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「公爵様。明日の結婚式ですが、今から中止の連絡をしたのでは間に合わないかと思います」

それまで黙って話を聞いていたユリウスが口を開いた。

私ははっとした。

そうだった……。私たちの結婚式には、友人も含め、お付き合いのある貴族の方々をお呼びしている。

中には、遠方からお越しくださる方もいる。

せっかく来ていただいたのに、『中止になりましたからお帰りください』なんて、失礼なことはできない。

「今この状況で、ローラ様を矢面に立たせるわけにはまいりません。ここはお集まりいただいた皆さまに、公爵様から本当のことをお話いただくしかないかと」

「そうだな。執事のクロードに手配してもらおう」

私はうつむいた。

これでいいの……? 本当に?

せっかく来てくれたみんなの顔も見ず、自分の部屋に引きこもって泣いて過ごすの?

「いいえ……いいえ、わたくしが話します」

気がついたら、言葉が口をついていた。

お父様もお母様もユリウスも、驚いたように目を丸くしている。

「ローラ。それは」

「わたくしから皆さんに、きちんとお話したいのです」

言いかけたお父様の言葉をさえぎって、私はぎゅっと拳を握りしめた。

「主治医として許可できません」

厳しい表情で割り込んだのはユリウスだった。

「たとえアレックス様がクズ……婚約破棄してよかったと思える相手でも、この短い時間に、これだけショックな出来事が立て続けに起こったのです。倒れたり寝込んで当たり前であり、何もおかしくありません。
これ以上、このクソ……無意味な騒動にローラ様を巻き込むことは避けるべきだと判断します」

ところどころ本音が漏れた台詞に、不謹慎ながら笑いそうになる。
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