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第二章 血液と精液と寿命
⑤ 血液と精液と寿命
◇◇
――――……温かくって、気持ちがいい
仲直り、と言っていいのかどうかは分からないが、結局二人で一緒にあのベッドで寝た。
天がやたらと寝る時は全裸とこだわったのが妙に面白い。そして昼過ぎに目が覚めるとしっかりと天の胸に抱きかかえられて寝ていた。誰かに抱き抱えられる事なんていつ以来だろう。幼い時の母にだろうか。だが何故か落ち着く。自分の姿が天井から見下ろしているのは物凄く違和感があるが。だが鏡に映っている天はかなりの男前だ。
暫くぼけっと顔を見ていると天が俺の頬を撫でてくる。切れ長の目が開いて鏡越しに目が合う。
「おはよう。よく寝られた?」
「凄く快適にぐっすり」
「ふふ、良かった」
前髪を長い指で触れてくる。
「ねぇ、なんで青と白なの?」
いつもより柔らかな声が耳元を擽る。
――――寝起きの天って……別の意味でヤバいかも
「地毛が白なんだ」
「いつから? 噛まれたあと?」
「だから、なんで、知っている?」
「だって匂いがするから」
――――えー、本当にその嗅覚どうなっているの? あなた、本当に人間?
俺の中のバンパイア細胞、今は皆無で研究所以外誰も知らないのに。
――――まぁ、どうせ分かっているみたいだし
「あぁ、噛まれてから白髪になった。……五年前噛まれて時にバンパイア化しかかった。それを食い止めるためにサイボーグ化の実験に参加した」
「噂で感染者と機械のクロス実験をしていたって聞いていたけど、本当だったんだねぇ。感染した臓器を全部取らないといけないんでしょう? どこ変えているの?」
眉間をトントンと軽く指で叩く。
「脳幹、心臓、両目、肺、右手、右足」
脳幹と心臓をまとめて一つの連続した機械化、別称サイボーグ化、は毎年十人ぐらいしか成功しない。この二つが一番の基本であり、この二つ以外の臓器や四肢なども機械や義肢へと取り替えているのが主だ。
サイボーグ化は技術的に問題があって難しい、というよりも脳のショック死が原因で生存率は低い。生身に機械情報が入り過ぎると、人間の脳は本当に内側から焼き腫れてしまう物だ。そして生身だった自分の体が機械に変わり、脳が自分の存在を拒否してしまって自殺する者も多い。
「脳幹、心臓、肺って事はもしかしてかなり長く呼吸しなくとも大丈夫って事? 鼓動は普通に脳と連携させて心の昂りに合わせて早くなったり遅くなったりしているのかな……。脳幹と目の組み合わせも良い機能が付けられそうだね。肺も気になる。……今度色々見せてみてよ」
「いいよ」
やたらと興味を持つな。殺人狂だとやっぱ人体の構造が気になるのか。でもお願いだからその時は殺さないで欲しい。
「見た目だと全然分からないね」
彼の手が体の色んなパーツに触れてくる。
「一番最近の変更は?」
「二年前の左目。右目はサイボーグ化した時に駄目になった」
上から至近距離で覗き込んでくる。そっと目に指を近付けてきたので、彼の指を取って目に触れさせる。痛くはないが触れているのは分かる。触られると目が自動的に触っている天を分析する。指の化学構造の情報が浮かび上がって、やはり彼は人間だと再確認する。
「凄い。ヒンヤリしていてちょっと濡れていて、プニプニしている。硬めの本物の眼球と凄くよく似ている」
――――なんで本物の眼球の感触を知っているのかは聞かない方がいいよな……
「面白いな。皮膚は?」
触れるか触れないかの強さで体を撫でてくる。ちょっと擽ったくって、少し性的に感じる。
「全部俺の。血液も念の為、今でも数ヶ月に一度血液洗浄みたいなのに行っている」
「術後生き残れた人はいないって聞いていたけど、他にもいた?」
俺は黙って頷く。
「脳幹と心臓が真っ先に感染するからな。普通は噛まれたらその場で取り出さないとすぐに全身にウィルスが回ってバンパイア化しちゃう。取り出したら取り出したですぐに死んでしまうしな」
「あは。やっぱりお兄さんは面白いね。でもこれじゃあ、それなりの資金が必要だよね。メンテ、再発した時の追加料金、あとはアップグレードとかかな?」
俺はまた黙って頷く。この人の頭の回転には脱帽する。
「今日はこの話題で攻撃してこないんだね」
「まだ寝惚けているから頭回ってない。……それに、ちょっと寝起きの天に見惚れている」
「ふふふ。お兄さんは寝起きは可愛いんだね」
――――『可愛い』ねぇ。今までそんなふうに言われた事ないや
天はどちらかと言うと男前で朝の方がよく喋る。でも嫌いじゃない。……俺に殺意を向けなければだけど。朝の方が狂人じみたヤバさが大人しくってこちらもリラックス出来る。
「ねぇ、今夜仕事あるけど付いて来る?」
「え。行く! 凄く行きたい!」
「僕、ハイになるからね」
「……」
――――あー、あの状態かぁ。あの状態ねぇ。……今から、凄く、怖い
ギシッと音がして、天が目を閉じて悶々と怖気付いている俺の上に四つん這いで乗っかる。下半身も裸だ。陰部同士が当たってちょっと反応してしまう。彼が笑う。
「こっちは生身のまま残って良かったじゃん」
ムニッて感触がエロくて気持ちが良い。俺は腰を掴もうと手を伸ばして、空気を掴んだ。天がベッドから降り、その引き締まった尻をズボンに押し込んでしまう。パンツは履かないらしい。
「朝食作ってくる」
バタンと閉じたドアに顔を両手で隠す。
――――今⁉︎ 今、この状態で放置する⁉︎ お願い……生殺しは止めてくれよ
行き場を失った肉棒が悲し気にびくんと跳ねる。
――――……温かくって、気持ちがいい
仲直り、と言っていいのかどうかは分からないが、結局二人で一緒にあのベッドで寝た。
天がやたらと寝る時は全裸とこだわったのが妙に面白い。そして昼過ぎに目が覚めるとしっかりと天の胸に抱きかかえられて寝ていた。誰かに抱き抱えられる事なんていつ以来だろう。幼い時の母にだろうか。だが何故か落ち着く。自分の姿が天井から見下ろしているのは物凄く違和感があるが。だが鏡に映っている天はかなりの男前だ。
暫くぼけっと顔を見ていると天が俺の頬を撫でてくる。切れ長の目が開いて鏡越しに目が合う。
「おはよう。よく寝られた?」
「凄く快適にぐっすり」
「ふふ、良かった」
前髪を長い指で触れてくる。
「ねぇ、なんで青と白なの?」
いつもより柔らかな声が耳元を擽る。
――――寝起きの天って……別の意味でヤバいかも
「地毛が白なんだ」
「いつから? 噛まれたあと?」
「だから、なんで、知っている?」
「だって匂いがするから」
――――えー、本当にその嗅覚どうなっているの? あなた、本当に人間?
俺の中のバンパイア細胞、今は皆無で研究所以外誰も知らないのに。
――――まぁ、どうせ分かっているみたいだし
「あぁ、噛まれてから白髪になった。……五年前噛まれて時にバンパイア化しかかった。それを食い止めるためにサイボーグ化の実験に参加した」
「噂で感染者と機械のクロス実験をしていたって聞いていたけど、本当だったんだねぇ。感染した臓器を全部取らないといけないんでしょう? どこ変えているの?」
眉間をトントンと軽く指で叩く。
「脳幹、心臓、両目、肺、右手、右足」
脳幹と心臓をまとめて一つの連続した機械化、別称サイボーグ化、は毎年十人ぐらいしか成功しない。この二つが一番の基本であり、この二つ以外の臓器や四肢なども機械や義肢へと取り替えているのが主だ。
サイボーグ化は技術的に問題があって難しい、というよりも脳のショック死が原因で生存率は低い。生身に機械情報が入り過ぎると、人間の脳は本当に内側から焼き腫れてしまう物だ。そして生身だった自分の体が機械に変わり、脳が自分の存在を拒否してしまって自殺する者も多い。
「脳幹、心臓、肺って事はもしかしてかなり長く呼吸しなくとも大丈夫って事? 鼓動は普通に脳と連携させて心の昂りに合わせて早くなったり遅くなったりしているのかな……。脳幹と目の組み合わせも良い機能が付けられそうだね。肺も気になる。……今度色々見せてみてよ」
「いいよ」
やたらと興味を持つな。殺人狂だとやっぱ人体の構造が気になるのか。でもお願いだからその時は殺さないで欲しい。
「見た目だと全然分からないね」
彼の手が体の色んなパーツに触れてくる。
「一番最近の変更は?」
「二年前の左目。右目はサイボーグ化した時に駄目になった」
上から至近距離で覗き込んでくる。そっと目に指を近付けてきたので、彼の指を取って目に触れさせる。痛くはないが触れているのは分かる。触られると目が自動的に触っている天を分析する。指の化学構造の情報が浮かび上がって、やはり彼は人間だと再確認する。
「凄い。ヒンヤリしていてちょっと濡れていて、プニプニしている。硬めの本物の眼球と凄くよく似ている」
――――なんで本物の眼球の感触を知っているのかは聞かない方がいいよな……
「面白いな。皮膚は?」
触れるか触れないかの強さで体を撫でてくる。ちょっと擽ったくって、少し性的に感じる。
「全部俺の。血液も念の為、今でも数ヶ月に一度血液洗浄みたいなのに行っている」
「術後生き残れた人はいないって聞いていたけど、他にもいた?」
俺は黙って頷く。
「脳幹と心臓が真っ先に感染するからな。普通は噛まれたらその場で取り出さないとすぐに全身にウィルスが回ってバンパイア化しちゃう。取り出したら取り出したですぐに死んでしまうしな」
「あは。やっぱりお兄さんは面白いね。でもこれじゃあ、それなりの資金が必要だよね。メンテ、再発した時の追加料金、あとはアップグレードとかかな?」
俺はまた黙って頷く。この人の頭の回転には脱帽する。
「今日はこの話題で攻撃してこないんだね」
「まだ寝惚けているから頭回ってない。……それに、ちょっと寝起きの天に見惚れている」
「ふふふ。お兄さんは寝起きは可愛いんだね」
――――『可愛い』ねぇ。今までそんなふうに言われた事ないや
天はどちらかと言うと男前で朝の方がよく喋る。でも嫌いじゃない。……俺に殺意を向けなければだけど。朝の方が狂人じみたヤバさが大人しくってこちらもリラックス出来る。
「ねぇ、今夜仕事あるけど付いて来る?」
「え。行く! 凄く行きたい!」
「僕、ハイになるからね」
「……」
――――あー、あの状態かぁ。あの状態ねぇ。……今から、凄く、怖い
ギシッと音がして、天が目を閉じて悶々と怖気付いている俺の上に四つん這いで乗っかる。下半身も裸だ。陰部同士が当たってちょっと反応してしまう。彼が笑う。
「こっちは生身のまま残って良かったじゃん」
ムニッて感触がエロくて気持ちが良い。俺は腰を掴もうと手を伸ばして、空気を掴んだ。天がベッドから降り、その引き締まった尻をズボンに押し込んでしまう。パンツは履かないらしい。
「朝食作ってくる」
バタンと閉じたドアに顔を両手で隠す。
――――今⁉︎ 今、この状態で放置する⁉︎ お願い……生殺しは止めてくれよ
行き場を失った肉棒が悲し気にびくんと跳ねる。
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