物語のない人生なんて!~とにかく面白い物語が読みたいんや~

凪子

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「お姉ちゃんずるい、ずるいよ。流花も見たぁい」――『アンダルシア 女神の報復』池上純哉

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2011年は、日本にとって大きな1年だ。

東日本大震災。

未曾有の大災害に襲われ、自粛ムードと節電の嵐が吹き荒れ、人心は荒んだ。
まさに「震災前」と「震災後」では、世界が一変してしまったように思う。
この作品は、その2011年に公開されている。
制作は当然2011以前だから、まだ何となく社会の豊かさというか、余裕が感じられる。
舞台もアンドラ、バルセロナ、アンダルシアと邦画にしては珍しくちゃんと海外だし、キャストも豪華。
はっきり言って予算がかかっている。
だからとは言わないがーー大好きな作品で、10年以上たった今も、繰り返し観ている。


◇あらすじ
スペイン北部に隣接する小国・アンドラで、日本人投資家・川島(谷原章介)の遺体が発見された。
国際会議の準備でパリを訪れていた外交官・黒田康作(織田裕二)は、事態を把握すべく調査を命じられ、二人の事件関係者と出会った。
遺体の第一発見者、ビクトル銀行行員・新藤結花(黒木メイサ)。
事件の担当者、インターポール捜査官・神足誠(伊藤英明)。
多くを語らず何かに怯える結花と、捜査情報を隠そうとする神足。
二人は、過去の事件をきっかけに、心に闇を抱えていたのだった――。


一作目の「アマルフィ」で外交官黒田シリーズを初めて知ったのだが、そっちもいいけど、個人的には「アンダルシア」の方が好き。
シリアスな金融ミステリ、スパイ、外交官、国際的陰謀とスケールが大きいだけでなく、どこかノスタルジックでロマンもある。
あと、ヒロインの結花のキャラクターと、演じる黒木メイサさんが、とにかくいい。
美しく、どこか物憂げでミステリアス。
しかもアンドラ銀行で働く銀行員で、日本語・英語・スペイン語を自由に操れる。
金融知識に精通し、頭もいい。
才色兼備、とても素晴らしい。

主人公・外交官黒田は言わずと知れた織田裕二さん。
冷静さと度胸、知性とユーモアを兼ね備えた、まさに「大人の男性」の魅力全開だ。
織田裕二さんコメディの素敵だけど、こういう役柄、さらに色気があっていい。
スーツを着こなす肩幅よ!!あの肩がないとスーツは似合わんのよ。スーツも着てくれて喜んでいることだろう。
海外の男性に見劣りしない体格、タフさもある。

インターポールの神足捜査官を演じるのは、伊藤英明さん。
もちろんかっこいいーーだけでなく、黒田と時に対立し、時に協力する、この関係性が物語を牽引する魅力の一つだ。

もちろん「謎自体」も面白い。
タックスヘイブンの地アンドラで起きた日本人の死、自殺か他殺か?強盗目的なのか?
そして、背後に蠢くマネーロンダリングの影と、パリサミットで日本は成果を挙げられるのか?
多くを語らない結花の過去とは?
などなど、魅惑的な謎が散りばめられている。

戸田恵梨香さん、福山雅治さんなど、前作のキャラも登場していて、そこもいい!
音楽も絶妙にマッチしていて、感情を盛り上げてくれるし、最後の「Time to say goodbye」は圧巻。
スペインの風光明媚な風景や、アンドラの雪景色、クライマックスのアンダルシアの郷愁ーーロケーションの魅力も満点だ。

黒田が最後までコーヒーを飲みそびれてしまうなんていう、ギミックも効いている。

トラック激突からの銃撃戦は手に汗握る名シーンで、個人的に1番好きだ。
私も黒田に守られたい!!こんなん好きになってまうやろ!!(草w)


1度目に見たときは純粋に謎解き、2度目は結花と黒田の切ないラブロマンス(明文化されていないところがいい)、3度目はスペイン観光気分と、何度も楽しめる。

そして経済観念やマネロンについて多少なりとも知った後でもう一度見ると、結花の台詞の意味がまた違って聞こえる。
残酷な過去を背負う彼女が心から安らげる時は、いつか来るのだろうか。

そして黒田は、また行ってしまう。
一箇所に留まらず、世界を飛び回るからこそ、彼は何者にも執着せずにいられるのかもしれない。
でもーーそれでも、彼が羽を休める場所があるよう願ってしまう。

孤独とは、大人の男が身にまとう、最高の香水なのかもしれない。
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