32 / 60
第三章 肉体を蝕む力
32 傷付くのが怖いだけ
しおりを挟む
◇
行きの六日に対して、帰りは遠回りで七日半掛かった。それでも二人が山賊や人身売買に遭遇しないようにかなり気を付けてくれた。
あの日以降、カレルには触れていない。彼は何度か私と話そうとしたが、私が拒絶をした。
一瞬でも私に触れる事を躊躇した。
もし私が見えない何かに犯され何度も強制的に絶頂を繰り返す事よりも酷い目に遭い、その時に再び躊躇または拒絶されたら、立ち直れない。
信じていた人に裏切られるのは、一度で十分だ。
だから、痛みが酷くなる前に私は拒絶をする。
逆に、フユウはあの日以降私の側に貼り付いて離れない。
帰路でもう一度だけあの黒い精霊に犯された。フユウは私が見られたくない時は私から目を背け、終わった後に躊躇する事なく落ち着くまで抱き締めてくれる。敏感な体が反応をして跳ねてもあの尻尾と力強い腕で押さえてくれる。無駄な事は聞かれない。だが嫌な事をされた人の慰め方はしっかりと理解をした対応をしてくれる。
今の私に必要な優しさだ。
そして今さっきやっと王都へと戻って来た。相変わらずここの雪はまだ降っている。
「カレル。約束の十五ルビル。今までありがとう」
「おい、お嬢ちゃん……ケイ、いや、それは受け取れねぇよ。初日以降受け取るつもりもなかった。なぁ、頼む。このまま別れたくねぇんだ。頼むから話を聞いてくれ」
「何も話す事はないわ。あなたは別に悪い事をした訳でもない。とても優しかったわ」
「だったら! 頼むから……チャンスをくれ。もう一度だけでいいから、チャンスを……」
「……あなたはいい男だわ、カレル。とてもいい男」
「ケイ、そう思うんだったら――――」
「私、もう行かないと。バイバイ、カレル」
「ケイ!」
私はカレルに少し微笑んでから背を向ける。隣の男は無言で私について来る。
「……次は城に戻らなきゃいけないんだけど、フユウはどうしたい?」
「俺、城……無理。待つ」
「一度戻るとどれぐらいで城から出られるか分からないの」
「いい。外で待つ」
私は彼の腕に触れて顔を覗く。
「……いいの? あなたは自由よ。好きに生きていいのよ」
「生きている。好きに」
「ありがとう、フユウ」
彼は私を見ると小さく頷く。
フユウの表情はあまり変化しない。元々の竜人の特徴なのか、彼独特の特徴なのか、奴隷だった特徴なのかは分からない。だが今の所何かを嫌がったりする感じはない。私を護ってくれているのは自由にしたお礼なのか私が気に入ったのかも少し分かり辛い。
だけど、良く見られている。
あの暗闇の中で光る眼で。
じぃっと私を見ている。
雪道を歩きながら息を黒くって冷たい指先に吐き掛ける。
「フユウは寒いの大丈夫なの?」
「竜人、寒いと暑い、問題ない」
「そっかぁ。羨ましいな。私は寒いのは苦手だわ」
少し笑う。現代社会の快適さに慣れていたお陰で機械がないこの世界の気候は結構厳しい。
城が見えてくる。私の人生が変なふうになった場所。
「ケイ、城は嫌い?」
「嫌いよ。私も……いつか自由になりたいわ」
「俺と、行く?」
――――物凄く魅力的なお誘いだわ
私は少し微笑みながら無言で彼の肩に触れる。
――――彼と行けたら、どんな人生を送れるのだろう
「行ってくるね」
「……待つ」
少し歩いてから振り向くと彼はもう消えている。吹雪で彼の消えた方向まで消し去っていく。
行きの六日に対して、帰りは遠回りで七日半掛かった。それでも二人が山賊や人身売買に遭遇しないようにかなり気を付けてくれた。
あの日以降、カレルには触れていない。彼は何度か私と話そうとしたが、私が拒絶をした。
一瞬でも私に触れる事を躊躇した。
もし私が見えない何かに犯され何度も強制的に絶頂を繰り返す事よりも酷い目に遭い、その時に再び躊躇または拒絶されたら、立ち直れない。
信じていた人に裏切られるのは、一度で十分だ。
だから、痛みが酷くなる前に私は拒絶をする。
逆に、フユウはあの日以降私の側に貼り付いて離れない。
帰路でもう一度だけあの黒い精霊に犯された。フユウは私が見られたくない時は私から目を背け、終わった後に躊躇する事なく落ち着くまで抱き締めてくれる。敏感な体が反応をして跳ねてもあの尻尾と力強い腕で押さえてくれる。無駄な事は聞かれない。だが嫌な事をされた人の慰め方はしっかりと理解をした対応をしてくれる。
今の私に必要な優しさだ。
そして今さっきやっと王都へと戻って来た。相変わらずここの雪はまだ降っている。
「カレル。約束の十五ルビル。今までありがとう」
「おい、お嬢ちゃん……ケイ、いや、それは受け取れねぇよ。初日以降受け取るつもりもなかった。なぁ、頼む。このまま別れたくねぇんだ。頼むから話を聞いてくれ」
「何も話す事はないわ。あなたは別に悪い事をした訳でもない。とても優しかったわ」
「だったら! 頼むから……チャンスをくれ。もう一度だけでいいから、チャンスを……」
「……あなたはいい男だわ、カレル。とてもいい男」
「ケイ、そう思うんだったら――――」
「私、もう行かないと。バイバイ、カレル」
「ケイ!」
私はカレルに少し微笑んでから背を向ける。隣の男は無言で私について来る。
「……次は城に戻らなきゃいけないんだけど、フユウはどうしたい?」
「俺、城……無理。待つ」
「一度戻るとどれぐらいで城から出られるか分からないの」
「いい。外で待つ」
私は彼の腕に触れて顔を覗く。
「……いいの? あなたは自由よ。好きに生きていいのよ」
「生きている。好きに」
「ありがとう、フユウ」
彼は私を見ると小さく頷く。
フユウの表情はあまり変化しない。元々の竜人の特徴なのか、彼独特の特徴なのか、奴隷だった特徴なのかは分からない。だが今の所何かを嫌がったりする感じはない。私を護ってくれているのは自由にしたお礼なのか私が気に入ったのかも少し分かり辛い。
だけど、良く見られている。
あの暗闇の中で光る眼で。
じぃっと私を見ている。
雪道を歩きながら息を黒くって冷たい指先に吐き掛ける。
「フユウは寒いの大丈夫なの?」
「竜人、寒いと暑い、問題ない」
「そっかぁ。羨ましいな。私は寒いのは苦手だわ」
少し笑う。現代社会の快適さに慣れていたお陰で機械がないこの世界の気候は結構厳しい。
城が見えてくる。私の人生が変なふうになった場所。
「ケイ、城は嫌い?」
「嫌いよ。私も……いつか自由になりたいわ」
「俺と、行く?」
――――物凄く魅力的なお誘いだわ
私は少し微笑みながら無言で彼の肩に触れる。
――――彼と行けたら、どんな人生を送れるのだろう
「行ってくるね」
「……待つ」
少し歩いてから振り向くと彼はもう消えている。吹雪で彼の消えた方向まで消し去っていく。
37
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
贖罪の花嫁はいつわりの婚姻に溺れる
マチバリ
恋愛
貴族令嬢エステルは姉の婚約者を誘惑したという冤罪で修道院に行くことになっていたが、突然ある男の花嫁になり子供を産めと命令されてしまう。夫となる男は稀有な魔力と尊い血統を持ちながらも辺境の屋敷で孤独に暮らす魔法使いアンデリック。
数奇な運命で結婚する事になった二人が呪いをとくように幸せになる物語。
書籍化作業にあたり本編を非公開にしました。
巨×巨LOVE STORY
狭山雪菜
恋愛
白川藍子は、他の女の子よりも大きな胸をしていた。ある時、好きだと思っていた男友達から、実は小さい胸が好きと言われ……
こちらの作品は、「小説家になろう」でも掲載しております。
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。
それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。
14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。
皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。
この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。
※Hシーンは終盤しかありません。
※この話は4部作で予定しています。
【私が欲しいのはこの皇子】
【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】
【放浪の花嫁】
本編は99話迄です。
番外編1話アリ。
※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。
冷酷な王の過剰な純愛
魚谷
恋愛
ハイメイン王国の若き王、ジクムントを想いつつも、
離れた場所で生活をしている貴族の令嬢・マリア。
マリアはかつてジクムントの王子時代に仕えていたのだった。
そこへ王都から使者がやってくる。
使者はマリアに、再びジクムントの傍に仕えて欲しいと告げる。
王であるジクムントの心を癒やすことができるのはマリアしかいないのだと。
マリアは周囲からの薦めもあって、王都へ旅立つ。
・エブリスタでも掲載中です
・18禁シーンについては「※」をつけます
・作家になろう、エブリスタで連載しております
妻が通う邸の中に
月山 歩
恋愛
最近妻の様子がおかしい。昼間一人で出掛けているようだ。二人に子供はできなかったけれども、妻と愛し合っていると思っている。僕は妻を誰にも奪われたくない。だから僕は、妻の向かう先を調べることににした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる