(R18完結)星屑の申し子

如月紫苑

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第二章 肉体の誘惑

27 星屑との契約

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「……どこを調査するんだ?」
「よく分からない。ここにいて」
 漆黒のクレーターの底で鈍い光が脈動している。周囲にも虹色の破片が幾つも光を放っている。
「おい、あんまり近付くなよ」
 傭兵の制止を聞かずに私は黒い穴の縁に手を掛け、身を乗り出してクレーターの奥を覗き込む。
 底に埋まっているのは、黒い虹を放つ掌サイズの星屑の欠片だ。表面に浮かぶ模様は流れる液体のように蠢き、まるで私を呼んでいるかのように光を放つ。

どくん

 それは私の心臓が打った鼓動の音ではない。体内を直接叩かれたような衝撃。
 息が詰まり、体が震える。
「……っ……あ……」
 声が漏れるのと同時に見えない気配が、私に触れる。皮膚の上を、血の中を、臓器の裏側を這いずるように。
 星屑から立ち昇る気配が私の内奥をかき混ぜ、恐怖と同時に甘美な痺れを植え付けていく。

――――呼んでいる。私を、呼んでいる

 私には分かる。
 私をこの世界に呼んだのは、この星屑だ。
 手を伸ばし、それをゆっくりと持ち上げる。その小さな星屑は非常に重く、両手でクレーターから引っ張り出す。勢いあまって後ろに尻餅を着く。
 私は座った体勢で、両手の中の黒い星屑から濃い影が揺らぎ、立ち上がるのを見る。
 それは煙でも砂埃でもない、何か異質の、もの。
 それが揺らぐと一気に私の方へと流れてくる。体内に突き刺さ差るような感覚が走り、体が痙攣をする。
「ひっ……あ……っ……あ!」
 思わず悲鳴が漏れる。すぐにカレルが走って来て私の肩を掴んで揺さぶる。
「おい、どうした⁉︎ どこだ⁉︎」
 この異様な影は傭兵も竜人にも見えないらしい。ただ荒野を吹き抜ける風の音に混じって、重苦しい気配を感知できるのみだ。 
 カレルの質問に答えられない。
 喉が塞がれ、腰から下が熱と痺れに呑まれていく。

――――何か……入ってきている⁉︎

 その時、頭の中に声が響く。堅く、重く、金属を擦り潰すような硬質で耳障りな響き。
『力が欲しいか。欲しければ我を受け入れよ』
「……ちか……ら……?」
 掠れ声で繰り返すと、見えない何かが更に深く突き入ってくる。子宮を狙い定めるように、強張った体内をえぐりながら。
『力を授けん。その代わりにお前の体も、心も、我と一つに』
 腰が震え、呼吸が荒くなっていく。頭の奥に、甘美で残酷な声が繰り返される。
『契約を。契約を。契約ヲ。ケイヤクヲ』
「や……やめて……っ!」
「お嬢ちゃん! ケイ! どうしたんだ⁉︎」
『受け入れろ。我を子宮に宿せ。宿せ。ヤドセ。ケイヤクヲ』
 脳が直接蕩けるような濡れた熱が頭を侵す。
 
――――契約……する、から、もう……止めて!

スゥゥゥゥウウゥゥゥ

 その何かが体内に入った感覚が弱まり、消える。私は動くようになった体を急いで起こし、心配そうに抱き抱えているカレルの肩に手を置く。
「大……丈夫。でも……ここから離れよう。ここ……嫌だ」
「あぁ。立てるか?」
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