(R18完結)傀儡師(かいらいし)は闇の中で啼く肉壺を激しく愛す

如月紫苑

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第四章 傀儡師と緑瞳の王

25 派閥争い

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     ◇◇
 権力を欲する腐った者達が俺達を追う事に本腰を入れてきた。このまま山の中を歩きながら隠れて移動出来るかと思ったが、魔導師を使った山火事や地割れ、戦争並みの兵の投入が始まったのだ。
 先陣を切った黒幕は誰だったかにせよ、今は国全体でシアン王子ゼノの拘束、または殺害を狙っている。もう町への買い出しも無理である。俺はゼノを捕えようとしている者達からは誘拐犯として、ゼノを抹殺しようとする者達からは反逆者としてのレッテルを貼られて公表されたのだ。今までのお得意先の仕事もこれでほぼ消えたと思うしかない。
 正直もうこの国に見切りをつけて土地を離れたいが、問題はゼノである。彼の中で自ら気付いているのかいないのか、この運命への反抗心が育ちつつある。それが彼の望みならば俺は無理にでも彼を隣国へと連れて行く訳にはいかない。それがゼノや俺の死を招くとしても、男には逃げてはならない時がある。
 それが、俺が初めて傀儡師になる決意をした日から自ら背負う事にした
 何が何でも、傀儡の望みを叶える事。
 その為には、ゼノは自分の本当に望んでいる事を自覚しなければいけない。
 ゼノの心の準備が出来ていなくとも、もう周りが彼を拘束か抹殺をしようかと抗争している。
 昼間にも軍の小隊に発見されてしまい戦ってきたばかりだ。
 休憩時には目を閉じて疲労の激しい体を休ませる。毒にやられてから本調子にはまだ戻っていない。心配させない為に隠しているが、なんせ心が繋がっている傀儡だ。どの傀儡にも完全にばれている。
 ゼノと変装をして町の中に入る。危険もあるが、やはり情報がないと身動きが取れない。危険過ぎるのだ。情報がないとこれからの行動も行先も決められない。
「お前って女装似合うな。その格好で一発やらせてくれ」
 笑いを含んだ囁きにゼノが軽く睨む。
 俺の長身は隠しようがないが、ゼノの方は物凄く背の高い異国の女性の振りをして貰っている。長く誤魔化した髪をケープの隙間から垂らし、黒いレースの顔布でそのインパクトの強い宝石のような目を隠している。正直、筋肉フェチのせいであまり女性には興味はなかったが、彼のこの姿は結構そそる。
 酒場へと入る。酔った奴等が本音を話したり簡単に情報を交換するのはやはり酒の強い影響力があるとスムーズにいくのだ。
「王には付きっきりなんだろ?」
 座ってすぐ隣の会話に聞き耳を立てる。
「らしいぞ。王妃も看病しようとしたけど王が騒いで諦めたらしい。『殺されるぅ!』って」
「だからって奴隷出身の妾しか許さないってのも王としてはヤバいだろ。今まで好き勝手に生きてきたツケが追いついたな。ザマァねぇ」
「だけど実際はどうなんだろう。シアン王子も王もいなくなれば実質第一王子が有利だもんな。息子がいなければ奴隷出身の妾だけじゃ権力は握れねぇから中立派も権力争いから退くだろ」
「貴族派はユアノ第一王子をすぐにでも王座に座らせたくってしょうがないだろうな。長引くと次はユアノ王子と第三王子同士の争いが始まりそうだ」
「そうなる前にはザハル国に攻め入れられるだろ。向こうも今の王権争いに息を詰めて観察しているし、先月にはもう追加の武器の調達が出来たって聞いたぞ」
「あぁ、聞いた。なんか魔力が籠った新開発の武器だろ? あんなのが出回ってしまうと魔導師がいなきゃすぐに全滅だ」
「なんで魔導師なんだよ。あんな不気味なのがうようよいると傭兵の仕事が少なくなっちまう」
「いや、魔導師が多かろうが少なかろうが俺はごめんだな。戦争が始まったら間違いなくこの国は亡びる。俺はその前には出て行くぞ」
「何言ってやがるんだ。今が稼ぎ時だろ、傭兵」
「お前等、第二王子の話は聞いたか?」
 突然話していた男達に大男が割って入る。ゼノは隣で僅かに跳ねる。
「傀儡師と結託して謀反を企てたそうだぜ」
「俺は傀儡師が王子を操る為に誘拐したって聞いたぞ」
「俺も操る為だって聞いた」
「いや、それは古い情報で実は第二王子が傀儡師を呼んで王を操ろうとしたらしいぞ」
「あのシアン王子がか? なんだ、意外と野心あるんじゃねぇか。……考えてみれば軍資金の為に男爵一人娘と婚約したもんな」
「男爵?」
「あれ? 知らねぇの? 貿易商のガゥルー家」
「あの金持ちの」
「そうそう、そこ。男爵の称号を貰う代わりに、第二王子との婚約と財力の約束をしたんだと。新興派は準備中のザハルに先制を仕掛けて統率を乱したいんだろ」
「なんだ、じゃあ、何気に今一番影響力があるのはシアン王子じゃないか」
「そういう事」
 俺は隣で俯いているゼノの手を軽く握る。もう行こうかと立ち上がり掛ける時に別のテーブルの会話が聞こえてくる。
「王が亡くなれば妾はどうなるんだ?」
 ゼノが反応をする。そちらの方へと意識を向ける。
「貴族派が権力を握れば間違いなく処刑だな」
「王妃自身が喜々として剣を握りそうだな」
「王は危篤なのか? いや、俺も何も聞いてないけど、通行税の話が一旦保留になっているんだよな。城はそれどころじゃねぇって事だろ。戦争の軍資金へ回す新税がストップしているとなると……もういよいよだな」
 ゼノがいきなり強く俺の手を握り返す。レース越しに真っ直ぐとした意志の強い目が俺を見つめる。俺はそれに小さく頷いて彼の手を軽く叩く。

――――母君の心配か。進路は王都に決定だな

 俺達はもう暫く他の会話を聞いていた。
 その間、ゼノはずっと俺の手を強く握っていた。
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