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「何もかも、お前の思いどおりというわけね、ローラ。結局、私だけがいつも損をして、惨めな思いをする。
……でも、もうそれもおしまい」
アンナはそばにあったグラスからワインを一気に飲み干した。
「ぐっ……がはっ!!」
アンナの口から血が霧のように噴き出る。
むごい光景に、ユリウスが「見るな」と私を背中にかばった。
激しく咳き込み、地面にのた打ち回る音がする。
アンナはひゅーひゅーと喉から息を漏らしながら、地獄のような断末魔の声が言った。
「私は、お前を許さない。私から全てを奪った、お前を……」
「それは違います」
イクスはアンナのそばに膝をつき、彼女の頭を抱えながら言った。
「あなたから全てを奪ったのは、あなた自身です。どんなに辛い目に遭っても、その道は選んじゃいけなかった」
イクス……。
「俺は王宮の門兵から、ナサニエル殿下の側近として取り立てていただき、ずっとあなたと兄さんの動向を探っていました。あなたの過去も、調べていくうちに知りました。けれど同情はしても、それが罪を犯す理由にはならない。
ローラ様は、あなたに婚約者を奪われても、不名誉な噂を流されても、あなたに復讐しようとはしなかった。
あなたに、その強さがひとかけらでもあれば、こんなことにはならなかったかもしれません」
「ぐ……がっ……う……」
体をくの字に折って苦しみに悶えながら、アンナは震える手を伸ばす。
そして二度、三度と大きく痙攣した後、動かなくなった。
ユリウスが脈と瞳孔を見て確認し、首を振る。
「亡くなりました」
私はアンナの死に顔を見つめ、両手を合わせて目を閉じる。
『どうして、こんなに近くにいたのに、助けてくれなかったの?』
心の中にいるアンナは、小さな女の子のように私の裾を引いて訴える。
そして私は、生きている彼女には言えなかった言葉を、心の中で口にする。
『ごめんね。あなたの苦しみに気づいてあげられなくて』
そう言えば、きっとアンナはまた、上から目線だと言って怒るだろう。
それでも私は、できるならアンナを助けたかった。
暗い深い闇の底から抜け出してもらいたかった。
ごめんね――アンナ。
……でも、もうそれもおしまい」
アンナはそばにあったグラスからワインを一気に飲み干した。
「ぐっ……がはっ!!」
アンナの口から血が霧のように噴き出る。
むごい光景に、ユリウスが「見るな」と私を背中にかばった。
激しく咳き込み、地面にのた打ち回る音がする。
アンナはひゅーひゅーと喉から息を漏らしながら、地獄のような断末魔の声が言った。
「私は、お前を許さない。私から全てを奪った、お前を……」
「それは違います」
イクスはアンナのそばに膝をつき、彼女の頭を抱えながら言った。
「あなたから全てを奪ったのは、あなた自身です。どんなに辛い目に遭っても、その道は選んじゃいけなかった」
イクス……。
「俺は王宮の門兵から、ナサニエル殿下の側近として取り立てていただき、ずっとあなたと兄さんの動向を探っていました。あなたの過去も、調べていくうちに知りました。けれど同情はしても、それが罪を犯す理由にはならない。
ローラ様は、あなたに婚約者を奪われても、不名誉な噂を流されても、あなたに復讐しようとはしなかった。
あなたに、その強さがひとかけらでもあれば、こんなことにはならなかったかもしれません」
「ぐ……がっ……う……」
体をくの字に折って苦しみに悶えながら、アンナは震える手を伸ばす。
そして二度、三度と大きく痙攣した後、動かなくなった。
ユリウスが脈と瞳孔を見て確認し、首を振る。
「亡くなりました」
私はアンナの死に顔を見つめ、両手を合わせて目を閉じる。
『どうして、こんなに近くにいたのに、助けてくれなかったの?』
心の中にいるアンナは、小さな女の子のように私の裾を引いて訴える。
そして私は、生きている彼女には言えなかった言葉を、心の中で口にする。
『ごめんね。あなたの苦しみに気づいてあげられなくて』
そう言えば、きっとアンナはまた、上から目線だと言って怒るだろう。
それでも私は、できるならアンナを助けたかった。
暗い深い闇の底から抜け出してもらいたかった。
ごめんね――アンナ。
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