(R18完結)星屑の申し子

如月紫苑

文字の大きさ
24 / 60
第二章 肉体の誘惑

24 恐怖で暴れる鼓動

しおりを挟む
    ◇
 朝起きると竜人のベッドは空だ。いなくなったかと思い少し上半身を起こすと私のベッド横の床に寝っ転がって丸まっている。長年の奴隷生活でベッドは苦手らしい。
 前髪が上がっていて顔が良く見える。
 竜人の年齢の取り方はわからないが、若い顔だ。昨日は見えなかった耳先が僅かに尖がっているのを発見する。時折それがぴくぴくと動く。

――――触りたい! 尻尾も触ってみたい! 仲良くなったら触らせて貰えるのかな?

 耳から彼の顔に視線を移すと目が開いていて私を観察している。
「おはよう」
「……おはよう」
「おはよ」
 まだ寝ていたと思っていたカレルまで起きている。私が起きると彼の腕が私のお腹から離れる。
「もう行こうか。出発は早い方がいい」
 荷物をまとめ、宿を出る。カレルの考えで私の荷物はフユウが持っている。町から離れるまでは奴隷の振りをしている方が安全だ。
 空はまだほんのり明るくなり始めたばかりだ。それでもかなりの人数が町中にごった返している。
 町を出て私はフユウから荷物を返して貰い、カレルと衝突地までの数時間の道程を歩く。
 気付いたらフユウはいなくなっていた。左右、背後を見てみるがどこにも見当たらない。

――――少しでも嫌な思い出がなくなるといいな

 フユウの事を考えていたはずなのに、頭には健司と由香が過る。
 町の外は廃れた建物や枯れた木々が真っ黒になって佇んでいる。その建物の間を通りながら三十分ほど歩いていると廃墟に少しずつ太陽が当たり始める。
 砂が風で舞い上がって廃墟の隙間から向こうへと侵入する。
 先程からカレルが無口になっている。

パキッ
  
 落ちた瓦礫の上を踏むと小さく割れる音がする。だがそれは私の足元からだけではない。少し前から私達の左右からも同じような小さな音が複数聞こえてきている。
「くそ、そろそろか。お嬢ちゃん、騒いだり動いたりするんじゃねぇぞ」
 私は速まる鼓動に余計緊張しながら何度も頷く。
 広く空いたスペースに出るとカレルは無言で剣を抜く。

ヒュンッ キィィィィイイン!

 カレルの後ろから矢が飛んでくる。彼は身をひるがえし、それをブレードで叩き落とす。
 砂漠の砂と同じような色合いの布に身を包んだ男が廃墟の横から飛び出すと手を光らせ、大量の水を放出する。
 噴水のように吹き出した物を避けてカレルは跳び上がる。砂に落ちた水はすぐには染み込まずに砂を濃く色付かせてからゆっくりと飲み込まれていく。

キィィイイイン
 
 カレルは剣を構え直して現れた別の山賊に斬りかかる。
 だが更に三人現れる。
 その人数にカレルは火を放つが一人は向きを変え、私の横を掠めるように走る。
「動くな! 女の首が胴体から離れるぞ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

贖罪の花嫁はいつわりの婚姻に溺れる

マチバリ
恋愛
 貴族令嬢エステルは姉の婚約者を誘惑したという冤罪で修道院に行くことになっていたが、突然ある男の花嫁になり子供を産めと命令されてしまう。夫となる男は稀有な魔力と尊い血統を持ちながらも辺境の屋敷で孤独に暮らす魔法使いアンデリック。  数奇な運命で結婚する事になった二人が呪いをとくように幸せになる物語。 書籍化作業にあたり本編を非公開にしました。

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

巨×巨LOVE STORY

狭山雪菜
恋愛
白川藍子は、他の女の子よりも大きな胸をしていた。ある時、好きだと思っていた男友達から、実は小さい胸が好きと言われ…… こちらの作品は、「小説家になろう」でも掲載しております。

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
 ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。  それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。  14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。 皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。 この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。 ※Hシーンは終盤しかありません。 ※この話は4部作で予定しています。 【私が欲しいのはこの皇子】 【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】 【放浪の花嫁】 本編は99話迄です。 番外編1話アリ。 ※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。

冷酷な王の過剰な純愛

魚谷
恋愛
ハイメイン王国の若き王、ジクムントを想いつつも、 離れた場所で生活をしている貴族の令嬢・マリア。 マリアはかつてジクムントの王子時代に仕えていたのだった。 そこへ王都から使者がやってくる。 使者はマリアに、再びジクムントの傍に仕えて欲しいと告げる。 王であるジクムントの心を癒やすことができるのはマリアしかいないのだと。 マリアは周囲からの薦めもあって、王都へ旅立つ。 ・エブリスタでも掲載中です ・18禁シーンについては「※」をつけます ・作家になろう、エブリスタで連載しております

妻が通う邸の中に

月山 歩
恋愛
最近妻の様子がおかしい。昼間一人で出掛けているようだ。二人に子供はできなかったけれども、妻と愛し合っていると思っている。僕は妻を誰にも奪われたくない。だから僕は、妻の向かう先を調べることににした。

処理中です...