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第三章 真実の刃
19 王子の存命が明らかになる時
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その時だ。
最後の一人が立ち止まり、ゼノを凝視する。
目が開かれ、男の唇が震える。押し殺すような、興奮するような声が漏れる。
「……まさか……殿下……!」
周囲の空気が固まる。その若い奴隷は膝から崩れ落ち、地面に這いつくばってゼノに近付く。
「ご無事で……っ! 信じていました! 殿下はそんなに簡単に死ぬような方ではないとっ!」
ゼノは全身が硬直したまま、その男を凝視する。言葉を出そうとしているかのようだが喉が痙攣して上手く声が出ないようだ。
――――マズい!
「……殿下?」
奴隷商は興味を滲ませた視線をゼノに向ける。まるで値踏みするようにねっとりとした視線を頭から爪先までゆっくりと何往復もさせる。
俺はさり気なくゼノの腕を掴み、自分の方へと引き寄せる。
「こいつはもう何年も俺の奴隷だ。こいつが殿下ならば俺は王だぜ」
「殿下! 私を覚えていませんか⁉︎ 私です! ここから出すように殿下からも言ってください! シアン殿下!」
最後の一言が決め手となった。
奴隷商は目を輝かせ、笑い出す。
「これは……最高だ! 高額で……いや、これで貴族派か新興派に貸しが作れるし、私にも権力が!」
「これは……面白い!」
「本物ならば情報だけも大金が……!」
「今日はとてもいい収穫ですね」
商人達の狂気の笑いを含んだ言葉に素早く護衛達の位置を確認する。
「こいつに触った瞬間、俺がてめぇ等を引き裂く」
商人達の笑みが消え、血走った目付きに変わる。
あの若い奴隷が狂ったような笑みを浮かべ、ゼノの足元へと這う。目が血走っている。泥と血で汚れた手をゼノの足へと伸ばす。まるで誰よりも先に第二皇子の足元に口付けをしようとするかのように。
俺はゼノを胸元へと抱き寄せ、その奴隷を足蹴にして遠ざける。
護衛は一斉に槍を構え、俺達を囲む。
檻の中にいる他の奴隷達は叫び出し、檻の鉄格子を掴んで揺さぶり始める。
護衛が一つ目の檻の入り口をしっかりと閉じなかったのだろう。扉が開き、八人の興奮した奴隷達と先に出ていた七人が一斉に逃げ出そうとする。
あの若い奴隷はよろめきながら立ち上がり、再びゼノの方へと向かって来る。
ゼノの記憶が少し戻ったのだろう。彼の顔は引き攣り、唇が震える。俺のシャツにきつくしがみ付く。
「生け捕りだ! 傀儡師は殺してもいいが、王子は生きたまま捕まえろ!」
その声に混じるものに吐き気がする。
値踏み。
どいつも俺のゼノを利用しようとする身勝手なエゴ。
ゼノの意思を無視した非道な卑しさ。
「近付くな」
短く、冷たい声で命令をする。ゼノを抱き締める腕に力が入る。
――――山まで逃げきれるか? それともグンギ達を呼び寄せた方が早いか?
男の指がゼノの足に触れる寸前に、俺はその若い奴隷を再び力強く蹴り飛ばす。男は狂ったように叫び、塀の方へと走り出す。
生きる為には逃げるしかない足掻く者の叫び声だ。
「一人も逃すな! 先に王子の噂が流れたらやばいぞ!」
奴隷達は必死に塀へと走る。体力ある者はすぐに塀の上を掴み、自分の体を引っ張る上げる。他の奴隷を踏んで塀を乗り越える者もいる。
俺はゼノの手を強く握ったまま走り出す。
護衛達は俺達を追うべきか奴隷達を追うべきか一瞬迷う。その一瞬の隙に俺はゼノを塀まで走らせる。
「信じろ! 思いっきり飛べ!」
俺達は力強く地面を蹴る。体が一気に宙へと舞い、塀を難なく飛び越える。
「……な、何……っ」
「傀儡の力だ! 俺から絶対に離れるなよ、ゼノ!」
――――まだ山まで少し距離がある! あいつ等と合流出来るまで時間を稼がないと!
ゼノの走るスピードに合わせて町を駆け抜ける。村人は騒めき、すれ違う人々の視線が追う。これだけの怒声と人数だ。もう今日以降はシアン王子が生きている事は隠せないだろう。
「待ちやがれ!」
足がやたらと速い護衛が一人いる。少しずつ距離が詰められる。
「そのまま走れ!」
俺は振り向きながらそのぶつかってきた護衛に足を蹴り込む。止まらずに直進してきた護衛が変な声を出し、痛みで体を折り込む。その後頭部を思いっきり蹴り落とす。
すぐに少し先のゼノを追いかける。
石畳で小石が跳ね上がる。背後で人々の怒声が轟く。武器のぶつかり合う冷たい金属音がする。
すぐにゼノに追い付く。
「グゥゥゥアアアアア!」
グンギの叫び声がする。俺は走りながら手を振り上げる。
すぐに俺の命を受けたグールの傀儡が猛スピードで走ってくのを感じる。まだ視界には入っていないが近い。
俺はゼノの腕を掴むと一気に抱え込んで自分の体で覆う。
「ジーク!」
ゼノの体は酷く震えている。全身で酸素を貪る。
俺が彼を庇っているすぐ上を、グンギが物凄いスピードで走り過ぎる。奇声を上げながら飛び越え、長い四肢で追手に飛び掛かる。
甲高い音がしてタッピーが空から急下降をして攻撃に荷担する。
ゼノの顔は真っ白になるぐらい青褪めている。まだ呼吸が整っていない。目を大きく見開いている。彼の恐怖が伝わってくる度にもっと護りたくなる。
最後の一人が立ち止まり、ゼノを凝視する。
目が開かれ、男の唇が震える。押し殺すような、興奮するような声が漏れる。
「……まさか……殿下……!」
周囲の空気が固まる。その若い奴隷は膝から崩れ落ち、地面に這いつくばってゼノに近付く。
「ご無事で……っ! 信じていました! 殿下はそんなに簡単に死ぬような方ではないとっ!」
ゼノは全身が硬直したまま、その男を凝視する。言葉を出そうとしているかのようだが喉が痙攣して上手く声が出ないようだ。
――――マズい!
「……殿下?」
奴隷商は興味を滲ませた視線をゼノに向ける。まるで値踏みするようにねっとりとした視線を頭から爪先までゆっくりと何往復もさせる。
俺はさり気なくゼノの腕を掴み、自分の方へと引き寄せる。
「こいつはもう何年も俺の奴隷だ。こいつが殿下ならば俺は王だぜ」
「殿下! 私を覚えていませんか⁉︎ 私です! ここから出すように殿下からも言ってください! シアン殿下!」
最後の一言が決め手となった。
奴隷商は目を輝かせ、笑い出す。
「これは……最高だ! 高額で……いや、これで貴族派か新興派に貸しが作れるし、私にも権力が!」
「これは……面白い!」
「本物ならば情報だけも大金が……!」
「今日はとてもいい収穫ですね」
商人達の狂気の笑いを含んだ言葉に素早く護衛達の位置を確認する。
「こいつに触った瞬間、俺がてめぇ等を引き裂く」
商人達の笑みが消え、血走った目付きに変わる。
あの若い奴隷が狂ったような笑みを浮かべ、ゼノの足元へと這う。目が血走っている。泥と血で汚れた手をゼノの足へと伸ばす。まるで誰よりも先に第二皇子の足元に口付けをしようとするかのように。
俺はゼノを胸元へと抱き寄せ、その奴隷を足蹴にして遠ざける。
護衛は一斉に槍を構え、俺達を囲む。
檻の中にいる他の奴隷達は叫び出し、檻の鉄格子を掴んで揺さぶり始める。
護衛が一つ目の檻の入り口をしっかりと閉じなかったのだろう。扉が開き、八人の興奮した奴隷達と先に出ていた七人が一斉に逃げ出そうとする。
あの若い奴隷はよろめきながら立ち上がり、再びゼノの方へと向かって来る。
ゼノの記憶が少し戻ったのだろう。彼の顔は引き攣り、唇が震える。俺のシャツにきつくしがみ付く。
「生け捕りだ! 傀儡師は殺してもいいが、王子は生きたまま捕まえろ!」
その声に混じるものに吐き気がする。
値踏み。
どいつも俺のゼノを利用しようとする身勝手なエゴ。
ゼノの意思を無視した非道な卑しさ。
「近付くな」
短く、冷たい声で命令をする。ゼノを抱き締める腕に力が入る。
――――山まで逃げきれるか? それともグンギ達を呼び寄せた方が早いか?
男の指がゼノの足に触れる寸前に、俺はその若い奴隷を再び力強く蹴り飛ばす。男は狂ったように叫び、塀の方へと走り出す。
生きる為には逃げるしかない足掻く者の叫び声だ。
「一人も逃すな! 先に王子の噂が流れたらやばいぞ!」
奴隷達は必死に塀へと走る。体力ある者はすぐに塀の上を掴み、自分の体を引っ張る上げる。他の奴隷を踏んで塀を乗り越える者もいる。
俺はゼノの手を強く握ったまま走り出す。
護衛達は俺達を追うべきか奴隷達を追うべきか一瞬迷う。その一瞬の隙に俺はゼノを塀まで走らせる。
「信じろ! 思いっきり飛べ!」
俺達は力強く地面を蹴る。体が一気に宙へと舞い、塀を難なく飛び越える。
「……な、何……っ」
「傀儡の力だ! 俺から絶対に離れるなよ、ゼノ!」
――――まだ山まで少し距離がある! あいつ等と合流出来るまで時間を稼がないと!
ゼノの走るスピードに合わせて町を駆け抜ける。村人は騒めき、すれ違う人々の視線が追う。これだけの怒声と人数だ。もう今日以降はシアン王子が生きている事は隠せないだろう。
「待ちやがれ!」
足がやたらと速い護衛が一人いる。少しずつ距離が詰められる。
「そのまま走れ!」
俺は振り向きながらそのぶつかってきた護衛に足を蹴り込む。止まらずに直進してきた護衛が変な声を出し、痛みで体を折り込む。その後頭部を思いっきり蹴り落とす。
すぐに少し先のゼノを追いかける。
石畳で小石が跳ね上がる。背後で人々の怒声が轟く。武器のぶつかり合う冷たい金属音がする。
すぐにゼノに追い付く。
「グゥゥゥアアアアア!」
グンギの叫び声がする。俺は走りながら手を振り上げる。
すぐに俺の命を受けたグールの傀儡が猛スピードで走ってくのを感じる。まだ視界には入っていないが近い。
俺はゼノの腕を掴むと一気に抱え込んで自分の体で覆う。
「ジーク!」
ゼノの体は酷く震えている。全身で酸素を貪る。
俺が彼を庇っているすぐ上を、グンギが物凄いスピードで走り過ぎる。奇声を上げながら飛び越え、長い四肢で追手に飛び掛かる。
甲高い音がしてタッピーが空から急下降をして攻撃に荷担する。
ゼノの顔は真っ白になるぐらい青褪めている。まだ呼吸が整っていない。目を大きく見開いている。彼の恐怖が伝わってくる度にもっと護りたくなる。
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