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第三章 肉体を蝕む力
37 秘めている熱に焦がされそうで
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王都に着いてすぐに宿を取る。
王のせいでまだ体内にくすぶる熱がなかなか冷めない。
その日はシャワーで体に残っていた王の流し、すぐにベッドに滑り込んで目を閉じる。
心地よい闇の中で微睡んでいる。
ふと気配を感じる。
ゆっくり目を開けると窓の向こうは夜明け前の僅かに炭から青みのある空へと変化し始めている時間だ。
そして薄暗い部屋の中。ベッドの端に腰掛けて竜人はじっと私を見ている。
いつものように静かな視線なのに、いつもとは何かが違う。胸と肩の上下が見て分かるぐらい、呼吸が深く、速い。フユウの指先が膝の上できつく拳を握っている。
「……どうしたの?」
「眠れない」
いつもは透明で澄んだ声色が酷く掠れている。喉の奥で何度も押し殺したような低い唸り声がする。
「疲れていないの?」
「……ケイの香り、強い」
どきっとする。
毎晩王にイカされ続けた体は、まだ熱を持て余している。どんなに洗っても体内の奥はまた濡れ、脈打つように震えている。
「……嫌?」
フヨウはすぐに首を振る。
「違う。……欲しくなる。ケイが」
一瞬、緊張が空気を引き裂き、空気が張り詰める。
だが彼は何かをする訳でもなく、私に手を出さず近付く事もしない。ただ両手を膝の上に置いて強く握りしめている。掌に爪が食い込み、関節が白くなるほど強く。
「……抑えている?」
「……ああ」
「どうして?」
「……触れたら、壊す」
それは警告でもあり、願望でもある。低く絞り出すような声が彼の欲望の深さをくっきりと物語っている。
私が身を起こしかけると竜人は息を止めて身を強張らせる。
眩しく光る目が揺れる。
触れたい。
触れてはならない。
その狭間で彼の獣じみた欲望が少しずつ溢れ出てくる。
――――もっと、欲しがって。もっと、私を見て
私はシーツの上に身を横たえ、彼の視線を全身に感じながら目を閉じる。
竜人の荒い呼吸だけが、夜明けまで続いていた。
それを聞きながらいつの間にか寝ていた。
朝日が射し込み、私は再び目を開ける。
ぞくん
宿の窓から差し込む光に目を細めた瞬間、強い視線を感じる。フユウは朝日の当たらない壁に寄り掛かって私を見下ろしている。
昨夜よりもずっときつそうだ。瞳孔が開いてまるで私が獲物かのように小さな動きまで追っている。
「おはよう」
声を掛けても喉の奥で低い獣のような唸り声が返ってくる。両手は相変わらず固く拳を握り、歯をギリギリと噛み締める音が僅かに聞こえる。
「フユウ?」
「今……近付くな」
ねっとりと吐き出された言葉に彼の欲望がありありと現れている。
私がベッドから立ち上がると彼は私へと一歩踏み出し、すぐに背を向ける。
ゴッ
重たい音がして彼は壁に拳を叩き付けていた。堅い石の壁に亀裂が走り、僅かに指の隙間に血が滲む。
「……悪い。少し、待て」
声が震えている。彼の背中や腕の筋肉が激しく痙攣をしている。
そこからはほとんど言葉を交わさずに、宿を出る。
必要最低限の言葉しか口にせず、私の影を踏むように着いてくる。
だが時折聞こえる低い唸り声に、彼の押さえ込まれた熱は行き場がなく表面のすぐ下でうごめいているのが分かる。
王のせいでまだ体内にくすぶる熱がなかなか冷めない。
その日はシャワーで体に残っていた王の流し、すぐにベッドに滑り込んで目を閉じる。
心地よい闇の中で微睡んでいる。
ふと気配を感じる。
ゆっくり目を開けると窓の向こうは夜明け前の僅かに炭から青みのある空へと変化し始めている時間だ。
そして薄暗い部屋の中。ベッドの端に腰掛けて竜人はじっと私を見ている。
いつものように静かな視線なのに、いつもとは何かが違う。胸と肩の上下が見て分かるぐらい、呼吸が深く、速い。フユウの指先が膝の上できつく拳を握っている。
「……どうしたの?」
「眠れない」
いつもは透明で澄んだ声色が酷く掠れている。喉の奥で何度も押し殺したような低い唸り声がする。
「疲れていないの?」
「……ケイの香り、強い」
どきっとする。
毎晩王にイカされ続けた体は、まだ熱を持て余している。どんなに洗っても体内の奥はまた濡れ、脈打つように震えている。
「……嫌?」
フヨウはすぐに首を振る。
「違う。……欲しくなる。ケイが」
一瞬、緊張が空気を引き裂き、空気が張り詰める。
だが彼は何かをする訳でもなく、私に手を出さず近付く事もしない。ただ両手を膝の上に置いて強く握りしめている。掌に爪が食い込み、関節が白くなるほど強く。
「……抑えている?」
「……ああ」
「どうして?」
「……触れたら、壊す」
それは警告でもあり、願望でもある。低く絞り出すような声が彼の欲望の深さをくっきりと物語っている。
私が身を起こしかけると竜人は息を止めて身を強張らせる。
眩しく光る目が揺れる。
触れたい。
触れてはならない。
その狭間で彼の獣じみた欲望が少しずつ溢れ出てくる。
――――もっと、欲しがって。もっと、私を見て
私はシーツの上に身を横たえ、彼の視線を全身に感じながら目を閉じる。
竜人の荒い呼吸だけが、夜明けまで続いていた。
それを聞きながらいつの間にか寝ていた。
朝日が射し込み、私は再び目を開ける。
ぞくん
宿の窓から差し込む光に目を細めた瞬間、強い視線を感じる。フユウは朝日の当たらない壁に寄り掛かって私を見下ろしている。
昨夜よりもずっときつそうだ。瞳孔が開いてまるで私が獲物かのように小さな動きまで追っている。
「おはよう」
声を掛けても喉の奥で低い獣のような唸り声が返ってくる。両手は相変わらず固く拳を握り、歯をギリギリと噛み締める音が僅かに聞こえる。
「フユウ?」
「今……近付くな」
ねっとりと吐き出された言葉に彼の欲望がありありと現れている。
私がベッドから立ち上がると彼は私へと一歩踏み出し、すぐに背を向ける。
ゴッ
重たい音がして彼は壁に拳を叩き付けていた。堅い石の壁に亀裂が走り、僅かに指の隙間に血が滲む。
「……悪い。少し、待て」
声が震えている。彼の背中や腕の筋肉が激しく痙攣をしている。
そこからはほとんど言葉を交わさずに、宿を出る。
必要最低限の言葉しか口にせず、私の影を踏むように着いてくる。
だが時折聞こえる低い唸り声に、彼の押さえ込まれた熱は行き場がなく表面のすぐ下でうごめいているのが分かる。
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