女子高生占い師の事件簿

【４】トランジット

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「あなたは私の命の危険からさえ救ってくださった。外務大臣時代、中国の大使館を訪問中狙撃されたときも、あなたの予見のおかげで命拾いしました」

恵果は焦った。

危険だと思った。

巳喜男の熱っぽい口調からは、これからもずっと自分を手放す気はない、と言外にはっきりと読み取れた。

これから日本を背負って立つような人物が、占い師に、しかも自分にこれ以上のめり込むのはよくない。

恵果は話がこじれる前に、単刀直入に言うことにした。

「分かりました。話はお受けいたしましょう。ですが、あなたは私に何か隠し事をなさってますね」

ぎくり、と擬態音が聞こえたような気がした。

それほどまでに、巳喜男の表情は分かりやすく強張った。

正座に疲れ、恵果はおもむろに立ち上がった。

「息子さんは二十九歳とおっしゃいましたね。二十九歳は土星回帰の年なので、何かと問題も表面化しやすい時期です。お気をつけくださいね」

「恵果さん」

引き止めるように立ち上がった巳喜男に、恵果は微笑んで言い刺した。

「それでは、お隠しになっている『何か』を話せる覚悟がおありでしたら、またご連絡ください」

楚々とした所作で襖を閉めて退出する恵果の背を見送り、巳喜男は嘆息した。