女子高生占い師の事件簿

凪子

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【3】ホラリー

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「二十六歳でいらっしゃるんですか。お若く見えますね」

恵果の口調は、満更お世辞でもなさそうだった。律も驚いた。

「はは、よく童顔って言われます」

市井清隆は照れたように笑う。

――何かこいつ、うさん臭いな

律は清隆の柔らかな面差しを睨んだ。

恵果への態度といい、好青年を装っているように見えるのは気のせいか。

そのとき、清隆がそっとコーヒーに手をつけた。

左手の薬指に銀の指輪がはまっているのを見て、律は驚いた。結婚していたのか。

しばらく他愛のない話で談笑した後、恵果はようやく切り出した。

「それで、今日は主に何を占いましょう?」

清隆は少し身構えた。テーブルの上で硬く両手を組む。

「実は、僕には結婚を約束した女性がいます。秋ごろには式も挙げようと言っています」

「まあ、おめでとうございます」

だから、「まあ」はよせって。律は思った。

言葉遣いこそ正しいが、恵果がお嬢様然とした『あそばせ言葉』を使うのを見ると、怖気がするくらい似合わない。

「ありがとうございます。……ですが、今さらと思われるかもしれないんですが、最近になって、僕は彼女にふさわしくないんじゃないかと迷うようになってしまって」

清隆は言葉を濁した。

「つまり、どうにかして穏便に別れたいと?」

恵果の質問に、悪意や好奇心は存在していない。

以前、占い師の仕事の半分は占うことだが、もう半分は顧客との信頼関係を作ることだと言っていたのを思い出す。

清隆は恐縮した様子で言った。

「いいえ、違います。僕は彼女に本当にふさわしい男なのか、占っていただきたいんです」

律は呆れて物も言えなかった。自分の結婚も自分で決められないのかよ。

恵果は沈黙を守っている。

「小心者だと思われるでしょうね。でも、ここ数ヶ月、自分で考えてもどうしても結論が出なくて。
……僕は、駆け出しの弁護士なんです。まだ取り扱う事件も小さなものばかりで、収入だって普通のサラリーマンとそう変わりません。でも、彼女は巷では知らない人のいない有名人です。僕とのことが公になると、彼女の足を引っ張ってしまうんじゃないかと、不安で」

律は、先ほどの恵果の独り言を思い出した。

ん?まさか、こいつの婚約者って……。
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