!」
「うんうん。だがな、人はペットとは違って…」
「なぁに?」
「何でもない。何でもないよ、ティリア。」
それから間もなく、怪我が治ると同時に仲間と共に執事や庭師へと転職する事が叶ったのだった。
ある任務を受けて複数人が依頼対象となるものの始末するために貴族家へ入り込んでいた。
対象となる人物は依頼では成人していると知らされていたが、実際に調査して得られた情報である部屋にいる人物が該当する筈だった。
だが向かった部屋にいたのは少女といえる子供だった。
私達は子供まで手を掛けるほど、依頼を遂行したいわけではない。
そのため、そっと屋敷の外まで撤退した後だった。
この依頼自体が私達を誘き出すための罠だと理解できたのは警備が薄い門から外に出た途端、傭兵団に囲まれたからだった。
傭兵の一人が持っていた依頼書が私達に与えられた任務と同様だったことから嵌められたことを理解し、散り散りに逃げることを選択した。
必死に逃げ続けた結果、数十人いた仲間が既に数人まで人数が減らされ、中には息を引き取ろうとする者まで存在していた。
私はある一族の長となって導く筈だったが、こんな事で躓いたことを嘆いた。
そんな心境の中、茂みから足音が近付いて来ることに気が付いたが、身体には力が入らなかった。
だがそこには赤茶色の髪をした少女が立っていた。
命を狙われているのに、ここから遠ざけなければと意気込んで尋ねてみようと思ったが、少女の方が先だった。
「貴方達、こんなところで何をしているの?」
「いや、ちょっと仕事を失敗してしまってね。怖い人に追われているんだよ。」
「ふぅん、そうなんだ。」
「もし御両親が近くにいるのなら、私達と会った事は黙っていてくれないかな?」
それは自分たちに先が無いことを悟ったが故の言葉でもあり、ついでに少女が巻き込まれないようにするためだった。
もう既に命の灯火が尽きようとしている者がチラホラ見えていたことも起因していた。
だが少女は周囲を一瞥すると、無言で来た道を戻って行ってしまった。
それから数分が経った頃、再び茂みから今度は大勢の足音が聞こえ始めたことで、腹を括ろうと決意を固めようと身構えていたが、やってきた騎士の先頭にいたのは先程の赤茶色の髪をした少女だったことに驚いた。
「この人たちを助けてあげてほしいの。お願い」
騎士は無言で重傷を負った者から治療を始めた事で、消えかけていた灯火が戻ってきたことを感じた。
後から思えば、この時に主人として私達は認めていたのだと思ったのだった。
仲間達の治療が終わり、少女は家に連れて帰ると言い出したことには流石の騎士も動揺したようだが、真剣な少女の瞳で決定された。
森林を抜けて直ぐに見えてきた建物が屋敷だと分かると、少女は貴族なのではないかと気付いてしまった。
建物の前では騎士が大勢控えており、中央には大柄な男が剣を地面に刺して待っていた。
「お父様、帰りました。」
「ティリア。心配をかけるんじゃない。さあ、こっちへおいで」
「駄目。この前、"私の誕生日は何が欲しい"かって聞いていたよね?」
「ああ、そうだな。だが何故ここで」
「私、この人達を専属侍従にすることに決めたの!だから誕生日プレゼントは要らない!」
「それは駄目だ。そいつらは危険だ、治療が終わり次第、追い出してくれる。」
「じゃあ、その時は私も付いていく!」
「なっ!?」
「もし許してくれないなら、お父様なんて、もう読んであげないんだから!」
「分かったから。侍従にしても良いから。だからそんなことを言わないでおくれ!」
「流石、私自慢のお父様!」
「うんうん。だがな、人はペットとは違って…」
「なぁに?」
「何でもない。何でもないよ、ティリア。」
それから間もなく、怪我が治ると同時に仲間と共に執事や庭師へと転職する事が叶ったのだった。
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