(R18完結)傀儡師(かいらいし)は闇の中で啼く肉壺を激しく愛す

如月紫苑

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第三章 真実の刃

24 婚約者の存在

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 暗闇。
 静かに海に浮いているような、心地良い暗闇。
 
――――……泣い……ている、泣いている

 激しい心の痛みに目が覚める。
 グンギは火の横で丸まって寝ている。俺の為に取って来てくれたのであろう木の実が大量に置かれている。
 ゼノは俺の横で揺れる炎を見ている。何故か俺に開いてくれた心が閉ざされ、彼が心の中で泣いている気がする。
「……今、何を考えている?」
 洞窟の静粛で二人の呼吸と焚火の音が大きく聞こえる。
 彼は体を少し強張らせ、肩を震わせる。
「起きたのか。体調はどう?」
「俺はまた長く寝ていたのか?」
「半日ぐらいかな。私をずっと庇っていたから……その疲れもあったのかもね」
 彼はずっと炎を見つめている。意図的に俺と目を合わせていない。
 俺はゆっくりと上半身を起こし、彼の横に座る。暫く寝ていたせいでまだ頭が少しふら付く。
「……何か嫌な事を思い出したのか?」
 彼の呼吸が少し荒れ、俺から更に顔を背ける。俺を拒絶する背中に触れると彼が少し跳ねる。優しく背中を何度もゆっくりとさすると震える両手で目を覆う。
「……私に……婚約者が……いる事を思い出した」
「……お前の望んでいた結婚か? それとも政略結婚なのか?」
「理由はどうであれ、婚約者がいるんだ……!」
 彼が両拳を強く目に当てて叫ぶ。俺は背中をさすっていた手で彼の手首を掴む。少しだけ彼を自分の方へと引き寄せる。
「もう一度聞く。お前自身が望んでいた結婚なのか?」
「……母上と王族派が望んだ結婚だ。私は、望んでいない」
「彼女が好きか?」
「……好きも何も、一度しか会っていない。……その時の印象は、あまり良くない」
 俺は彼の腕を力づくで退かしていく。目が涙で潤んでいるのを見た時、俺の中で何かが音を立てて崩れる。
 地面に押し倒し唇に噛み付く。絡まる舌の音に彼の体が快感で震える。
「ジーク……っ、やめ……離せっ! 私は……王のように、不貞はしたく――――」
「好きでもない女に操立てるのか?」

――――なんだ。無性に苛々する。無性にゼノを啼かせたい。何度も俺に突き上げられてイくのがまた見たい

 嫉妬で熱く熱持った股間を擦り付けると彼の体が痙攣し始める。彼は俺の体に抱かれて中で絶頂する快感も覚えた。もう、女を抱いて満足する体ではない事を誰よりも自分で自覚しているはずだ。
「好きでもなくっても……彼女の家の権力と財源がこの国には必要だからっ」
「お前を殺そうとしている国だろ!」
「それでも俺は王族なんだよ! 貴族は腐っていようが、腐っていない市民は多い! 私の義務なんだよ!」
 俺のゼノは苦いものを飲み込むような表情をして吐き捨てる。

――――……あぁ……自分じゃ気付いていないのか。もう……答えが出ているな

 俺は一瞬目をきつく閉じてから優しく口付ける。拒んでいたゼノも俺が無理強いをするつもりがないのを感じると自分から俺にしがみ付いてくる。

――――……愛おしい……。物凄く、愛おしい……俺のゼノ
 
「んっ……ジークっ! だめ……だって……んんっ! ……っ……ん」
「愛している」
 彼がビクッと跳ねる。
 硬くなった股間が当たる。潤んだ瞳が俺を映し出す。それが嬉しい。
 嬉しいが、こんな気持ちでゼノを抱きたくない。いつの間にか彼のシャツに忍ばせていた手を出し、彼をきつく抱き寄せる。
「……ジーク?」
「俺は権力にゃ興味ねぇ。興味があるのはお前自身の喜ぶ事ややりたい事だよ」
 彼の色っぽい溜息に頬を撫でる。
「形だけの婚約者なんか……忘れちまえ。ゼノを、愛している。……国じゃなく、俺にしとけよ」
 彼は体重を掛けている俺を抱き締めたまま、俺に震える手を回したままだ。その掌から彼の緊張と葛藤が伝わってくる。
「……ジークは……どうして傀儡を愛しているんだ?」
 俺は少し無言で昔を思い出すように深く深呼吸をする。
「……傀儡師は、どうやって生まれるか知っているか?」
「分からない。どうやって生まれる?」
 静かに彼の上から退いて一緒に焚火の前に座る。彼が俺の顔を静かに眺めている。

――――……こんな事、誰かに話すのは初めてだ

「強い子供の魔導師を鎖で繋ぎ、ずっと呪いを掛けるんだ。毎日毎日。そうやって恨みや操る力を染み込ませた呪いの集合体となった魔導師が傀儡師となる。他人の自由や死体を動かすんだ。呪いじゃなくってなんなんだ。傀儡師は人身売買では高額で取引される。……国も欲しがる」
 ゼノが僅かに息を飲むのが聞こえる。
「俺は幸いにも人身売買ではなく親が直接この国に売った傀儡師だ。自分の自由はもうとっくの昔に買い取った。だが結局俺の力は国やろくでもない者しか使わない類のものだ」
「……ジークは……自分の親を、恨んでいるのか?」
「どうだろうな。もうずっと幼い頃に自分の人生はそういうものだと受け入れた。今は一分でも彼等の事を考えるだけの時間を費やしたくない。……人間は、浅ましい」
 ゼノはその俺の考えに同調出来るのだろう。少し視線が揺れる。
「傀儡は……俺の傀儡は、俺だけのものだ。俺を見捨てないし、俺を裏切らない。それだけで、何よりも愛おしい。俺を見てくれる分、それを返す。だから心から愛する」
 ゼノは静かだ。
 俺は続けるべきかどうか少し迷うが、彼に嘘や隠し事はしたくない。彼の顎に指を引っ掛けて自分の方へと顔を向けさせる。
「だけど、ゼノは傀儡にする前から気になった。俺が一緒にいたいと思ったから、傀儡にした。……そういう理由で誰かを傀儡にしたのも初めてだし、そう思ったのは初めてだ」
 彼の呼吸が少し速くなる。強張った彼の唇を軽く掠めるようなキスをする。
「愛している。お前は、俺にとってずっとゼノだ。お前が俺を愛さなくっても、俺が愛する」
「……私も、ジークを、愛している」
 その小さな囁きに歓喜する。
 嬉しそうに微笑む俺に、彼も少し微笑んで寄り掛かる。
 
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