犯人はこいつです!〜足りないのは動機と証拠とアリバイと〜

高前タルソン

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第一章

少年探偵団

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「正太郎!」学校の廊下で、猫田らしき声に後ろから呼び止められる。
「何?」振り向くとやはりそこに猫田圭介はいた。いや、情報屋ネコタがいた。
「はいはい。今日の特ダネは?」正太郎は猫田のもったいぶった表情に半ば呆れつつ聞いた。
猫田は仲間内では情報屋ネコタと呼ばれることがある。人懐こい性格の彼は、上下も左右も男女も分け隔てなく友人知人が多い。それだけに校内の情報には誰よりも詳しい。
「吉田麗(うらら)」
「は?」
「美人代理教師の名前だよ」猫田の目がきらりと光る。
「なるほど。でも名前がわかったところで・・・」いや、そんなことはないか。名前も分からずにどうやって他人に危機を知らせられると言うのか。
「ありがとう猫田」
正太郎から素直にお礼を言われた猫田は、軽くうなづいて続ける。
「もう一つ。住まいはやはりO市。車は持っていないらしい。通勤には電車を使ってるみたいだ」
ふうん。正太郎は眉間に皺を寄せる。なるほど、少し見えてきた。容疑者の田村と吉田麗の関係性さえ分かれば謎は解ける。
「そう言うことだ」猫田は正太郎の考えてることを察し、目一杯格好つけて言った。
「あまり気は進まないんだけど・・・。このまま学校に居座られるのも気分が悪いしな。動いてみますか」
「お手伝いしますよ、名探偵さん」猫田がおどける。
「うん。サンキュー。猫田、悪いんだけどお母さんに亡くなったおばさんの住所聞いてもらえる?」正太郎はそう言って猫田と離れたあと、携帯電話を取り出し、とある人物に電話をかける。


表札には「須本」とあった。
正太郎と猫田ともう一人はひき逃げ事件の被害者宅の前にいる。
「おいおい正太郎、なんでこいつもいるの?」猫田はふてくされて言う。
「てめぇ、誰に向かってコイツとか言ってんだ?」コイツと呼ばれた男は間髪入れずに猫田に凄んだ。

コイツは林守(はやしまもる)。正太郎が電話をして呼び出した男である。林は生粋の不良で、S県内の高校生では知らぬ者はいない程に名が通っている。いわゆる武闘派ヤンキーだ。
正太郎と猫田とは中学時代のクラスメイトであった。
「そう言うなって。何があるか分からないからさ、用心棒的な?」正太郎は微笑む。
「誰が用心棒だ。夏井、お前の頼みだから仕方なく来てやったんだぞ。あとで飯くらいおごれよな」林は正太郎を睨む。
「ああ、ありがとなマモル」



林守は正太郎に借りがある。
中学三年生の春だ。隣町の中学校の生徒が、帰り道に集団リンチにあい、大怪我をする事件があった。
普段の生活態度からか、その嫌疑は林にかかった。林には身に覚えのないことであったが、疑われたことに腹を立て、否定はしなかった。なんならこの生活指導の教師を殴り飛ばして、学校をやめてやろうかとも思っていた。

だが正太郎がそれを止めた。
「マモル、落ち着け。だめだ」
正太郎は教師の前に仁王立ちする。
「先生、これはマモルの仕業ではないです!マモルは確かに喧嘩をするけど、集団で一人を殴るなんてことは絶対にしません!」
「夏井か。なぜそんなことを言い切れる?先方は大怪我を負ってるんだ。このままでは済まされない。」教師は正太郎に低い声でそう言う。
「なぜ、と聞きましたね?それはその犯人を僕が知ってるからです」
「!」
「告げ口のようであまり言いたくないのですが、そいつらは2組のT、S、N、Uの四人です」
「それは本当か?・・・なんだ?お前見てたのか?」
「はい。見てました」正太郎は教師を睨みつける。もちろんこれは嘘であった。
だが、教師は信じた。
「わかった。詳しい話は後で聞こう。」生活指導の教師はそう言って教室を出て行こうとした。
「先生、待ってください!」
教師は立ち止まる。
「マモルに謝ってください」
驚いたように教師は目を見開いた。今にも怒鳴り出しそうな表情だ。
「謝ってください!」正太郎は続ける。
教師は正太郎を数秒黙って見つめ、何かを諦めたようにため息をついて言った。
「林、疑って悪かった。申し訳ない」教師は頭を下げ、教室を出て行った。

この時、林守はただ黙っていた。いや、何も話せないのだ。声を出すと泣いてしまいそうだったから。
(夏井、借りとくよ・・・)

そういったわけで、今は違う高校に通っているが、林は正太郎の頼みを断れないのである。

 

「でもなんで被害者の家?」猫田が首を傾げ正太郎のに聞く。
「だって、俺らここ以外になんの手がかりもないじゃんか」
「そういやそうか」猫田は納得する。
「お前ら何言ってるかさっぱりわからねぇぞ」林が割り込む。
「ごめんマモル。事情は後で話すよ。」正太郎は息を呑む。
「さて、行きますか」そう言って須本家のチャイムに指を伸ばした。



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