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第三章 真実の刃
20 自分の力
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俺は彼の腕を引っ張り、再び山の方へと走り出す。彼は荒い息で俺の腕に縋るようにしがみ付いている。
「な……なんでこんなタイミングで……」
「さぁな。なんで色んな事が起きるのか誰も分からねぇよ。だが絶対に俺が護る」
後ろを振り返るとグンギの振り回している手が血で塗らついている。
山の麓で道の色が変わる。俺は道から外れて彼を木々の中へと引っ張って行く。十分ぐらい進んだ所で足を止める。
「ここで追手をなくす」
近付く追手の叫び声が聞こえ始める。ゼノはまだ俺にしがみ付いている。目をきつく閉じる彼の顔を掴んで前に向けさせる。
「目を背けるな。王族でいるのならばこれがお前の宿命だ。怖いか? だがどんなに怖くっても、絶望そうな状況でも、俺がお前を護る。逃げてもいい。戦ってもいい。どちらでも俺はお前の側にいる。だから自分の決めた道を進め」
腕を広げる。地面が揺れる。ゼノは恐怖に息を乱すが、それでも俺が命令したように目を背けない。
ワームが一気に地面を割って跳ね上がる。追手たちの体が宙を舞う。
怒声や悲鳴が入り混じる。
俺自身も近付いた敵に攻撃を繰り出す。抱き締めた彼の胸の奥で鼓動が激しく暴れているのを感じる。彼の恐怖が自分の恐怖のように感じる。
そして彼の興奮も。
攻撃の隙間に彼を抱き、自分を盾にしながら護る。
圧倒的な俺の力の前で、彼は徐々に俺の存在に全信頼を寄せる。視線は恐怖ではなく、期待と安心に染まる。強張っていた体と口元が安堵で緩む。
敵も最後の一人になる。
「お前がやってみろ」
俺は低く囁くと彼の体から手を離す。
先日の事を思い出したのか、彼は俺の介入を必要としなかった。とても綺麗なフォームで自分の力の全力を出す。自分は護られるだけではなく、自分の力でも生きられる。それが彼の自信になり、揺るがない心の強さにもなる。
すぐにゼノは倒れた護衛の前に立ち、俺を振り向く。
「……私……?」
恐怖は完全に消え去り、自分への自信が芽生える。
俺は頷き、微笑む。
「お見事。お前は、お前自身で自分を護れたんだ。凄いぞ、ゼノ。お前は、強い」
彼は興奮して何度も頷く。
「君の言う通り……私は……自分でも、戦えた!」
「あぁ。お前は凄い」
俺が微笑むと彼は嬉しそうに、そして興奮したように笑う。恐怖でくすんでいた緑色が綺麗に輝く。
森の中には静寂が戻り、巨大ワーム達は護衛達の遺体を地中へと引きずり込む。近くに来たグンギはその内の一体を掴み、地中へと持って行かれる前に食事をしにそれを引きずって行く。
安全を知らせる鳥の鳴き声が聞こえる。
ゼノはまだ興奮が止まず、乱れた息で俺を振り返る。そして手を伸ばし、興奮したまま、俺の唇に自分のを重ねる。
「……っ」
自分の行動に驚愕したように彼が硬直する。俺はその隙を逃さず、彼の腰と後頭部を抱き寄せて激しくその柔らかな唇を貪る。絡めた舌からぞくぞくするほどの快感が背骨を走り抜ける。それは彼も同じらしく、直ぐに腰ががくがくと痙攣し始める。
「……ん、……っふ、ぁ……」
濡れた音が途切れる間は彼のくぐもった喘ぎ声がする。
――――気持ちがいい……ずっと彼に触れていたいな
俺は嬉しくって何度も舌で彼の口内を愛撫する。彼の体から力が抜け、両腕を俺の首へと回す。やっと唇を解放してあげる頃には彼の瞳は熱く濡れている。
「……ジーク……」
「しっかりと見ていたぞ。もうお前はブルブル震えるだけの受け身じゃなくってもいい」
俺は目を細めて彼の額に口付ける。
「だが震えたい時は俺だけの前でだったらいいぞ。ゼノは可愛い。特に今の素直なお前は最高に可愛い」
彼は俺から少し顔を隠すように俯く。だが今までとは違い、俺の体に自分の体を密着させている。俺の熱を感じ、安心している。
今はもう完全に俺を信じている。
完全に俺を受け入れた。
もう、俺達は、一つだ。
「愛している、ゼノ」
無意識の囁きにゼノは頬を赤らめ、嬉しそうに微笑む。
――――可愛い。どうしよう……物凄く、可愛い。人間の傀儡だからか? 物凄く愛おしい
俺は鼻を彼の髪に入れて深く彼の香りを吸い込む。彼は恥ずかしそうに身をよじるが何も言わずに目を閉じる。
「……ジーク、君の心が……なんとなく……何を考えているのか、はっきりと分かる……」
「ふっ、やっとちゃんと繋がったからな。俺は裏表ないだろ?」
彼は無言で頷く。その口元が僅かに微笑んでいるのが見える。
「今からまた移動するぞ。町からなるべく距離を取りたい。ゼノ、野営の場所が決まったら抱くからな」
「……グンギの……ご褒美は、いいのか? 頑張っていたよ」
――――もう『だめ』じゃないんだな
「グンギもいっぱい頑張ったな。凄く偉いと思うぞ」
「グンギのご褒美、朝でいい」
食事を終えたのか、グンギは俺達に近付く。ゼノが離れようとするが俺は手を離さない。
「……本当にいいのか?」
「うん、いい」
グンギは頷くと俺の足にすり寄る。俺はゼノを離してグンギの頭を撫でる。
「グンギ、これだけでもいっぱい幸せ」
「グンギは本当によく頑張ったな。助かったよ」
欲の少ない愛おしい傀儡を見下ろし、俺は優しい声で囁く。彼は真っ直ぐに俺を見上げて嬉しそうに喉を鳴らす。
「グンギ、家族、護った?」
俺は微笑みながらグンギの頭を優しく撫でる。
「あぁ、護った。とてもよく護った」
「うん、ありがとう」
俺だけでなく、ゼノからも感謝されてグンギは物凄く嬉しそうに笑う。彼の中ではゼノももうすでに家族だ。ゼノも何となくそれを感じているのだろう。
「よし、二人とも、今から移動するぞ。追手を撒く為にここで少し方角を変えよう。休憩なしでなるべく遠くまで移動する」
俺は愛おしい二人に微笑んで歩き出した。
「な……なんでこんなタイミングで……」
「さぁな。なんで色んな事が起きるのか誰も分からねぇよ。だが絶対に俺が護る」
後ろを振り返るとグンギの振り回している手が血で塗らついている。
山の麓で道の色が変わる。俺は道から外れて彼を木々の中へと引っ張って行く。十分ぐらい進んだ所で足を止める。
「ここで追手をなくす」
近付く追手の叫び声が聞こえ始める。ゼノはまだ俺にしがみ付いている。目をきつく閉じる彼の顔を掴んで前に向けさせる。
「目を背けるな。王族でいるのならばこれがお前の宿命だ。怖いか? だがどんなに怖くっても、絶望そうな状況でも、俺がお前を護る。逃げてもいい。戦ってもいい。どちらでも俺はお前の側にいる。だから自分の決めた道を進め」
腕を広げる。地面が揺れる。ゼノは恐怖に息を乱すが、それでも俺が命令したように目を背けない。
ワームが一気に地面を割って跳ね上がる。追手たちの体が宙を舞う。
怒声や悲鳴が入り混じる。
俺自身も近付いた敵に攻撃を繰り出す。抱き締めた彼の胸の奥で鼓動が激しく暴れているのを感じる。彼の恐怖が自分の恐怖のように感じる。
そして彼の興奮も。
攻撃の隙間に彼を抱き、自分を盾にしながら護る。
圧倒的な俺の力の前で、彼は徐々に俺の存在に全信頼を寄せる。視線は恐怖ではなく、期待と安心に染まる。強張っていた体と口元が安堵で緩む。
敵も最後の一人になる。
「お前がやってみろ」
俺は低く囁くと彼の体から手を離す。
先日の事を思い出したのか、彼は俺の介入を必要としなかった。とても綺麗なフォームで自分の力の全力を出す。自分は護られるだけではなく、自分の力でも生きられる。それが彼の自信になり、揺るがない心の強さにもなる。
すぐにゼノは倒れた護衛の前に立ち、俺を振り向く。
「……私……?」
恐怖は完全に消え去り、自分への自信が芽生える。
俺は頷き、微笑む。
「お見事。お前は、お前自身で自分を護れたんだ。凄いぞ、ゼノ。お前は、強い」
彼は興奮して何度も頷く。
「君の言う通り……私は……自分でも、戦えた!」
「あぁ。お前は凄い」
俺が微笑むと彼は嬉しそうに、そして興奮したように笑う。恐怖でくすんでいた緑色が綺麗に輝く。
森の中には静寂が戻り、巨大ワーム達は護衛達の遺体を地中へと引きずり込む。近くに来たグンギはその内の一体を掴み、地中へと持って行かれる前に食事をしにそれを引きずって行く。
安全を知らせる鳥の鳴き声が聞こえる。
ゼノはまだ興奮が止まず、乱れた息で俺を振り返る。そして手を伸ばし、興奮したまま、俺の唇に自分のを重ねる。
「……っ」
自分の行動に驚愕したように彼が硬直する。俺はその隙を逃さず、彼の腰と後頭部を抱き寄せて激しくその柔らかな唇を貪る。絡めた舌からぞくぞくするほどの快感が背骨を走り抜ける。それは彼も同じらしく、直ぐに腰ががくがくと痙攣し始める。
「……ん、……っふ、ぁ……」
濡れた音が途切れる間は彼のくぐもった喘ぎ声がする。
――――気持ちがいい……ずっと彼に触れていたいな
俺は嬉しくって何度も舌で彼の口内を愛撫する。彼の体から力が抜け、両腕を俺の首へと回す。やっと唇を解放してあげる頃には彼の瞳は熱く濡れている。
「……ジーク……」
「しっかりと見ていたぞ。もうお前はブルブル震えるだけの受け身じゃなくってもいい」
俺は目を細めて彼の額に口付ける。
「だが震えたい時は俺だけの前でだったらいいぞ。ゼノは可愛い。特に今の素直なお前は最高に可愛い」
彼は俺から少し顔を隠すように俯く。だが今までとは違い、俺の体に自分の体を密着させている。俺の熱を感じ、安心している。
今はもう完全に俺を信じている。
完全に俺を受け入れた。
もう、俺達は、一つだ。
「愛している、ゼノ」
無意識の囁きにゼノは頬を赤らめ、嬉しそうに微笑む。
――――可愛い。どうしよう……物凄く、可愛い。人間の傀儡だからか? 物凄く愛おしい
俺は鼻を彼の髪に入れて深く彼の香りを吸い込む。彼は恥ずかしそうに身をよじるが何も言わずに目を閉じる。
「……ジーク、君の心が……なんとなく……何を考えているのか、はっきりと分かる……」
「ふっ、やっとちゃんと繋がったからな。俺は裏表ないだろ?」
彼は無言で頷く。その口元が僅かに微笑んでいるのが見える。
「今からまた移動するぞ。町からなるべく距離を取りたい。ゼノ、野営の場所が決まったら抱くからな」
「……グンギの……ご褒美は、いいのか? 頑張っていたよ」
――――もう『だめ』じゃないんだな
「グンギもいっぱい頑張ったな。凄く偉いと思うぞ」
「グンギのご褒美、朝でいい」
食事を終えたのか、グンギは俺達に近付く。ゼノが離れようとするが俺は手を離さない。
「……本当にいいのか?」
「うん、いい」
グンギは頷くと俺の足にすり寄る。俺はゼノを離してグンギの頭を撫でる。
「グンギ、これだけでもいっぱい幸せ」
「グンギは本当によく頑張ったな。助かったよ」
欲の少ない愛おしい傀儡を見下ろし、俺は優しい声で囁く。彼は真っ直ぐに俺を見上げて嬉しそうに喉を鳴らす。
「グンギ、家族、護った?」
俺は微笑みながらグンギの頭を優しく撫でる。
「あぁ、護った。とてもよく護った」
「うん、ありがとう」
俺だけでなく、ゼノからも感謝されてグンギは物凄く嬉しそうに笑う。彼の中ではゼノももうすでに家族だ。ゼノも何となくそれを感じているのだろう。
「よし、二人とも、今から移動するぞ。追手を撒く為にここで少し方角を変えよう。休憩なしでなるべく遠くまで移動する」
俺は愛おしい二人に微笑んで歩き出した。
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