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第一章 指を締め付ける鎖
※1 売られる俺の話
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「昔は名の知れた魔導師だったんだろ? なのに今はこんな使えねぇ男に成り下がったんだってな」
俺はその言葉に涙を飲み込む。
「おら、手が止まってんぞ」
目の前に投げ出された足を無言で包むように握り、ゆっくりと足の裏を揉む。力を入れて土踏まずに滑らせるとアールは横柄な態度で鼻を鳴らし、足の指を動かす。
「マッサージは上手いけどな。それ以外に使える道なんて……、あ、あと一つあったか」
その嫌な声色に体がすぐに強張る。
アールの太く筋肉質な腕が俺の腕を掴み、自分の方へと引っ張り寄せる。大きく笑みを描いた口の中は恐怖すら感じるほど腐った歯が黒や黄色とカラフルだ。きつい口臭に息を止める。なのに無情にもその分厚い唇を押し付けられ、ぬめった舌がヌルリと滑り込んでくる。
「……ぅ……、……っは……っ」
酸素を吸い込む度に歯を蝕む虫歯菌に侵されていく感覚。アールは俺の反応なんかは気にしないで好き勝手に喉にまで舌を押し込んでくる。ドロっとした苦い唾液が口内に広がり、吐きたいのを堪える。
俺の口に舌を突っ込みながらアールの節張った手が一気に下着ごとズボンを引き摺り下ろす。
「おら、ちゃんとてめぇを借りる為に使った銅貨10枚分の働きをしろや」
銅貨10枚、それが今の俺の価値か。
安めな宿一泊分。大量の料理一食分。使い捨て並みに安い剣一本分。低級の傷ポーション一本分。
――――俺って……そこまで彼にとって価値ないのか
「……いっ!」
大男は俺を地面に押し付けると指を濡らして強引に体内に突っ込んでくる。硬い体内が痛みで更に強張り、不幸にも彼の指をきつく締め付ける。
「きっつい穴してやがる。処女じゃねぇんだろが、ちょっとは自分から緩めろ、無能」
無理難題な命令をしながら強く指で俺の中を拡げてくる。涙が出そうになりながらもそれを一生懸命堪える。
――――泣かない。絶対に泣いてやるもんか
5年前、俺は全てを捨て、想い人と結婚をした。
冒険者パーティーを共に組み、親友とも家族ともいえるような関係のパーティーは俺達を含めて6人だった。この心地良い関係の中、早々に彼を好きになってしまった。俺に優しく、いつも格好良かった彼は、初めは俺の気持ちに気付かないふりをしてくれた。彼の性対象は女性だからだ。それでも近くにいて、一緒に笑い合って、毎日共にいられる事が何よりも幸せだった。
ヌチッ グチュグチュ グヂュ
強引な行為に慣れている体だ。アールの指は雑に俺の体内を掻き回す。それでも濡れてきた肉襞が強張りを解き、拡がり始める。
「ははは、濡れてきてやがる。根っからのビッチじゃねぇか」
アールは指を引き抜くと地面に押し付けられたままの俺のお尻を一気に貫く。
「……ぐっ! ……ぅ、あっ、ぁ! いっ……!」
パンパンパンパン
すぐに荒々しく、性欲発散の為だけの道具として下半身を打ち付けられる。奴の下半身が俺のお尻に当たる度に肉のぶつかり合う音がする。激しい動きの反動でお尻がぶるぶる揺れる。睾丸まで痺れるように痛い。
唯一の救いはアールの男根は小さい事だろうか。
それでも無理矢理引き裂かれる痛みに歯を食いしばる。地面に押し付けられた顔は土に塗れ、口や鼻の中にも土が入り込む。反射的に咽せるとアールの気に触ったのか、頭を強く叩かれる。
「静かにしろ! 気が散る!」
一突き一突きアールの欲望が俺の肉襞を押し分ける。長年の扱いで自然と体を守ろうと滲んでくる体液がなければ酷く裂けていただろう。
「ぅっ、お、きついっ!」
彼は今まで一番強く下半身を押し込むように押し付け、俺の体内に気持ち悪い白濁を放つ。
「はははは、お前の穴はまだまだ使えるな! 何度突っ込んでもいいな!」
臭い陰茎を引き出されて空いた穴がすぐに閉じようと窄まる。タラタラと垂れてくる精液の感覚の悍ましさに身震いをする。
「おら、さっさと帰れ。契約の24時間はこれで終わりだ。また注文入れてやる」
俺はズボンを掴み、よろめきながらタバコを吸い出したアールから離れる。逃げるように下半身を露出したままで山の草を掻き分けていく。
すぐに目的の小さな池に辿り着く。シャツを脱ぎ、ゆっくりと水の中に入っていく。
冷たな水に震えるが、摩擦で熱く腫れた患部には気持ちがいい。
「洗浄」
シュワッとした感覚に体内外のベタつきや気持ち悪さが瞬時に消え去る。それでも感覚は拭えず、あの男の触れた感触をなるべく早く消し去るように痛みを無視して体内に指を入れて洗う。
――――まだマシだ。もっと酷い時の方が多いじゃかいか。今回はマシだ
まるで自分に言い聞かせるように何度も頭の中で繰り返す。
酷い時は一人じゃない。何人も同時だったり、痛みつけるのが好きなサイコ野郎だったり、俺を又貸しして儲けた強者もいた。
そういう時はいつも魔導師でいて良かったと心から思う。もっとももう魔導師の仕事なんかしていないが。清浄魔法や治癒魔法がなければ俺の体はもうとっくに病気になっていたか動かくなくなっていただろう。
やっと満足するぐらい体が綺麗になると服を着替えて池の淵にそっと座る。
結婚した時はあんなに幸せだったのに、こんな日常になるとは思っていなかった。
パーティーでダンジョンに潜ったのだが、夫はそこで怪我をした。その怪我はモンスターの呪詛でついてしまったもので治癒魔法は効かなかった。そして彼のそれはパーティーの生死を決めるような大怪我でもあった。俺は残りのメンバーの反対を押しやり、単身で彼を護りながら地上まで生還した。
彼の足はちゃんと手当てが出来るまで時間が掛かった事から、切除されてしまった。
想い人の冒険者としての人生は、ここで絶たれた。
――――彼は時間が掛かったから俺を恨んでいるのだろうか
直接何も言われた事はなかったが、今の生活からはそうとしか思えない。
俺はそっと立ち上がり、着替え始める。前に仕事が終わったらすぐに帰ってこいと怒られた。
街に戻るとすれ違う男達が卑しそうに、または嫌そうに睨んで通り過ぎる。俺の事を買った男達かこの生き方に拒絶感を持つ人達だ。
安く治安の悪い居住区に入る。
その一軒の前で立ち止まる。中から女のうるさいほどの喘ぎ声とベッドの軋む音がする。
――――あぁ……またやっている……
彼は片脚を失った。激しく落ち込んだ彼の看病を日夜通して続けた。酷く罵られる事もあった。情緒が落ち着いた彼は、プロポーズをしてくれた。
そうして俺達は付き合う事なく、夫夫となった。男が抱けない彼に触れられる事はない。今でもない。
ずっと白い結婚のままだ。
新婚三ヶ月目に彼の足の治療の為に急遽お金が必要になった。『一度だけだから』そう泣きながら懇願されて、俺の初めては最高高値を出した男に買われた。一度が二度になり、三度になり、今では俺達の生活費となった。
遠慮気味にドアを開ける。
女は夫の上に跨っている。彼は揺れる乳房を両手で掴み、下から突き上げている。
「……カシン……」
夫の名を呼ぶと彼は舌打ちをしながら腰を止める。
「ちっ! 早かったな、レン。今……医者に……診て貰ってるんだ。ほら、何か食べ物でも買ってな。夜6時にバーで次の仕事が入っているぞ! 今度は三日連続だとよ!」
女は夫と繋がったまま、肩からチラリと俺を見る。その血のように真っ赤な紅を塗りたくられた毒々しい唇が僅かに俺を嘲笑う。
カシンはベッドサイドの上から硬貨を掴むと俺に投げて寄越す。
「ちょっと! それは私にくれたお金でしょ⁉︎」
女のヒステリックな声を無視して硬貨を拾う。
「静かにしろよ! ちゃんと払ってやるから!」
俺は無言で家を出る。
次の仕事は三日。その間カシンは何人の娼婦を俺達のベッドに引き込むのだろうか。最初はそれを隠していた夫は、今はもう大して隠す努力すらしていない。彼は俺を、自分の夫を、売ったお金で女性の娼婦を買い漁る。
カシンから投げられたお金は溜めている。そうやってお金が少し溜まるとカシンに見付かり、いつの間にかなくなっている。それだったら自分に使えばいいのだが、心のどこかでまだ彼に尽くしたい俺がそれを拒否する。
俺は公園の木の下に座りながら通り過ぎる人々をゆっくりと眺める。
一緒にパーティーを組んでいたのが3年、結婚5年。もう8年も夫といる。
彼の為に嫌いな男や生理的に受け入れられない男に抱かれる事にも慣れた。慣れたと言っても、楽になった訳ではない。
「……疲れたな」
夫の事は今でも愛している。だが昔のようなきらきらとした憧れのような愛ではなく、彼と堕ちられる場所まで堕ちたような感覚の愛に、時々生きる事が嫌になる。
「レンじゃねぇか。へへへ、また締め出されたのか?」
何度かカシンのお客になった男が好色な目付きで俺の体を舐め回す。
「行くところねぇんだったら俺の家に来いよ。温かくしてやるよ。カシンに内緒でお小遣いもやる」
俺の肩に腕を回すと襟元から手を差し込んでくる。俺は無表情でその手を掴むと軽く捻る。
「いてててて!」
「放せ。夫の許可を取ってこい」
「ふざけんな、肉便器が! 今更一発二発やられたからといって何かが変わるほど綺麗な体してねぇだろ!」
――――本当にその通りだな
俺は抵抗を止めて振り上げられた手を黙って見る。
「優しくしてやっているのに、てめぇは大人しく股を開けばいいんだよ!」
鳩尾に彼の拳が食い込む。
「……っぐ!」
「おら、てめぇは黙ってついて来い!」
腕を引っ張られて俺はよろけながら立ち上がる。
――――あー……、……疲れた……
「……レンさん?」
久し振りに「さん」付けされたなぁ、と思いながら男と一緒に振り向く。
俺はその言葉に涙を飲み込む。
「おら、手が止まってんぞ」
目の前に投げ出された足を無言で包むように握り、ゆっくりと足の裏を揉む。力を入れて土踏まずに滑らせるとアールは横柄な態度で鼻を鳴らし、足の指を動かす。
「マッサージは上手いけどな。それ以外に使える道なんて……、あ、あと一つあったか」
その嫌な声色に体がすぐに強張る。
アールの太く筋肉質な腕が俺の腕を掴み、自分の方へと引っ張り寄せる。大きく笑みを描いた口の中は恐怖すら感じるほど腐った歯が黒や黄色とカラフルだ。きつい口臭に息を止める。なのに無情にもその分厚い唇を押し付けられ、ぬめった舌がヌルリと滑り込んでくる。
「……ぅ……、……っは……っ」
酸素を吸い込む度に歯を蝕む虫歯菌に侵されていく感覚。アールは俺の反応なんかは気にしないで好き勝手に喉にまで舌を押し込んでくる。ドロっとした苦い唾液が口内に広がり、吐きたいのを堪える。
俺の口に舌を突っ込みながらアールの節張った手が一気に下着ごとズボンを引き摺り下ろす。
「おら、ちゃんとてめぇを借りる為に使った銅貨10枚分の働きをしろや」
銅貨10枚、それが今の俺の価値か。
安めな宿一泊分。大量の料理一食分。使い捨て並みに安い剣一本分。低級の傷ポーション一本分。
――――俺って……そこまで彼にとって価値ないのか
「……いっ!」
大男は俺を地面に押し付けると指を濡らして強引に体内に突っ込んでくる。硬い体内が痛みで更に強張り、不幸にも彼の指をきつく締め付ける。
「きっつい穴してやがる。処女じゃねぇんだろが、ちょっとは自分から緩めろ、無能」
無理難題な命令をしながら強く指で俺の中を拡げてくる。涙が出そうになりながらもそれを一生懸命堪える。
――――泣かない。絶対に泣いてやるもんか
5年前、俺は全てを捨て、想い人と結婚をした。
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ヌチッ グチュグチュ グヂュ
強引な行為に慣れている体だ。アールの指は雑に俺の体内を掻き回す。それでも濡れてきた肉襞が強張りを解き、拡がり始める。
「ははは、濡れてきてやがる。根っからのビッチじゃねぇか」
アールは指を引き抜くと地面に押し付けられたままの俺のお尻を一気に貫く。
「……ぐっ! ……ぅ、あっ、ぁ! いっ……!」
パンパンパンパン
すぐに荒々しく、性欲発散の為だけの道具として下半身を打ち付けられる。奴の下半身が俺のお尻に当たる度に肉のぶつかり合う音がする。激しい動きの反動でお尻がぶるぶる揺れる。睾丸まで痺れるように痛い。
唯一の救いはアールの男根は小さい事だろうか。
それでも無理矢理引き裂かれる痛みに歯を食いしばる。地面に押し付けられた顔は土に塗れ、口や鼻の中にも土が入り込む。反射的に咽せるとアールの気に触ったのか、頭を強く叩かれる。
「静かにしろ! 気が散る!」
一突き一突きアールの欲望が俺の肉襞を押し分ける。長年の扱いで自然と体を守ろうと滲んでくる体液がなければ酷く裂けていただろう。
「ぅっ、お、きついっ!」
彼は今まで一番強く下半身を押し込むように押し付け、俺の体内に気持ち悪い白濁を放つ。
「はははは、お前の穴はまだまだ使えるな! 何度突っ込んでもいいな!」
臭い陰茎を引き出されて空いた穴がすぐに閉じようと窄まる。タラタラと垂れてくる精液の感覚の悍ましさに身震いをする。
「おら、さっさと帰れ。契約の24時間はこれで終わりだ。また注文入れてやる」
俺はズボンを掴み、よろめきながらタバコを吸い出したアールから離れる。逃げるように下半身を露出したままで山の草を掻き分けていく。
すぐに目的の小さな池に辿り着く。シャツを脱ぎ、ゆっくりと水の中に入っていく。
冷たな水に震えるが、摩擦で熱く腫れた患部には気持ちがいい。
「洗浄」
シュワッとした感覚に体内外のベタつきや気持ち悪さが瞬時に消え去る。それでも感覚は拭えず、あの男の触れた感触をなるべく早く消し去るように痛みを無視して体内に指を入れて洗う。
――――まだマシだ。もっと酷い時の方が多いじゃかいか。今回はマシだ
まるで自分に言い聞かせるように何度も頭の中で繰り返す。
酷い時は一人じゃない。何人も同時だったり、痛みつけるのが好きなサイコ野郎だったり、俺を又貸しして儲けた強者もいた。
そういう時はいつも魔導師でいて良かったと心から思う。もっとももう魔導師の仕事なんかしていないが。清浄魔法や治癒魔法がなければ俺の体はもうとっくに病気になっていたか動かくなくなっていただろう。
やっと満足するぐらい体が綺麗になると服を着替えて池の淵にそっと座る。
結婚した時はあんなに幸せだったのに、こんな日常になるとは思っていなかった。
パーティーでダンジョンに潜ったのだが、夫はそこで怪我をした。その怪我はモンスターの呪詛でついてしまったもので治癒魔法は効かなかった。そして彼のそれはパーティーの生死を決めるような大怪我でもあった。俺は残りのメンバーの反対を押しやり、単身で彼を護りながら地上まで生還した。
彼の足はちゃんと手当てが出来るまで時間が掛かった事から、切除されてしまった。
想い人の冒険者としての人生は、ここで絶たれた。
――――彼は時間が掛かったから俺を恨んでいるのだろうか
直接何も言われた事はなかったが、今の生活からはそうとしか思えない。
俺はそっと立ち上がり、着替え始める。前に仕事が終わったらすぐに帰ってこいと怒られた。
街に戻るとすれ違う男達が卑しそうに、または嫌そうに睨んで通り過ぎる。俺の事を買った男達かこの生き方に拒絶感を持つ人達だ。
安く治安の悪い居住区に入る。
その一軒の前で立ち止まる。中から女のうるさいほどの喘ぎ声とベッドの軋む音がする。
――――あぁ……またやっている……
彼は片脚を失った。激しく落ち込んだ彼の看病を日夜通して続けた。酷く罵られる事もあった。情緒が落ち着いた彼は、プロポーズをしてくれた。
そうして俺達は付き合う事なく、夫夫となった。男が抱けない彼に触れられる事はない。今でもない。
ずっと白い結婚のままだ。
新婚三ヶ月目に彼の足の治療の為に急遽お金が必要になった。『一度だけだから』そう泣きながら懇願されて、俺の初めては最高高値を出した男に買われた。一度が二度になり、三度になり、今では俺達の生活費となった。
遠慮気味にドアを開ける。
女は夫の上に跨っている。彼は揺れる乳房を両手で掴み、下から突き上げている。
「……カシン……」
夫の名を呼ぶと彼は舌打ちをしながら腰を止める。
「ちっ! 早かったな、レン。今……医者に……診て貰ってるんだ。ほら、何か食べ物でも買ってな。夜6時にバーで次の仕事が入っているぞ! 今度は三日連続だとよ!」
女は夫と繋がったまま、肩からチラリと俺を見る。その血のように真っ赤な紅を塗りたくられた毒々しい唇が僅かに俺を嘲笑う。
カシンはベッドサイドの上から硬貨を掴むと俺に投げて寄越す。
「ちょっと! それは私にくれたお金でしょ⁉︎」
女のヒステリックな声を無視して硬貨を拾う。
「静かにしろよ! ちゃんと払ってやるから!」
俺は無言で家を出る。
次の仕事は三日。その間カシンは何人の娼婦を俺達のベッドに引き込むのだろうか。最初はそれを隠していた夫は、今はもう大して隠す努力すらしていない。彼は俺を、自分の夫を、売ったお金で女性の娼婦を買い漁る。
カシンから投げられたお金は溜めている。そうやってお金が少し溜まるとカシンに見付かり、いつの間にかなくなっている。それだったら自分に使えばいいのだが、心のどこかでまだ彼に尽くしたい俺がそれを拒否する。
俺は公園の木の下に座りながら通り過ぎる人々をゆっくりと眺める。
一緒にパーティーを組んでいたのが3年、結婚5年。もう8年も夫といる。
彼の為に嫌いな男や生理的に受け入れられない男に抱かれる事にも慣れた。慣れたと言っても、楽になった訳ではない。
「……疲れたな」
夫の事は今でも愛している。だが昔のようなきらきらとした憧れのような愛ではなく、彼と堕ちられる場所まで堕ちたような感覚の愛に、時々生きる事が嫌になる。
「レンじゃねぇか。へへへ、また締め出されたのか?」
何度かカシンのお客になった男が好色な目付きで俺の体を舐め回す。
「行くところねぇんだったら俺の家に来いよ。温かくしてやるよ。カシンに内緒でお小遣いもやる」
俺の肩に腕を回すと襟元から手を差し込んでくる。俺は無表情でその手を掴むと軽く捻る。
「いてててて!」
「放せ。夫の許可を取ってこい」
「ふざけんな、肉便器が! 今更一発二発やられたからといって何かが変わるほど綺麗な体してねぇだろ!」
――――本当にその通りだな
俺は抵抗を止めて振り上げられた手を黙って見る。
「優しくしてやっているのに、てめぇは大人しく股を開けばいいんだよ!」
鳩尾に彼の拳が食い込む。
「……っぐ!」
「おら、てめぇは黙ってついて来い!」
腕を引っ張られて俺はよろけながら立ち上がる。
――――あー……、……疲れた……
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