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第二章 記憶の扉
11 初めての力の解放
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◇◇◇
依頼先に着いたのはもうすでに午後の日差しが傾き始めた頃だ。
この辺境の隣にある小さな集落、その中の昔からのお得意さんだ。乾燥気味の道は土埃の匂いと焼けた石の匂いがする。
「よくここの荷物の運搬を頼まれるんだ。二人とも初めてだからこういう護衛系の仕事もあるって覚えておいてくれ」
ゼノとグンギはお互いの顔を見合わせてから俺を見る。
「私も戦うのか?」
「あぁ。大丈夫だ。お前の限界を突破した力を出させてやる。自分の力量を試してみるといい」
「君の受ける依頼は戦う前提なのか?」
「依頼に寄るな。戦うものも多いが、……まぁ、他にもある。ここのは毎回襲われている」
俺が意味ありげにニヤつくとゼノは僅かに眉をひそめる。
大きな水牛モンスターが引く荷車は古く、軋んだ音を立てる。その中の荷物に分厚い布が掛けられている。
俺達はモンスターのゆっくりとした歩きに合わせて村道を出る。ゼノは俺の後ろをついて来ている。少し距離が縮まった感じに満足する。
乾いた歩道を歩くと砂埃が立って視界が悪くなる。ゼノは小さく咳をして顔をしかめる。
「こんな周りに何もない見渡しのいい道で襲われるのか?」
「まぁ、ちょっと待っていな。すぐにいつものが来るから。弱いから心配するな。自分の力を知るのも大事だ」
すぐにガタガタと荷車が振動し出す。
「ジーク様っ」
グンギが姿勢を低くして周りを見る。俺は二人の背中を軽く押して荷台から離れさせる。
「取り敢えず、好きなように動け。危なくなったら俺が助ける」
突然、俊敏な小型モンスターが駆け寄ってくる。グンギが長い腕を伸ばしてそれを掴んで地面に叩き付ける。そのモンスターの生死を確かめる前に次のが走ってくる。更にその次のが。
「ちょっと……ジークっ!」
俺は無言で焦るゼノに笑う。目を細め、ゼノと視線を合わせたままモンスターに頷く。
「行ってこい」
ゼノは再び周りのモンスターに目を向ける。
「……っ」
彼は走ってくるモンスターに向かって足を振り上げる。
――――最初の一撃は大事だな
彼に気付かれないぐらいほど少量の力を彼へと流す。彼の脚力が上がり、モンスターは見事に後方へと吹き飛ばされていく。
「はは! お見事」
「ジーク!」
拍手をする俺の方へと振り向いた彼の表情は肩の力が少し抜けて僅かに笑みも浮かんでいる。あのエメラルドの瞳が興奮して嬉しそうに輝く。
――――いい表情だ。自分も少しは戦えると分かると自信に繋がる
そこからはグンギとゼノはどんどん襲い掛かってくるモンスターを倒していった。その小型モンスターは速いが単調な動きで初めての腕試しにはちょうどいい。
グンギもそれに気付いたのだろう。徐々に複雑な動きを試して普段の自分の攻撃との差や速さを試している。
「二人共、次は傀儡としての力を感じてみるか?」
二人共荷車の横にいる俺へと振り向く。その表情に満足する。
俺は腕を広げると指を動かす。彼等と繋がっている目に見えない糸の魔力を操るように手を動かす。
ぎぃぃい! ぎぃぃいい! ぎぎっ!
グンギがモンスターを上から押さえ、ゼノがその下顎を蹴り上げる。その威力でモンスターの顔がばらばらに空中分解しながら飛び散る。
もう一匹走ってきたモンスターをグンギの手刀で頭を落とす。倍に近い筋力でモンスターの体が簡単に壊されていく。
最後に俺は荷車の上から飛び掛かってきたモンスターを回し蹴りで散らす。
「……手慣れている」
荒い息のゼノは僅かに視線の奥に潜む興奮を隠しきれていない。「自分も強い」「自分の力でも役に立つ」こう感じるだけで随分と肩の力が抜けるはずである。
俺は軽く笑う。
「いい練習だっただろ?」
彼は俺の顔をチラッと見ると小さく頷き、背中を向ける。だが感情は以前よりも少し流れ込むようになっている。彼が俺に心を開き始めている証拠だ。
俺は嬉しそうに興奮しているグンギの頭を撫でながらゼノの後ろ姿を目で追う。
「お前は俺が護る。だがお前自身でも護れる強さがある。だからもし何かあった時に、自分はどれぐらい出来るかを知っておく必要がある。俺の傀儡であるお前はそれなりの力を手にした。もうそこまで怖がらなくてもいい」
彼は無言だが意識は俺の方を向いている。
「それ以前に、お前一人を戦わせる事はない。恋人に手を出す奴は誰だろうが、俺が許さない」
彼の肩が少し跳ねる。だがいつもの挑発や見下しはなく、背後の俺の動きを感じ取ろうと神経を尖らせている。
――――そろそろ完全に俺を受け入れそうか。いいぞ。もっと、深く受け入れろ。お前は俺のものだ
依頼先に着いたのはもうすでに午後の日差しが傾き始めた頃だ。
この辺境の隣にある小さな集落、その中の昔からのお得意さんだ。乾燥気味の道は土埃の匂いと焼けた石の匂いがする。
「よくここの荷物の運搬を頼まれるんだ。二人とも初めてだからこういう護衛系の仕事もあるって覚えておいてくれ」
ゼノとグンギはお互いの顔を見合わせてから俺を見る。
「私も戦うのか?」
「あぁ。大丈夫だ。お前の限界を突破した力を出させてやる。自分の力量を試してみるといい」
「君の受ける依頼は戦う前提なのか?」
「依頼に寄るな。戦うものも多いが、……まぁ、他にもある。ここのは毎回襲われている」
俺が意味ありげにニヤつくとゼノは僅かに眉をひそめる。
大きな水牛モンスターが引く荷車は古く、軋んだ音を立てる。その中の荷物に分厚い布が掛けられている。
俺達はモンスターのゆっくりとした歩きに合わせて村道を出る。ゼノは俺の後ろをついて来ている。少し距離が縮まった感じに満足する。
乾いた歩道を歩くと砂埃が立って視界が悪くなる。ゼノは小さく咳をして顔をしかめる。
「こんな周りに何もない見渡しのいい道で襲われるのか?」
「まぁ、ちょっと待っていな。すぐにいつものが来るから。弱いから心配するな。自分の力を知るのも大事だ」
すぐにガタガタと荷車が振動し出す。
「ジーク様っ」
グンギが姿勢を低くして周りを見る。俺は二人の背中を軽く押して荷台から離れさせる。
「取り敢えず、好きなように動け。危なくなったら俺が助ける」
突然、俊敏な小型モンスターが駆け寄ってくる。グンギが長い腕を伸ばしてそれを掴んで地面に叩き付ける。そのモンスターの生死を確かめる前に次のが走ってくる。更にその次のが。
「ちょっと……ジークっ!」
俺は無言で焦るゼノに笑う。目を細め、ゼノと視線を合わせたままモンスターに頷く。
「行ってこい」
ゼノは再び周りのモンスターに目を向ける。
「……っ」
彼は走ってくるモンスターに向かって足を振り上げる。
――――最初の一撃は大事だな
彼に気付かれないぐらいほど少量の力を彼へと流す。彼の脚力が上がり、モンスターは見事に後方へと吹き飛ばされていく。
「はは! お見事」
「ジーク!」
拍手をする俺の方へと振り向いた彼の表情は肩の力が少し抜けて僅かに笑みも浮かんでいる。あのエメラルドの瞳が興奮して嬉しそうに輝く。
――――いい表情だ。自分も少しは戦えると分かると自信に繋がる
そこからはグンギとゼノはどんどん襲い掛かってくるモンスターを倒していった。その小型モンスターは速いが単調な動きで初めての腕試しにはちょうどいい。
グンギもそれに気付いたのだろう。徐々に複雑な動きを試して普段の自分の攻撃との差や速さを試している。
「二人共、次は傀儡としての力を感じてみるか?」
二人共荷車の横にいる俺へと振り向く。その表情に満足する。
俺は腕を広げると指を動かす。彼等と繋がっている目に見えない糸の魔力を操るように手を動かす。
ぎぃぃい! ぎぃぃいい! ぎぎっ!
グンギがモンスターを上から押さえ、ゼノがその下顎を蹴り上げる。その威力でモンスターの顔がばらばらに空中分解しながら飛び散る。
もう一匹走ってきたモンスターをグンギの手刀で頭を落とす。倍に近い筋力でモンスターの体が簡単に壊されていく。
最後に俺は荷車の上から飛び掛かってきたモンスターを回し蹴りで散らす。
「……手慣れている」
荒い息のゼノは僅かに視線の奥に潜む興奮を隠しきれていない。「自分も強い」「自分の力でも役に立つ」こう感じるだけで随分と肩の力が抜けるはずである。
俺は軽く笑う。
「いい練習だっただろ?」
彼は俺の顔をチラッと見ると小さく頷き、背中を向ける。だが感情は以前よりも少し流れ込むようになっている。彼が俺に心を開き始めている証拠だ。
俺は嬉しそうに興奮しているグンギの頭を撫でながらゼノの後ろ姿を目で追う。
「お前は俺が護る。だがお前自身でも護れる強さがある。だからもし何かあった時に、自分はどれぐらい出来るかを知っておく必要がある。俺の傀儡であるお前はそれなりの力を手にした。もうそこまで怖がらなくてもいい」
彼は無言だが意識は俺の方を向いている。
「それ以前に、お前一人を戦わせる事はない。恋人に手を出す奴は誰だろうが、俺が許さない」
彼の肩が少し跳ねる。だがいつもの挑発や見下しはなく、背後の俺の動きを感じ取ろうと神経を尖らせている。
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