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【3】ホラリー
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「お前さ、あんな有名人も顧客なんだな。驚いたよ」
恵果はあら、といたずらっ子のように笑った。
「男も女も、子供も大人も、占ってほしいっていう人はみんなお客さんよ」
「金を払えば、だろ」
「まあね~。でも、金額は同じじゃないよ。占う相手と内容によって私が決めてます」
「……いい性格してるよ」
律は脳内の仁科めぐみに関するデータを掘り起こしていた。
本名、仁科めぐみ。たしか、二十九歳。理知的で、たいそうな美人だ。
勝気で頭の回転が早いが、危なっかしい発言が多いので、何度か炎上したりマスコミの餌食になっている。
金もあり、名誉もあり、人脈もあり、仕事もある。そんな彼女が恵果に相談したいこととは何なのだろうか。
全ては推測の域を出ず、律は思考を拡散させた。
そのとき、恵果がそっと呟いた。
「一時間後か……見事なニアミスね」
「は?何か言った」
「何でもない。それより、あと一時間ぐらいしたらお客さん来るから。邪魔しないでね」
「はいはい」
恵果の占いには、大抵の場合予約が要るらしい。
この店に単なる『喫茶』を目的にやってくる人間はほとんどいない。
大抵は占いのお得意様で、彼らは毎月のようにやってきては、世間話のように恵果の占いを聞き、大金を置いていく。
律は少数派の『喫茶』目的で、自分の都合で立ち寄るため、恵果とクライアントが相談の最中でもお構いなしに和んでいるが。
それでも、クライアントが秘密の話をしたいと強く要望した場合は、店先に『本日終了』の札をかける。
占いと分からずに占えるのは、一つのウリだろう。
あれ以来、律は恵果の占いを利用したことはない。
そして金輪際、そうするつもりはない。
顧客と占い師の関係になれば、自分たちの中で何かが崩れてしまうであろうことを、無意識に感じ取ったからだ。
だが、それこそが恵果にとって最も意表をついた行動なのだということには、そのときの律は気づいていなかった。
恵果はあら、といたずらっ子のように笑った。
「男も女も、子供も大人も、占ってほしいっていう人はみんなお客さんよ」
「金を払えば、だろ」
「まあね~。でも、金額は同じじゃないよ。占う相手と内容によって私が決めてます」
「……いい性格してるよ」
律は脳内の仁科めぐみに関するデータを掘り起こしていた。
本名、仁科めぐみ。たしか、二十九歳。理知的で、たいそうな美人だ。
勝気で頭の回転が早いが、危なっかしい発言が多いので、何度か炎上したりマスコミの餌食になっている。
金もあり、名誉もあり、人脈もあり、仕事もある。そんな彼女が恵果に相談したいこととは何なのだろうか。
全ては推測の域を出ず、律は思考を拡散させた。
そのとき、恵果がそっと呟いた。
「一時間後か……見事なニアミスね」
「は?何か言った」
「何でもない。それより、あと一時間ぐらいしたらお客さん来るから。邪魔しないでね」
「はいはい」
恵果の占いには、大抵の場合予約が要るらしい。
この店に単なる『喫茶』を目的にやってくる人間はほとんどいない。
大抵は占いのお得意様で、彼らは毎月のようにやってきては、世間話のように恵果の占いを聞き、大金を置いていく。
律は少数派の『喫茶』目的で、自分の都合で立ち寄るため、恵果とクライアントが相談の最中でもお構いなしに和んでいるが。
それでも、クライアントが秘密の話をしたいと強く要望した場合は、店先に『本日終了』の札をかける。
占いと分からずに占えるのは、一つのウリだろう。
あれ以来、律は恵果の占いを利用したことはない。
そして金輪際、そうするつもりはない。
顧客と占い師の関係になれば、自分たちの中で何かが崩れてしまうであろうことを、無意識に感じ取ったからだ。
だが、それこそが恵果にとって最も意表をついた行動なのだということには、そのときの律は気づいていなかった。
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