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第三章 魔王の覚醒
18 ドラゴン
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ドラゴンの住んでいる鉱山に着いた。
禍々しい雰囲気で空気が澱み、鉱山から滲み出すドラゴンの魔力のせいで厚く真っ黒な雲が頭上で渦巻いている。皮膚が空気に混ざっている魔力に反応してビリビリと電流が流れるような感じがする。
「思っていたのより酷いな。エンはどうする? 街で待っている?」
「いや、俺も行くよ。君達の助けにはならないと思うけど……」
レイが嬉しそうに微笑む。カイは鼻先を軽く掻くと横を向く。
「私もあんたが近くにいる方が下手に心配しないし安心する。だけど多分鉱山の中はドラゴンの強さに惹かれて集まったモンスター達がウヨウヨ集まっていると思う。結構暴れる事になるから、絶対に離れるなよ」
「分かった」
そして鉱山に入って二日。
暗闇の鉱山の剥き出しの壁。それを舐めるように照らす松明。俺達の足音がこだまする。
大量のモンスターの死を目撃してきて苛々が積み重なってきている。流石にこれだけ窮屈な空間だし声がこだまするとセックスで発散する事も出来ない。
モンスターを殺されるのはとても嫌な気分だ。だが、何故か俺はその行為を邪魔してはならない気がする。
まだ邪魔してはならない。
何を待っているのは分からない。
でも、何かが近い。あのモンスターが言っていたようにもうすぐ俺は自分が何者なのか分かる気がする。目覚めた後はどうなるか分からない。でも早く目覚める事を心から熱望している。
ガシュッ ガシュッ
カインが走ってくるスケルトンの首の骨を切り崩す。反対方向からレイの刃が同じスケルトンの腹部を切り崩す。
――――英雄兄弟か
寸分の狂いなく、息がぴったり合っている。想像もつかぬ程練習や実践を重ねてきたに違いない。お互いの信頼や理解、受容がなければ出来ないだろう。
だからこそ、俺はきっと英雄候補の脅威となっている存在だ。
間違いなく二人の関係を乱す崩壊因子。
そして彼等はそれに気付かない程、鈍くはない。
気付いているのに、その事実から目を背けている。
俺と一緒にいる事を選んでいる。
俺は剣を振い飛躍する兄弟を後ろから無言で観察する。
弱いモンスター達を切られていく事に積み重なっていく不満と怒り。
――――絶対に、その英雄の座から二人を引き摺り下ろし、俺がいないと生きていけないようにしてやる
呼吸を整え、スケルトンの群れを倒し俺を振り返る兄弟に微笑む。
目が少しずつ変わってきた気がする。鉱山に入るよりも暗闇が明るい。暗さに目が馴染んできたというよりも温度がある物が光って見える。
皮膚の下の痛む疼きも酷くなってきた。カインとレイは何も言わないが発作が起きて固まる俺を物凄く気遣っている。常に皮膚がビリビリする。皮が捲れるようだ。昨日からは発作が起こる度に声が抑えられない程の痛みに変化した。
壁の一点が気になって凝視する。微かに見える高度なトラップに目を細める。
――――魔術トラップか
二人には見えていないらしい。トラップの気配を辿ると鉱山の奥深くへと繋がっている。
――――これは……もしかして俺への招待状か?
前にいる二人に視線を送る。無言で笑う。
――――また追って来て貰おうか
壁のトラップに寄りかかるとトラップが発動する。
風を切るような音と共に魔術が発光する。
「エン! トラップだ、離れて!」
レイが叫ぶのと俺の体が異空間へ投げだされるのが同時だ。
ボシュッ
意識をぐにゃりと曲げられる。すぐに転移して足がまた違う地面を踏む。体の揺れが収まると目を開ける。
巨大な屹立したドラゴンが俺の前にいる。
鼻から熱を帯びた呼吸が荒い。
鉱山のここだけが熱を持ったように全てが明るく輝いて見える。
俺は目を見開いてそのドラゴンの姿を見る。
「これは……君は思っていたのよりも見事な生物だ。凄く綺麗だ!」
赤い鱗に覆われた頭がゆっくりと俺に近付く。
「人間は何故こんな美しい者を怖がるんだ」
ドラゴンは目を細め頭を垂れる。
「王よ。待っておりました」
「俺はドラゴンの王なのか?」
ドラゴンはゆっくりと瞬きをしてその赤い鱗の尻尾を揺らしながら俺の周りを一周する。じっくりといろんな角度から観察される。
「まだ目覚めておらぬのか。だがとても近い。王の香りがする」
「以前、目覚めれば全て思い出すと言われた」
「左様。もういつ目覚めてもいい程懐かしい香りがする」
「目覚めたら俺は変わってしまうのか?」
「それは分からぬ」
「その記憶の戻った俺も俺か。心配するだけ無駄みたいだな」
「目覚めておらぬのに王はもう王だな」
ドラゴンがまた俺な周りをゆっくりと歩く。
「ねぇ……君は人間が憎いかい?」
ドラゴンは俺を見て頭を振る。
「憎くは、ない。餌が憎い生き物はあまりいないのではないか」
「それもそうだな」
「王は人間が憎いか?」
俺は暫く無言で考えると頷く。
「憎いし、嫌いだ。単体で気に入った人間はいるが、彼等は所詮、玩具だ。可愛い可愛い俺の玩具。彼等も人間だという認識はどうしても捨てられない」
「王は早く目覚めたいのか」
「速められるのか?」
「ショック療法を試してみるか?」
俺は頭を掲げると微笑む。
「何を提案している?」
「我の魔力を直接王の体内に注ぐ」
俺が喜ぶ前に次の瞬間の言葉が刺さる。
「そして我は死ぬ」
「魔力がなくなると死ぬのか?」
「いや、注ぎ切った後に王と一緒にいた人間に殺されよう」
「……何故?」
不機嫌な声を隠さないで顔を顰める。何故彼が態々殺されなければならないのか理解出来ない。
「言ったであろう。ショック療法だ」
「却下する。違う方法ならばいいけど、君が死ぬようなやり方は賛成しかねる」
「交わるのはいいのか」
「交わるのはこちらからお願いしたい程してみたい」
ドラゴンは喉を震わせて笑う。鉱山の壁が振動して小さな石が天井からパラパラと落ちてくる。
「ふっははは! 王は、やはり王だ」
「どういう意味だ?」
「目覚めれば分かる」
「皆そう言う」
禍々しい雰囲気で空気が澱み、鉱山から滲み出すドラゴンの魔力のせいで厚く真っ黒な雲が頭上で渦巻いている。皮膚が空気に混ざっている魔力に反応してビリビリと電流が流れるような感じがする。
「思っていたのより酷いな。エンはどうする? 街で待っている?」
「いや、俺も行くよ。君達の助けにはならないと思うけど……」
レイが嬉しそうに微笑む。カイは鼻先を軽く掻くと横を向く。
「私もあんたが近くにいる方が下手に心配しないし安心する。だけど多分鉱山の中はドラゴンの強さに惹かれて集まったモンスター達がウヨウヨ集まっていると思う。結構暴れる事になるから、絶対に離れるなよ」
「分かった」
そして鉱山に入って二日。
暗闇の鉱山の剥き出しの壁。それを舐めるように照らす松明。俺達の足音がこだまする。
大量のモンスターの死を目撃してきて苛々が積み重なってきている。流石にこれだけ窮屈な空間だし声がこだまするとセックスで発散する事も出来ない。
モンスターを殺されるのはとても嫌な気分だ。だが、何故か俺はその行為を邪魔してはならない気がする。
まだ邪魔してはならない。
何を待っているのは分からない。
でも、何かが近い。あのモンスターが言っていたようにもうすぐ俺は自分が何者なのか分かる気がする。目覚めた後はどうなるか分からない。でも早く目覚める事を心から熱望している。
ガシュッ ガシュッ
カインが走ってくるスケルトンの首の骨を切り崩す。反対方向からレイの刃が同じスケルトンの腹部を切り崩す。
――――英雄兄弟か
寸分の狂いなく、息がぴったり合っている。想像もつかぬ程練習や実践を重ねてきたに違いない。お互いの信頼や理解、受容がなければ出来ないだろう。
だからこそ、俺はきっと英雄候補の脅威となっている存在だ。
間違いなく二人の関係を乱す崩壊因子。
そして彼等はそれに気付かない程、鈍くはない。
気付いているのに、その事実から目を背けている。
俺と一緒にいる事を選んでいる。
俺は剣を振い飛躍する兄弟を後ろから無言で観察する。
弱いモンスター達を切られていく事に積み重なっていく不満と怒り。
――――絶対に、その英雄の座から二人を引き摺り下ろし、俺がいないと生きていけないようにしてやる
呼吸を整え、スケルトンの群れを倒し俺を振り返る兄弟に微笑む。
目が少しずつ変わってきた気がする。鉱山に入るよりも暗闇が明るい。暗さに目が馴染んできたというよりも温度がある物が光って見える。
皮膚の下の痛む疼きも酷くなってきた。カインとレイは何も言わないが発作が起きて固まる俺を物凄く気遣っている。常に皮膚がビリビリする。皮が捲れるようだ。昨日からは発作が起こる度に声が抑えられない程の痛みに変化した。
壁の一点が気になって凝視する。微かに見える高度なトラップに目を細める。
――――魔術トラップか
二人には見えていないらしい。トラップの気配を辿ると鉱山の奥深くへと繋がっている。
――――これは……もしかして俺への招待状か?
前にいる二人に視線を送る。無言で笑う。
――――また追って来て貰おうか
壁のトラップに寄りかかるとトラップが発動する。
風を切るような音と共に魔術が発光する。
「エン! トラップだ、離れて!」
レイが叫ぶのと俺の体が異空間へ投げだされるのが同時だ。
ボシュッ
意識をぐにゃりと曲げられる。すぐに転移して足がまた違う地面を踏む。体の揺れが収まると目を開ける。
巨大な屹立したドラゴンが俺の前にいる。
鼻から熱を帯びた呼吸が荒い。
鉱山のここだけが熱を持ったように全てが明るく輝いて見える。
俺は目を見開いてそのドラゴンの姿を見る。
「これは……君は思っていたのよりも見事な生物だ。凄く綺麗だ!」
赤い鱗に覆われた頭がゆっくりと俺に近付く。
「人間は何故こんな美しい者を怖がるんだ」
ドラゴンは目を細め頭を垂れる。
「王よ。待っておりました」
「俺はドラゴンの王なのか?」
ドラゴンはゆっくりと瞬きをしてその赤い鱗の尻尾を揺らしながら俺の周りを一周する。じっくりといろんな角度から観察される。
「まだ目覚めておらぬのか。だがとても近い。王の香りがする」
「以前、目覚めれば全て思い出すと言われた」
「左様。もういつ目覚めてもいい程懐かしい香りがする」
「目覚めたら俺は変わってしまうのか?」
「それは分からぬ」
「その記憶の戻った俺も俺か。心配するだけ無駄みたいだな」
「目覚めておらぬのに王はもう王だな」
ドラゴンがまた俺な周りをゆっくりと歩く。
「ねぇ……君は人間が憎いかい?」
ドラゴンは俺を見て頭を振る。
「憎くは、ない。餌が憎い生き物はあまりいないのではないか」
「それもそうだな」
「王は人間が憎いか?」
俺は暫く無言で考えると頷く。
「憎いし、嫌いだ。単体で気に入った人間はいるが、彼等は所詮、玩具だ。可愛い可愛い俺の玩具。彼等も人間だという認識はどうしても捨てられない」
「王は早く目覚めたいのか」
「速められるのか?」
「ショック療法を試してみるか?」
俺は頭を掲げると微笑む。
「何を提案している?」
「我の魔力を直接王の体内に注ぐ」
俺が喜ぶ前に次の瞬間の言葉が刺さる。
「そして我は死ぬ」
「魔力がなくなると死ぬのか?」
「いや、注ぎ切った後に王と一緒にいた人間に殺されよう」
「……何故?」
不機嫌な声を隠さないで顔を顰める。何故彼が態々殺されなければならないのか理解出来ない。
「言ったであろう。ショック療法だ」
「却下する。違う方法ならばいいけど、君が死ぬようなやり方は賛成しかねる」
「交わるのはいいのか」
「交わるのはこちらからお願いしたい程してみたい」
ドラゴンは喉を震わせて笑う。鉱山の壁が振動して小さな石が天井からパラパラと落ちてくる。
「ふっははは! 王は、やはり王だ」
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「目覚めれば分かる」
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