ディエス・イレ ~運命の時~

凪子

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本編

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「コンスタンスがマイアを殺したってことは、思い出したよ」

核心を突いたのか、紘ちゃんの表情に動揺が広がる。

(嫌な言い方だったかな)

フォローしようとするが、うまい言葉が見当たらない。

「……そっか」

泣き笑いに似た表情で、紘ちゃんは呟いた。

「できれば、最後まで知られたくなかったなぁ」

「最後までって、ディエス・イレの日まで?」

「そう」

「うーん。思い出そうと思い出すまいと、どっちにしろ死んじゃうわけでしょ?その気遣い、あんまり意味ない気するけどな」

フォンダンショコラが運ばれてきて、私は大胆にフォークを突き刺した。

温かいチョコレートが中から溢れてくる。口に含むと、とろりと甘く美味しかった。

「落ちついてるんだね、舞ちゃん」

冷ややかな声が言った。

ふと見ると、紘ちゃんの両目が注意深く私を捉えている。観察者の目だ。

「俺が怖くないの?」

「どうかな?全く怖くないって言ったら嘘になるかも。紘ちゃんと会うのは久しぶりだから緊張してるし、爽君を刺したことは怒ってるし、悲しんでる。でも」

「でも?」

「一番大きいのは、また会えて嬉しいって気持ち。待ち合わせに紘ちゃんが来たのを見て、私、嬉しかった。
自分を殺そうとしてるかもしれない人に、こう感じるなんておかしいけど、でも、嬉しかったの」

紘ちゃんははっと目を見開き、それからしばらくして、力なく首を振った。

「……俺は舞ちゃんを殺したりしないよ」

哀しい、哀しい瞳だった。その瞳に映る私の姿は小さく霞んでいる。

「紘ちゃん。私たち、もう元には戻れないのかな?小さい頃からずっと一緒で、三人で遊んだり、喧嘩したり、冒険したりして、あんなに楽しかったじゃん。
ディエス・イレなんかのせいで、私たちの関係がこんなふうに壊れちゃうなんて嫌だよ」

コーヒーカップを手にとる、紘ちゃんの指が震えている。

しばらくの間、沈黙が流れた。
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