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冬の章
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「さあ、フィン。こっちに来なさい。少し戒めが足りないようだね」
ルートはフィンを突き飛ばし、雪の上に伏せさせて、かばうように立ちはだかった。
「ルート?」
「生きろ」
その瞬間、ラグランジュの放った銃弾が、あやまたずルートの左胸を貫いた。
フィンの目に、やけにゆっくりとした動作で倒れていくルートが、写真のように焼きついた。
――生きろ、フィン。
「嫌だ……」
頭が割れそうに痛い。
膝をついて嗚咽するフィンの脳内に、破裂しそうなほどの勢いで記憶の洪水が押し寄せる。
喪われた三年前からの、十二年分の記憶が。
「嫌だ、嫌だ、いやだあああああああああ!」
「まったく、聞き分けのない子ばかりだね。君たちは」
フィンの腕をつかんで引っ張り上げ、ラグランジュは呆れた顔で言う。
「大人しく言うことを聞いていれば、死なずにすんだのに」
――死んだ?
――ルートが、死んだ?
フィンは首をのべ、もう一度ルートを見た。
倒れているルベリエを、レッドを、ユリシスを見た。
――皆、死んでしまった。
――あのときと同じだ。
三年前、平和だった森に軍隊が押し寄せ、何もかもを奪い、殺し尽くしていった。
そして自分は、千の祈りを受けたのだ。
痛みも感じず、死ぬこともない体へと生まれ変わるために。
最後のディンキン族としての使命を果たすために。
「さあ、目を閉じて。もう一度、暗示をかけ直さないと」
片手で目をふさがれた暗闇の中、フィンの内奥にほとばしる暗黒の力が、出口を求めて炸裂した。
ルートはフィンを突き飛ばし、雪の上に伏せさせて、かばうように立ちはだかった。
「ルート?」
「生きろ」
その瞬間、ラグランジュの放った銃弾が、あやまたずルートの左胸を貫いた。
フィンの目に、やけにゆっくりとした動作で倒れていくルートが、写真のように焼きついた。
――生きろ、フィン。
「嫌だ……」
頭が割れそうに痛い。
膝をついて嗚咽するフィンの脳内に、破裂しそうなほどの勢いで記憶の洪水が押し寄せる。
喪われた三年前からの、十二年分の記憶が。
「嫌だ、嫌だ、いやだあああああああああ!」
「まったく、聞き分けのない子ばかりだね。君たちは」
フィンの腕をつかんで引っ張り上げ、ラグランジュは呆れた顔で言う。
「大人しく言うことを聞いていれば、死なずにすんだのに」
――死んだ?
――ルートが、死んだ?
フィンは首をのべ、もう一度ルートを見た。
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――皆、死んでしまった。
――あのときと同じだ。
三年前、平和だった森に軍隊が押し寄せ、何もかもを奪い、殺し尽くしていった。
そして自分は、千の祈りを受けたのだ。
痛みも感じず、死ぬこともない体へと生まれ変わるために。
最後のディンキン族としての使命を果たすために。
「さあ、目を閉じて。もう一度、暗示をかけ直さないと」
片手で目をふさがれた暗闇の中、フィンの内奥にほとばしる暗黒の力が、出口を求めて炸裂した。
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