ウェルテルの陰謀 －美少女と美少年(？)に囲まれた俺の運命やいかに？ー

第二章

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公香は一切の説明をせず、半ば引きずるようにして真啓を駅に連れていった。

ホームで待つこと十五分、学校帰りの中学生や高校生が駅に溢れ返る。

彼らを注意深く見定めながら、公香は言った。

「もうすぐ来るはずだ」

「なあ公香」

「説明は後だ」

「そうじゃなくて。お前、やっぱり一人で解決しようとしてたんだな」

公香は黙っている。

「この件だって、俺や里香が脅迫状を見てなければ、全部自分で抱え込むつもりだったんだろ。自分の気持ち、何にも言わないで」

軽口や悪態を言いながら、本心を悟られまいと、常に周囲から注意深く距離を取る。

事件の影響なのか、もとからの性格なのか。

「怖いとか、辛いとか、そういうのないの」

「……」

公香は黙っていたかと思うと、すっとベンチから立ち上がった。

真啓は慌てて後を追う。

ちょうど電車に乗り込もうとしていた子供の肩をたたくと、

「よっ」

公香は軽く片手を上げてみせた。まるで友達のように気安い仕草で。

真啓が追いつくと同時に、その少年は振り向いた。

漆黒の大きな瞳、漂白したように真っ白な肌、見なれた制服。

「君は……あのときの」

ひと月ほど前、電車で痴漢騒ぎがあったとき、容疑をかけられた公香をかばってくれた子供だ。

相変わらず年齢らしからぬ落ちつきと、どこか不吉な影がつきまとう。

その子供は特に驚いた様子もなく、ぺこりと公香たちに頭を下げた。

「何でしょうか」

「三上楓みかみ・かえで。お前に用があるんだ。付き合ってもらおうか」

公香が言うと、三上楓の表情がわずかに軋んだ。

幼さの残る頬の線が、ぴくりと引きつる。