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三、
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引きずるようにして襟首を掴んだ手を左右に揺さぶり、
「何なの、この小汚い娘は!」
悲鳴に近い、うわずった金切り声をあげる。
たちまち忍び笑いが起こり、憐れみの混じった視線が注がれる。
夕霧の顔から血の気が引いた。
「お前のような地下の民が、ここに座って良いとでも思っているの!?恥を知りなさい、この下衆が!」
少女は口角泡を飛ばす勢いでまくし立て、思いつく限りの罵詈雑言を常盤に浴びせかけた。
夕霧が立ち上がり、抗議の口を開こうとした時、
「お待ちください、お芙沙様」
付き添いの侍女と思われる、いくらか質素な格好をした若い女が裾を引く。
だがお芙沙と呼ばれた少女は、
「ええい、やめい!」
懐から取り出した扇で苛烈な一撃。侍女の手が赤く腫れ上がるほど打ちつける。
打つたびに容赦ない破裂音が響き、くぐもった悲鳴が上がる。
飾り帯の帯留に連なった紅玉が、大きく左右に揺れた。
侍女の犠牲によって恐るべき魔手から逃れた常盤に、怒涛の追撃が襲う。
「出ておいき、恥知らずのどぶねずみ!」
あまりの激しい剣幕に、他の姫君達も色を失っている。
水を打ったように静まり返る控えの間で、常盤だけが冷静だった。
畳の上に何か光るものを捉え、そっと拾い上げる。
――これは。
白銀に梅の花をあしらい、真珠と碧玉で彩られた優美な簪が落ちていた。
誰のものだろうと顔を上げた常盤と、夕霧の視線がかち合った。
ここまで言われて、普通の子供なら泣き出してしかるべき。
なのに常盤はあくまでも涼しい顔で聞き流している。せめて血相でも変えていればかわいらしいものを。
背筋が冷えた。
――この子ども……よほど胆が据わっているのか。
「何なの、この小汚い娘は!」
悲鳴に近い、うわずった金切り声をあげる。
たちまち忍び笑いが起こり、憐れみの混じった視線が注がれる。
夕霧の顔から血の気が引いた。
「お前のような地下の民が、ここに座って良いとでも思っているの!?恥を知りなさい、この下衆が!」
少女は口角泡を飛ばす勢いでまくし立て、思いつく限りの罵詈雑言を常盤に浴びせかけた。
夕霧が立ち上がり、抗議の口を開こうとした時、
「お待ちください、お芙沙様」
付き添いの侍女と思われる、いくらか質素な格好をした若い女が裾を引く。
だがお芙沙と呼ばれた少女は、
「ええい、やめい!」
懐から取り出した扇で苛烈な一撃。侍女の手が赤く腫れ上がるほど打ちつける。
打つたびに容赦ない破裂音が響き、くぐもった悲鳴が上がる。
飾り帯の帯留に連なった紅玉が、大きく左右に揺れた。
侍女の犠牲によって恐るべき魔手から逃れた常盤に、怒涛の追撃が襲う。
「出ておいき、恥知らずのどぶねずみ!」
あまりの激しい剣幕に、他の姫君達も色を失っている。
水を打ったように静まり返る控えの間で、常盤だけが冷静だった。
畳の上に何か光るものを捉え、そっと拾い上げる。
――これは。
白銀に梅の花をあしらい、真珠と碧玉で彩られた優美な簪が落ちていた。
誰のものだろうと顔を上げた常盤と、夕霧の視線がかち合った。
ここまで言われて、普通の子供なら泣き出してしかるべき。
なのに常盤はあくまでも涼しい顔で聞き流している。せめて血相でも変えていればかわいらしいものを。
背筋が冷えた。
――この子ども……よほど胆が据わっているのか。
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