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第42話
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「保胤さん……どうして……! 今日遅くなるって……!」
保胤の背中越しに見える壁掛けの時計は六時半を指していた。
夕方と夜の境目のこの時間、本来であれば保胤はまだ仕事中だ。しかも今夜は帰りが遅くなると言っていた。
「早くあなたに会いたくて帰ってきちゃいました」
保胤はいたずらっぽく笑った。その笑顔に一葉は胸が一杯になり何も言えなくなった。
「お夕飯の準備、僕も手伝います」
保胤は鞄を台所の隅に置いて背広の上着を脱いだ。玄関からそのままここへ直行したようだ。
「そ、そんなことあなたにさせられません……!」
ワイシャツの袖を捲り始めた保胤を一葉は慌てて止める。
「どうして? 二人で作った方が早いじゃないですか」
「私がやりますから……保胤さんはどうか休んでいてください!」
「もしかして僕が料理できないと思ってる? これでもね、米ぐらい炊けるんですよ」
保胤は手を洗い、慣れた手つきで米びつから桝で米をすくってザルに入れる。
「今日は二人だから一合でいいのかな? いや、足りないかな……一葉さんお腹の空き具合はどれぐらい?」
「あの、私がやりますから……ごめんなさい……作り始めるのが遅かったせいであなたにこんなことを」
「一葉さん」
保胤は一葉の顔を覗き込む。その目があまりに真剣で一葉は息を飲んだ。
「前にも言ったけれど、あなたはこの家の家政婦さんじゃないよ。僕の妻だ。僕の世話をすることはあなたの仕事じゃない。だからそんな風に謝る必要もないんだ」
保胤の真剣な眼差し。
直球で優しさのこもった言葉。
(だめ……今、優しくされたら……)
一葉の瞳に水の膜が張っていく。
「……肉じゃがの味付けお願いしていい? 僕、煮物は濃い目が好きだな」
一葉はこくんと頷き火を止めた鍋の方を向く。
泣きそうになっている顔を見られたくはなかった。
再び鍋からふわふわと湯気が上がり始める。
少し多めの砂糖と味醂と醤油を鍋に入れると、ふわりと甘じょっぱい匂いが台所に広がる。その横で米を研ぐリズムカルな音が響く。
「あの、味見……お願いします」
肉じゃがに味を染み込ませている間に一葉は味噌汁を作った。
今日の具材は豆腐と葱だ。小皿に汁を少し注ぎ、保胤へ渡そうとした。
二人きりだからか、保胤はマスクを外しっぱなしでいた。
保胤は小皿を受け取らず一葉の手首を掴んでそのまま自分の口元へ持っていく。軽く頭を下げ小皿に唇を寄せて汁をちゅぅと吸った。
「……ン。うん、おいしいです」
緒方家に初めて来た日、味噌汁を作った時と同じ光景。だけどあの時とは明確に違う。
手首を掴んだ保胤の手の冷たさと前髪の感触がこそばい。そこからじわりと熱が生まれる感覚に一葉はまつ毛を震わせる。そして、そんな一葉の反応を保胤が見逃すはずはない。
そのままゆっくりと、どちらからともなく互いに顔を近づけた。
「……ん」
段々と合わせる唇が深くなる。一葉が少しでも唇を離すと追いかけるように保胤が唇をふさぐ。
「は……ッ」
絡まる舌に腰が震えて立っていられずふるふると身体を震わせた。その様子をみて、唇を合わせたまま保胤は一葉の手から小皿をそっと取り上げ焜炉の端に置いた。
両手が自由になった一葉は保胤にしがみつく。保胤も彼女の腰に手を回して身体を密着させる。一葉は保胤に身を委ね必死についていく。保胤は薄く目を開けて一葉の痴態をしばらく堪能した後、そっと唇を離した。
「……あ……?」
一葉は名残惜しそうな声を漏らす。
「ふふ……ご飯食べましょうか?」
「……!!!!」
一葉の濡れた唇を指できゅっと拭う。
「それとも寝室へ行きますか?」
「ご飯を食べましょう!! なんだか私とってもお腹が空いてきました!!」
一葉はぱっと保胤から身体を離し、水屋からお茶碗とお椀を取り出した。その後ろで保胤はおかしそうに笑った。
「僕、一度荷物を部屋に置いてきますね」
そう言って鞄と背広の上着を拾って二階へと向かった。保胤の背中を見送り、その姿が見えなくなると一葉は両手で顔を覆う。
(ううううう……私ったらなんて真似を……)
いつからこんな浅ましくはしたない行動をするようになったのだろう。自分が信じられない。
一葉は顔を真っ赤にして別の意味で泣きそうになった。それでも、先ほどまでの暗く寂しい感情はどこかへ消え去っていた。
*
*
*
*
保胤は書斎に入ると、手に持っていた鞄と上着をソファへ乱暴に投げた。つかつかと早足で机に向かい、受話器をとる。
「……ああ、三上さん? 僕です」
電話をしながら保胤は机に腰かける。
「会社に電話くれてありがとう。先ほど戻りました。ええ……一葉さんはやはりいつもと様子が違ったよ」
首元で受話器を固定しながら保胤は首元のネクタイを緩めていく。
「それで? 戻って来た時どこへ行っていたと言った?」
ネクタイに掛けていた手がピタリと止まる。
次第に保胤の眉間には深い皺が寄っていく。
「……そう。実家に」
絞り出すような緊張感のある声は怒りが滲んでいた。
「……分かった。僕の不在中また彼女に異変があったらすぐに連絡してください。ええ、それじゃあ」
バンッ!!!!!!!!!!!!!!
受話器を置いた瞬間、保胤は机に拳を振り下ろす。振動で机上の書類がばらばらと落下した。保胤は肩を上下に動かし荒い呼吸を繰り返す。
今度は弾かれたようにクローゼットへ向かう。シャツを脱ぎ部屋着用の浴衣にさっと着替えた。
クローゼットにしつらえた姿見に自分の顔が映る。その形相を保胤は鼻で笑った。俯いてふーっと息を吐く。
保胤は顔をあげる。
一葉のためだけの、一葉にしか見せない優しい夫の顔を造って部屋を出た。
*********
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保胤の背中越しに見える壁掛けの時計は六時半を指していた。
夕方と夜の境目のこの時間、本来であれば保胤はまだ仕事中だ。しかも今夜は帰りが遅くなると言っていた。
「早くあなたに会いたくて帰ってきちゃいました」
保胤はいたずらっぽく笑った。その笑顔に一葉は胸が一杯になり何も言えなくなった。
「お夕飯の準備、僕も手伝います」
保胤は鞄を台所の隅に置いて背広の上着を脱いだ。玄関からそのままここへ直行したようだ。
「そ、そんなことあなたにさせられません……!」
ワイシャツの袖を捲り始めた保胤を一葉は慌てて止める。
「どうして? 二人で作った方が早いじゃないですか」
「私がやりますから……保胤さんはどうか休んでいてください!」
「もしかして僕が料理できないと思ってる? これでもね、米ぐらい炊けるんですよ」
保胤は手を洗い、慣れた手つきで米びつから桝で米をすくってザルに入れる。
「今日は二人だから一合でいいのかな? いや、足りないかな……一葉さんお腹の空き具合はどれぐらい?」
「あの、私がやりますから……ごめんなさい……作り始めるのが遅かったせいであなたにこんなことを」
「一葉さん」
保胤は一葉の顔を覗き込む。その目があまりに真剣で一葉は息を飲んだ。
「前にも言ったけれど、あなたはこの家の家政婦さんじゃないよ。僕の妻だ。僕の世話をすることはあなたの仕事じゃない。だからそんな風に謝る必要もないんだ」
保胤の真剣な眼差し。
直球で優しさのこもった言葉。
(だめ……今、優しくされたら……)
一葉の瞳に水の膜が張っていく。
「……肉じゃがの味付けお願いしていい? 僕、煮物は濃い目が好きだな」
一葉はこくんと頷き火を止めた鍋の方を向く。
泣きそうになっている顔を見られたくはなかった。
再び鍋からふわふわと湯気が上がり始める。
少し多めの砂糖と味醂と醤油を鍋に入れると、ふわりと甘じょっぱい匂いが台所に広がる。その横で米を研ぐリズムカルな音が響く。
「あの、味見……お願いします」
肉じゃがに味を染み込ませている間に一葉は味噌汁を作った。
今日の具材は豆腐と葱だ。小皿に汁を少し注ぎ、保胤へ渡そうとした。
二人きりだからか、保胤はマスクを外しっぱなしでいた。
保胤は小皿を受け取らず一葉の手首を掴んでそのまま自分の口元へ持っていく。軽く頭を下げ小皿に唇を寄せて汁をちゅぅと吸った。
「……ン。うん、おいしいです」
緒方家に初めて来た日、味噌汁を作った時と同じ光景。だけどあの時とは明確に違う。
手首を掴んだ保胤の手の冷たさと前髪の感触がこそばい。そこからじわりと熱が生まれる感覚に一葉はまつ毛を震わせる。そして、そんな一葉の反応を保胤が見逃すはずはない。
そのままゆっくりと、どちらからともなく互いに顔を近づけた。
「……ん」
段々と合わせる唇が深くなる。一葉が少しでも唇を離すと追いかけるように保胤が唇をふさぐ。
「は……ッ」
絡まる舌に腰が震えて立っていられずふるふると身体を震わせた。その様子をみて、唇を合わせたまま保胤は一葉の手から小皿をそっと取り上げ焜炉の端に置いた。
両手が自由になった一葉は保胤にしがみつく。保胤も彼女の腰に手を回して身体を密着させる。一葉は保胤に身を委ね必死についていく。保胤は薄く目を開けて一葉の痴態をしばらく堪能した後、そっと唇を離した。
「……あ……?」
一葉は名残惜しそうな声を漏らす。
「ふふ……ご飯食べましょうか?」
「……!!!!」
一葉の濡れた唇を指できゅっと拭う。
「それとも寝室へ行きますか?」
「ご飯を食べましょう!! なんだか私とってもお腹が空いてきました!!」
一葉はぱっと保胤から身体を離し、水屋からお茶碗とお椀を取り出した。その後ろで保胤はおかしそうに笑った。
「僕、一度荷物を部屋に置いてきますね」
そう言って鞄と背広の上着を拾って二階へと向かった。保胤の背中を見送り、その姿が見えなくなると一葉は両手で顔を覆う。
(ううううう……私ったらなんて真似を……)
いつからこんな浅ましくはしたない行動をするようになったのだろう。自分が信じられない。
一葉は顔を真っ赤にして別の意味で泣きそうになった。それでも、先ほどまでの暗く寂しい感情はどこかへ消え去っていた。
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保胤は書斎に入ると、手に持っていた鞄と上着をソファへ乱暴に投げた。つかつかと早足で机に向かい、受話器をとる。
「……ああ、三上さん? 僕です」
電話をしながら保胤は机に腰かける。
「会社に電話くれてありがとう。先ほど戻りました。ええ……一葉さんはやはりいつもと様子が違ったよ」
首元で受話器を固定しながら保胤は首元のネクタイを緩めていく。
「それで? 戻って来た時どこへ行っていたと言った?」
ネクタイに掛けていた手がピタリと止まる。
次第に保胤の眉間には深い皺が寄っていく。
「……そう。実家に」
絞り出すような緊張感のある声は怒りが滲んでいた。
「……分かった。僕の不在中また彼女に異変があったらすぐに連絡してください。ええ、それじゃあ」
バンッ!!!!!!!!!!!!!!
受話器を置いた瞬間、保胤は机に拳を振り下ろす。振動で机上の書類がばらばらと落下した。保胤は肩を上下に動かし荒い呼吸を繰り返す。
今度は弾かれたようにクローゼットへ向かう。シャツを脱ぎ部屋着用の浴衣にさっと着替えた。
クローゼットにしつらえた姿見に自分の顔が映る。その形相を保胤は鼻で笑った。俯いてふーっと息を吐く。
保胤は顔をあげる。
一葉のためだけの、一葉にしか見せない優しい夫の顔を造って部屋を出た。
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