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第二章
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公香が痴漢男に向けた、凍りつくような眼差しを思い出す。
クラスの男子に接するときの、ことさらに冷淡な態度も。
「昔はそうじゃなかった。誰にでも優しくて気さくで、男の子も女の子も、お姉ちゃんのことを好きにならない人はいなかった」
里香が初めて真啓の前に現れたときの、値踏みするような目。
あれは、真啓の存在を計っていたのかもしれない。ただ一人、鋼のガードを打ち破って公香の側にいた真啓を。
「目撃者からも確たる証言が得られなくて、両親は被害届を出さないことにして、うやむやになったまま全てが終わって――みんな、少しずつ忘れていった。悔しかったけど、どうしようもなかった」
里香はうつむいた。
「だけど、終わりじゃなかった。お姉ちゃんが大学に入学してすぐ、あの脅迫状が届いた」
まだ、あの事件は終わっていない。嘲笑が聞こえてくるようだった。
「お姉ちゃんの人格を破壊しておいて、殺しておいて、のうのうとそいつは生きている。手紙まで送って、存在をアピールしてきた。絶対に許せない。私は、犯人を絶対に許さない。見つけ出して、確実に息の根を止めてやる」
今にもナイフを取り出しそうなほど物騒な目をしていた。
ともかく、この子を落ちつかせよう。真啓は小さく息をついた。
「ちょっと待って。話は分かった。だけどね、里香ちゃん」
「有澤さんは、死刑制度について賛成ですか?」
唐突な質問に、真啓は面食らった。
「え?」
里香は端から意見など求めていないらしく、充血した目で語り出した。
「私は、犯人を死刑にしたいと思っています。だってお姉ちゃんを殺したんだから。死刑以外にあり得ないです」
早口で一気にまくし立てる里香から、真啓は危うさを感じ取った。
若さゆえの潔癖というか、ひたむきな正義感の暴走と言うべきか。
クラスの男子に接するときの、ことさらに冷淡な態度も。
「昔はそうじゃなかった。誰にでも優しくて気さくで、男の子も女の子も、お姉ちゃんのことを好きにならない人はいなかった」
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あれは、真啓の存在を計っていたのかもしれない。ただ一人、鋼のガードを打ち破って公香の側にいた真啓を。
「目撃者からも確たる証言が得られなくて、両親は被害届を出さないことにして、うやむやになったまま全てが終わって――みんな、少しずつ忘れていった。悔しかったけど、どうしようもなかった」
里香はうつむいた。
「だけど、終わりじゃなかった。お姉ちゃんが大学に入学してすぐ、あの脅迫状が届いた」
まだ、あの事件は終わっていない。嘲笑が聞こえてくるようだった。
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今にもナイフを取り出しそうなほど物騒な目をしていた。
ともかく、この子を落ちつかせよう。真啓は小さく息をついた。
「ちょっと待って。話は分かった。だけどね、里香ちゃん」
「有澤さんは、死刑制度について賛成ですか?」
唐突な質問に、真啓は面食らった。
「え?」
里香は端から意見など求めていないらしく、充血した目で語り出した。
「私は、犯人を死刑にしたいと思っています。だってお姉ちゃんを殺したんだから。死刑以外にあり得ないです」
早口で一気にまくし立てる里香から、真啓は危うさを感じ取った。
若さゆえの潔癖というか、ひたむきな正義感の暴走と言うべきか。
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