Before long ―痛ガールたちのシェアハウス―

凪子

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【1】羽鳥七瀬

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ご両親は警察に捜索願を出し、親戚や友人宅など方々手を尽くして捜したが、その後の一年間は完全に音信不通だった。

翌年高校に入学した私は、彼が実家に勘当されたと聞いた。

勘当という言葉の意味は知らなかったけれど、彼がもう二度と帰ってこないということだけは分かった。

彼を失った日から一ヶ月の間、毎朝泣きながら目覚めた。

夢の中で彼に会えた日も、会えなかった日も、同じくらい胸が痛かった。

そうして十年の月日が過ぎ、いつしか悲しみも薄れ、全てが懐かしい思い出に変わり始めたころ。

私は、紫となった彼と再会を果たしたのだ。

会社の飲み会の後、二次会で連れていかれた新宿のおかまバー『ジェーン・ドウ』で。

藤色の着物を着た紫が席についた瞬間、ひっくり返りそうになるくらい驚いた。

でも、自分の判断は少しも疑わなかった。私が彼を見間違えるはずがない。

『みっちゃん?』

みんながいる手前、声に出さず唇を動かして伝えると、彼女はにっこり笑って頷いた。

後で聞いたところによると、体はいろいろ手術したけれど、顔は整形していないらしい。

これはニューハーフの人にしては珍しいそうだ。

大抵の人が頬骨や顎を削ったり、目や鼻をくっきりさせて女性らしい顔立ちにするのだが、彼の場合もともと中性的な顔立ちだったため、いじる必要がなかったそうだ。

体型については、Fカップはあろうかという胸にくびれた腰、丸みを帯びたお尻と激変していたけれど、中身は変わっていなかった。

接客業だから昔より愛想がよくなったし話し方も女性らしいけど、優しくて正義感が強く、真っすぐな性格は同じだった。

一緒に住もうという提案があったのは、再会から一ヶ月も経たないころだった。

渋谷の喫茶店で話をすると、紫は『どうしても一緒に住んでほしい、家賃は要らないから』とまで言ってくれた。

私は実家から職場までが遠く、激務ということもあって、少しでも通勤が楽な環境を望んでいたので、渡りに船と話に乗った。

荷物をまとめて去年の年末に引っ越し、最初のうちは慣れない共同生活に緊張していたけれど、今ではお互いのペースも分かってきて快適な暮らしを送れている。

ただ、時々思う。

――紫は、どうして私に同居してほしいと望んだのだろうか。

そこに甘い期待を抱くほど、さすがに夢は見ていない。

紫はもう女性として生きているし、恋愛対象外なのは分かってる。

でも、そういうことを越えて、心のどこかで必要としてくれているのなら嬉しい。

大好きなお兄ちゃんから綺麗なお姉さんになり、今じゃすっぴんを見られても平気な仲だけど、それでも紫は紫だ。

彼であろうが彼女であろうが、私の大切な人に変わりはない。

彼女が性別とともに捨て去った本当の名前を、この家で知るのは私だけだ。

絶縁した家族からも、ニューハーフの仲間たちからも、決して呼ばれることのない名前。

私だけは覚えていよう。口には出さない、私と紫だけの秘密。

――そして、紫が私の初恋の人だったということは、私だけの秘密。






















































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