女子高生占い師の事件簿

【５】イベントチャート

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自分は、こうなることを予感していたのかもしれない。

江藤亜子は、わんわんと心が警鐘を鳴らす中で、どこか冷静にそう感じていた。

「やあ」

軽く手を上げて笑いながら目の前に立つ人物を見たとき、真っ先に思ったのは、逃げなればならないということ。

次に思ったのは、恵果のことだった。

「恵果の居場所を知らない？捜してるんだ」

喫茶【オリオン】の前だった。

亜子は学校帰りにここへ立ち寄り、『ＣＬＯＳＥＤ』の札を確認することが日課になっていた。

亜子は気づいていた。

閉まっていることは問題ではない。

問題なのは、ここを利用しようとしている者――つまり、恵果の占いを必要としている人間の動向だ。

恵果の占いの力は絶大だ。

短い付き合いながらも、それだけは確信を持って言える。

その利用価値を知っている者は、恵果が行方をくらませば血眼になって彼女を捜すだろう。

だがそれは、恵果の占いを欲するがゆえの行動だけではない。

恵果の占いが、彼らにとって諸刃の剣だからだ。

恵果は占いに個人的感情を交えない。差別や偏見を排し、あらゆる人を平等に占う。

そこで当然のことながら、顧客に一つの疑問が湧き上がる。

自分と敵対関係にある存在が恵果に気づき、相手も恵果の占いの恩恵に浴することになったら？

それは、今までの立場が逆転するほどの事態を意味する。

それに気づいた依頼人は、恵果の身軽さや自由さを封じようと、あらゆる手段を講じるだろう。

恵果は依頼人にとって最大最強の味方であると同時に、最も警戒し、常に監視しておくべき危険因子なのだ。

そして、亜子の考えが正しければ、恵果が今挑もうとしている相手は――。