似非王子と欠陥令嬢

ちゃろっこ

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絡み付いた縁が紡ぐ物

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足を縺れさせながら走る様にモヤに向かって進む。

匂いがどんどん濃くなるのが分かる。

夢の中だからなのか上手く走れない自分の足がもどかしくて堪らない。

モヤが目の前に迫る。

ただの闇にしか見えなかったモヤの中に人影が見えた。

キャロルは荒れた息を整えながらモヤに立つ人影の後ろ姿を見る。





「………何やってんですか。」

自分の声が震えるのが分かる。

人影はゆっくりと振り返り微笑んだ。

「…見つかっちゃったね。」

そう微笑んだのは紛れも無くルシウスだった。



ルシウスはモヤに手を当てて魔力を流している。

キャロルはペタンと地面に座りながらその光景を見る事しか出来ない。

言いたい事は沢山あった。

聞きたい事も沢山あった。

なのに言葉が見つからない。

「…何でこんな所にいるんですか。」

絞り出した言葉は冷たく責める言葉で。

本当はお礼を言いたかったのに。

心配していたと言いたかったのに。

皆が待ってると言いたかったのに。

ルシウスは魔力を流しながらキャロルに笑いかける。

「ん?
そうだね。
キャロルの呪いを解くって約束したからかな。」

「…だからってこんな所に……。」

「私を信じて欲しいって言っちゃったからね。
…正直私が庇った時にはキャロルは手遅れに近かったんだよ。
だから私の命と魔力を移す魔術を使ったんだけど防御壁まで同時に使ったでしょ?
だから色々手違いが起こったみたいでね。
11年かかったけど死ぬ事がなくなる位までは浄化出来たんだよ。
でも魔力に関してはまだ解けてないんだ。
中々禁術って厄介だよ。」

キャロルの拳が震える。

11年もここにいたというのか。



こんな何もない空間でずっと1人で禁術を解いてくれていたというのか。



肩を震わせるキャロルに魔力を止めたルシウスが近付いてしゃがむ。

いつもの様に優しく頭を撫でる。


「…なんで……こんな事…。」

「私だって心が折れそうになったよ。
…でも助けたいと思ったんだ。」

キャロルは俯いていた顔を上げる。

ルシウスは陽だまりの様な笑みを浮かべる。

「ずっと見てたからね。」

「…ずっと見てた?」

「そう。
11年間私はキャロルの中でずっとキャロルと一緒に世界を見てたんだ。」 
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