(R18完結)星屑の申し子

如月紫苑

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第三章 肉体を蝕む力

32 傷付くのが怖いだけ

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    ◇
 行きの六日に対して、帰りは遠回りで七日半掛かった。それでも二人が山賊や人身売買に遭遇しないようにかなり気を付けてくれた。
 あの日以降、カレルには触れていない。彼は何度か私と話そうとしたが、私が拒絶をした。
 一瞬でも私に触れる事を躊躇した。
 もし私が見えない何かに犯され何度も強制的に絶頂を繰り返す事よりも酷い目に遭い、その時に再び躊躇または拒絶されたら、立ち直れない。
 信じていた人に裏切られるのは、一度で十分だ。
 だから、痛みが酷くなる前に私は拒絶をする。
 逆に、フユウはあの日以降私の側に貼り付いて離れない。
 帰路でもう一度だけあの黒い精霊に犯された。フユウは私が見られたくない時は私から目を背け、終わった後に躊躇する事なく落ち着くまで抱き締めてくれる。敏感な体が反応をして跳ねてもあの尻尾と力強い腕で押さえてくれる。無駄な事は聞かれない。だが嫌な事をされた人の慰め方はしっかりと理解をした対応をしてくれる。
 今の私に必要な優しさだ。
 そして今さっきやっと王都へと戻って来た。相変わらずここの雪はまだ降っている。
「カレル。約束の十五ルビル。今までありがとう」
「おい、お嬢ちゃん……ケイ、いや、それは受け取れねぇよ。初日以降受け取るつもりもなかった。なぁ、頼む。このまま別れたくねぇんだ。頼むから話を聞いてくれ」
「何も話す事はないわ。あなたは別に悪い事をした訳でもない。とても優しかったわ」
「だったら! 頼むから……チャンスをくれ。もう一度だけでいいから、チャンスを……」
「……あなたはいい男だわ、カレル。とてもいい男」
「ケイ、そう思うんだったら――――」
「私、もう行かないと。バイバイ、カレル」
「ケイ!」
 私はカレルに少し微笑んでから背を向ける。隣の男は無言で私について来る。
「……次は城に戻らなきゃいけないんだけど、フユウはどうしたい?」
「俺、城……無理。待つ」
「一度戻るとどれぐらいで城から出られるか分からないの」
「いい。外で待つ」
 私は彼の腕に触れて顔を覗く。
「……いいの? あなたは自由よ。好きに生きていいのよ」
「生きている。好きに」
「ありがとう、フユウ」
 彼は私を見ると小さく頷く。
 フユウの表情はあまり変化しない。元々の竜人の特徴なのか、彼独特の特徴なのか、奴隷だった特徴なのかは分からない。だが今の所何かを嫌がったりする感じはない。私を護ってくれているのは自由にしたお礼なのか私が気に入ったのかも少し分かり辛い。
 だけど、良く見られている。
 あの暗闇の中で光る眼で。
 じぃっと私を見ている。
 雪道を歩きながら息を黒くって冷たい指先に吐き掛ける。
「フユウは寒いの大丈夫なの?」
「竜人、寒いと暑い、問題ない」
「そっかぁ。羨ましいな。私は寒いのは苦手だわ」
 少し笑う。現代社会の快適さに慣れていたお陰で機械がないこの世界の気候は結構厳しい。
 城が見えてくる。私の人生が変なふうになった場所。
「ケイ、城は嫌い?」
「嫌いよ。私も……いつか自由になりたいわ」
「俺と、行く?」
 
――――物凄く魅力的なお誘いだわ

 私は少し微笑みながら無言で彼の肩に触れる。

――――彼と行けたら、どんな人生を送れるのだろう

「行ってくるね」
「……待つ」
 少し歩いてから振り向くと彼はもう消えている。吹雪で彼の消えた方向まで消し去っていく。
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