6 / 7
第一章
出会い
しおりを挟む
山ノ井冬香は寝坊した。
ベッドの上で頭をかきながら考え込む。
真夜中までの聞き込み。少しやりすぎたか。
昨日は正直なところ何も手がかりは掴めなかった。
(刑事になってもう10年だ。いつもこんな感じだな・・・私、むいてないのかもしれないな)
冬香は首を振る。
「いや、やめやめ。ネガティブはだめだ!」冬香は両手で自分の両頬をパンと叩き立ち上がった。
(今日は事務処理、それから被害者の家だ。)歯を磨きながら冬香は考える。
顔を洗った後、いつものスーツに着替え、玄関を出るまで実に10分。化粧など触ってすらいない。
とにかく時間が欲しい。寝坊しておいて考えることでもないが。冬香はそんなことを考えながら駅に向かう。
「たぶんこの辺のはず・・・」冬香は被害者である須本冴子の家を探している。九月とはいえまだまだ暑い。上着を脇に抱え、住宅街の坂道を登っていく。スマートフォンの地図アプリはすぐ目の前の二階建ての家を指し示している。
(ん?誰かいる?)
須本家の前で、高校生らしき男子が三人談笑をしている。もちろん冬香に面識はない。
(高校生?制服も着てるし、なんの用だろう?)刑事の性か、冬香は近寄らずに一度身を隠すことにした。
正太郎はチャイムを押した。家の中で呼び出し音
が鳴っているのを確認できる。少し待ったが反応はない。もう一度押してみる。
「留守か・・・」正太郎は残念そうにつぶやく。
「そういうこともあるよな。ていうか、人生ってこういうことの方が多いよな」猫田がいつものように能天気に言う。
「正太郎、どうすんだ?待ってみるか?」林が問い掛ける。
「出直そう。マモル悪いな、付き合ってもらったのに。」
「えっ?俺は?」猫田が驚いたような顔をする。
「お前は勝手についてきたんじゃん」正太郎は笑いながら言う。そして三人とも大笑い。
「ところでさ、被害者の家族に何を聞くつもりだったのさ?」と、猫田。
「うん、吉田麗という女性を知っているか?または被害者は知っていたか?」
「なるほど。真犯人のうららちゃんと亡くなった須本さんが知り合いならただの事故ではなくなると。そういうこと?」
「うん。そういうこと。」正太郎はうなづく。
(今、吉田麗と言ったか?なぜ高校生が田村の恋人の名を・・・?)
隠れて三人の様子を見ていた冬香はかなり驚いていた。
(話を聞かないわけにはいかないな)冬香は三人の前に向かう。
「ねえ。」
「?」知らぬ女に声をかけられ、三人はその人物に振り向く。
「な、なんですか?」猫田が答える。
「今、吉田麗と聞こえたんだけど・・・。なぜあなたたちがその名前を知ってるの?」
三人は目を合わせる。唐突だが確信をつく質問にどう答えたらいいかわからないのだ。しばしの沈黙の後、やがて正太郎が口を開く。
「あの・・・あなたは誰ですか?その質問にはお答えしなければいけませんか?」
「あ、ごめんなさい。驚かせたか。そりゃそうよね、高校生だもんね。」冬香はお尻のポケットから警察手帳を出して三人に見せる。
「私は山ノ井冬香。S県警の刑事です。今、ある事件の調査中で聞き込みを続けています。ご協力をお願いできますか?」
「刑事!初めて見た!」
猫田、そこかよ?と心の中で思いながら、正太郎は口を開いた。
「はい。吉田麗はうちの学校の教師です。」
「なるほど!」探す手間が省けた。
「真犯人、ということも言ってたわよね?どういうこと?」
こいつ、どこかで聞いてたな?正太郎は穿った目で、目の前の刑事を睨む。
「ごめん、フェアじゃないね。実は盗み聞きしてました。刑事のくせで。ごめんなさい」冬香は頭を下げる。
「刑事さん、調査してんのは例の交通事故?うららちゃんを疑ってんの?日本の警察は優秀だな!」猫田が好奇心をむき出しにしている。
(おいおい、猫田)正太郎は頭を抱える。
「え?なぜそう思うの?まさか、あなたたちもその事件を?それになぜ吉田麗が真犯人などと言ったの?もしかして、目撃者?」冬香は頭が混乱する。
「刑事さん、落ち着いてください。」
「いや、ごめんなさい。落ち着けない。」冬香は額の汗をぬぐい、深く息を吸って吐いた
この刑事に何をどこまで話すべきだろうか。正太郎は考える。真犯人という言葉と吉田麗の名前まで聞かれてしまったのだ。もう適当な言い訳では帰してくれないだろう。かと言って、自分の能力のことを話しても信じてくれるわけがない。
いや、いっそのこと打ち明けてみようか。馬鹿にされたならされたでそれまでのことだ。
マモルにも聞かれてしまうが、大丈夫だと思う。マモルは信用できる男だ。
正太郎は決心をした。
「刑事さん、実は・・・」正太郎は言葉を探しながら、ゆっくりと話し始めた。
ベッドの上で頭をかきながら考え込む。
真夜中までの聞き込み。少しやりすぎたか。
昨日は正直なところ何も手がかりは掴めなかった。
(刑事になってもう10年だ。いつもこんな感じだな・・・私、むいてないのかもしれないな)
冬香は首を振る。
「いや、やめやめ。ネガティブはだめだ!」冬香は両手で自分の両頬をパンと叩き立ち上がった。
(今日は事務処理、それから被害者の家だ。)歯を磨きながら冬香は考える。
顔を洗った後、いつものスーツに着替え、玄関を出るまで実に10分。化粧など触ってすらいない。
とにかく時間が欲しい。寝坊しておいて考えることでもないが。冬香はそんなことを考えながら駅に向かう。
「たぶんこの辺のはず・・・」冬香は被害者である須本冴子の家を探している。九月とはいえまだまだ暑い。上着を脇に抱え、住宅街の坂道を登っていく。スマートフォンの地図アプリはすぐ目の前の二階建ての家を指し示している。
(ん?誰かいる?)
須本家の前で、高校生らしき男子が三人談笑をしている。もちろん冬香に面識はない。
(高校生?制服も着てるし、なんの用だろう?)刑事の性か、冬香は近寄らずに一度身を隠すことにした。
正太郎はチャイムを押した。家の中で呼び出し音
が鳴っているのを確認できる。少し待ったが反応はない。もう一度押してみる。
「留守か・・・」正太郎は残念そうにつぶやく。
「そういうこともあるよな。ていうか、人生ってこういうことの方が多いよな」猫田がいつものように能天気に言う。
「正太郎、どうすんだ?待ってみるか?」林が問い掛ける。
「出直そう。マモル悪いな、付き合ってもらったのに。」
「えっ?俺は?」猫田が驚いたような顔をする。
「お前は勝手についてきたんじゃん」正太郎は笑いながら言う。そして三人とも大笑い。
「ところでさ、被害者の家族に何を聞くつもりだったのさ?」と、猫田。
「うん、吉田麗という女性を知っているか?または被害者は知っていたか?」
「なるほど。真犯人のうららちゃんと亡くなった須本さんが知り合いならただの事故ではなくなると。そういうこと?」
「うん。そういうこと。」正太郎はうなづく。
(今、吉田麗と言ったか?なぜ高校生が田村の恋人の名を・・・?)
隠れて三人の様子を見ていた冬香はかなり驚いていた。
(話を聞かないわけにはいかないな)冬香は三人の前に向かう。
「ねえ。」
「?」知らぬ女に声をかけられ、三人はその人物に振り向く。
「な、なんですか?」猫田が答える。
「今、吉田麗と聞こえたんだけど・・・。なぜあなたたちがその名前を知ってるの?」
三人は目を合わせる。唐突だが確信をつく質問にどう答えたらいいかわからないのだ。しばしの沈黙の後、やがて正太郎が口を開く。
「あの・・・あなたは誰ですか?その質問にはお答えしなければいけませんか?」
「あ、ごめんなさい。驚かせたか。そりゃそうよね、高校生だもんね。」冬香はお尻のポケットから警察手帳を出して三人に見せる。
「私は山ノ井冬香。S県警の刑事です。今、ある事件の調査中で聞き込みを続けています。ご協力をお願いできますか?」
「刑事!初めて見た!」
猫田、そこかよ?と心の中で思いながら、正太郎は口を開いた。
「はい。吉田麗はうちの学校の教師です。」
「なるほど!」探す手間が省けた。
「真犯人、ということも言ってたわよね?どういうこと?」
こいつ、どこかで聞いてたな?正太郎は穿った目で、目の前の刑事を睨む。
「ごめん、フェアじゃないね。実は盗み聞きしてました。刑事のくせで。ごめんなさい」冬香は頭を下げる。
「刑事さん、調査してんのは例の交通事故?うららちゃんを疑ってんの?日本の警察は優秀だな!」猫田が好奇心をむき出しにしている。
(おいおい、猫田)正太郎は頭を抱える。
「え?なぜそう思うの?まさか、あなたたちもその事件を?それになぜ吉田麗が真犯人などと言ったの?もしかして、目撃者?」冬香は頭が混乱する。
「刑事さん、落ち着いてください。」
「いや、ごめんなさい。落ち着けない。」冬香は額の汗をぬぐい、深く息を吸って吐いた
この刑事に何をどこまで話すべきだろうか。正太郎は考える。真犯人という言葉と吉田麗の名前まで聞かれてしまったのだ。もう適当な言い訳では帰してくれないだろう。かと言って、自分の能力のことを話しても信じてくれるわけがない。
いや、いっそのこと打ち明けてみようか。馬鹿にされたならされたでそれまでのことだ。
マモルにも聞かれてしまうが、大丈夫だと思う。マモルは信用できる男だ。
正太郎は決心をした。
「刑事さん、実は・・・」正太郎は言葉を探しながら、ゆっくりと話し始めた。
0
あなたにおすすめの小説
私の優しいお父さん
有箱
ミステリー
昔、何かがあって、目の見えなくなった私。そんな私を、お父さんは守ってくれる。
少し過保護だと思うこともあるけれど、全部、私の為なんだって。
昔、私に何があったんだろう。
お母さんは、どうしちゃったんだろう。
お父さんは教えてくれない。でも、それも私の為だって言う。
いつか、思い出す日が来るのかな。
思い出したら、私はどうなっちゃうのかな。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる