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第一話
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今日は土曜日。いつもなら心踊る休日。しかし私の心は何かに捕らわれたかのように、モヤモヤとした霧に包まれていた。原因はわかっていた。昨日の店が、なぜか頭から離れないのだ。
「あんな怪しい店…なんでこんなに…」
店をでる間際の店主の言葉が頭によぎる。
『君は、何かに後悔をしてここに来たんだろう?』
後悔?後悔なんていつだってしている。それこそ、誰だってしているものだ。だからなんだと言うのだ。彼はいったい、私に何を感じたと言うのだ。端からみても分かるくらい、私は何かに囚われているのか?
ぐるぐると思考のループにのまれる。このままではいけない、と立ち上がり服を着替える。身支度を整え終えると頭の中のモヤを振り払うように勢いよく家を出た。
「━━━なぜ私はここに…」
無限ループの思考から解き放たれようと外に出たはずなのに気づけば私は昨日の店の前に来ていた。相変わらず古びたその店は、昨日と同じく人通りの無い路地裏に立っていた。
「夢ではなかったみたいね…」
あまりにも日常離れしたあの不思議な空間。あれはもしかしたら夢なのでは?ここに来るまでそんな結論に達していたのだが、見事にそれは打ち破られた。
「うーん…どうしようかな…」
昨日あんな出て行き方をしたから非常に入りづらい。しかしこの心の引っ掛かりを解消するには今一度店を訪れ、確かめるしかない。しかし…と、店前でこれまた思考の無限ループに陥っていたとき、内側からドアが開いた。
「わっ」
「お待ちしておりましたよ」
まるで私が来るのが分かっていたかのような口ぶりで、中から店主が顔を覗かす。優しく微笑みながら告げられる言葉は昨日と同じでなんだが不気味だ。
思わず足がたじろぐ。でもここまで来てまた帰るわけにもいかず、勇気を振り絞り私は導かれるままに店の中に足を踏み入れた。
店内は昨日と同じくモノで溢れかえっていた。昼間だと言うのに薄暗いのはモノが多すぎるせいか、それともなにか不思議な力でも働いているのか。突飛な思考に思わず自分自身で苦笑いする。それほどこの空間は非日常的なのだ。
「さて、ここに来たと言うことは、やはり君はなにか後悔を抱えているんだろう?」
徐に店主が口を開く。昨日の話の続きだと言わんばかりに告げられる言葉は、私の心をざわつかせた。
「それ…なんでそう思うんですか?」
ずっと疑問に思っていたことを投げ掛ける。
「簡単な話さ。この店は何かしらに心から後悔している人が訪れるんだ。逆に言えば毎日を前向きに生きている人はここを訪れることができない。」
「できない、とは?」
「見えないんだ。」
「は?」
「後悔を抱えてないとこの店は見えない。後悔がなかったり、例え何かに後悔をしていようと、乗り越えようと頑張っている人にはこの店は見えないようになっている。」
何を言っているんだ、と訝しげに店主をみる。やはりこの店はやばい店だったのだ。しかしそんな私の心中を無視し、店主は続ける。
「君はなにか逃げ出したくなるほどの後悔を抱えているんだろう?だからこの店が見えたんだ。だからこの店に導かれたんだ。」
「なんですかそれ……魔法とかでも言うんですか?」
若干バカにしたような声がでてしまった。しかし、こんな話し、馬鹿正直に信じる方がどうかしている。
「魔法、か、そうだねぇ…そんな便利なものでも無いんだよこれが。」
ふぅ、とため息をつく店主。その手には昨日の万華鏡が握られていた。
「この万華鏡は、過去を見ることができる万華鏡。ただし使えるのは一人一度きり。しかも見るだけで、過去に戻れることができるわけではない。」
ここを見てごらん、と店主が万華鏡の側面を指差す。言われるがままに目線をそこに滑らせる。
「ここにダイヤルが二つあるだろう? 上のダイヤルは年。下のダイヤルは月日を表している。このダイヤルを合わせた先の年月を覗き見ることができるんだ。」
はあ…と気の抜けた返事が出る。何を言うべきか戸惑った顔をしていると、店主はくすりと笑みをこぼした。
「何を言っているのか意味が分からない、といった顔をしているね。まあ、今までもそんなすぐに受け入れた人はいないけどね。」
一瞬、どこか遠いところを見つめているかのような表情をした。万華鏡を机に置き、こちらを見つめる瞳は吸い込まれそうなほど美しかった。
「なにはともあれ、君がここに訪れた事実がこの不思議な空間を認めているんだ」
気づかないうちに体に力が入っていたようで、握り締めていたこぶしに汗がにじむ。怪しい。全身全霊でそう感じる。でもなぜだろうか、昨日のように今すぐ帰りたいとは思わない。知りたい、と興味がわいてくる。
「あんな怪しい店…なんでこんなに…」
店をでる間際の店主の言葉が頭によぎる。
『君は、何かに後悔をしてここに来たんだろう?』
後悔?後悔なんていつだってしている。それこそ、誰だってしているものだ。だからなんだと言うのだ。彼はいったい、私に何を感じたと言うのだ。端からみても分かるくらい、私は何かに囚われているのか?
ぐるぐると思考のループにのまれる。このままではいけない、と立ち上がり服を着替える。身支度を整え終えると頭の中のモヤを振り払うように勢いよく家を出た。
「━━━なぜ私はここに…」
無限ループの思考から解き放たれようと外に出たはずなのに気づけば私は昨日の店の前に来ていた。相変わらず古びたその店は、昨日と同じく人通りの無い路地裏に立っていた。
「夢ではなかったみたいね…」
あまりにも日常離れしたあの不思議な空間。あれはもしかしたら夢なのでは?ここに来るまでそんな結論に達していたのだが、見事にそれは打ち破られた。
「うーん…どうしようかな…」
昨日あんな出て行き方をしたから非常に入りづらい。しかしこの心の引っ掛かりを解消するには今一度店を訪れ、確かめるしかない。しかし…と、店前でこれまた思考の無限ループに陥っていたとき、内側からドアが開いた。
「わっ」
「お待ちしておりましたよ」
まるで私が来るのが分かっていたかのような口ぶりで、中から店主が顔を覗かす。優しく微笑みながら告げられる言葉は昨日と同じでなんだが不気味だ。
思わず足がたじろぐ。でもここまで来てまた帰るわけにもいかず、勇気を振り絞り私は導かれるままに店の中に足を踏み入れた。
店内は昨日と同じくモノで溢れかえっていた。昼間だと言うのに薄暗いのはモノが多すぎるせいか、それともなにか不思議な力でも働いているのか。突飛な思考に思わず自分自身で苦笑いする。それほどこの空間は非日常的なのだ。
「さて、ここに来たと言うことは、やはり君はなにか後悔を抱えているんだろう?」
徐に店主が口を開く。昨日の話の続きだと言わんばかりに告げられる言葉は、私の心をざわつかせた。
「それ…なんでそう思うんですか?」
ずっと疑問に思っていたことを投げ掛ける。
「簡単な話さ。この店は何かしらに心から後悔している人が訪れるんだ。逆に言えば毎日を前向きに生きている人はここを訪れることができない。」
「できない、とは?」
「見えないんだ。」
「は?」
「後悔を抱えてないとこの店は見えない。後悔がなかったり、例え何かに後悔をしていようと、乗り越えようと頑張っている人にはこの店は見えないようになっている。」
何を言っているんだ、と訝しげに店主をみる。やはりこの店はやばい店だったのだ。しかしそんな私の心中を無視し、店主は続ける。
「君はなにか逃げ出したくなるほどの後悔を抱えているんだろう?だからこの店が見えたんだ。だからこの店に導かれたんだ。」
「なんですかそれ……魔法とかでも言うんですか?」
若干バカにしたような声がでてしまった。しかし、こんな話し、馬鹿正直に信じる方がどうかしている。
「魔法、か、そうだねぇ…そんな便利なものでも無いんだよこれが。」
ふぅ、とため息をつく店主。その手には昨日の万華鏡が握られていた。
「この万華鏡は、過去を見ることができる万華鏡。ただし使えるのは一人一度きり。しかも見るだけで、過去に戻れることができるわけではない。」
ここを見てごらん、と店主が万華鏡の側面を指差す。言われるがままに目線をそこに滑らせる。
「ここにダイヤルが二つあるだろう? 上のダイヤルは年。下のダイヤルは月日を表している。このダイヤルを合わせた先の年月を覗き見ることができるんだ。」
はあ…と気の抜けた返事が出る。何を言うべきか戸惑った顔をしていると、店主はくすりと笑みをこぼした。
「何を言っているのか意味が分からない、といった顔をしているね。まあ、今までもそんなすぐに受け入れた人はいないけどね。」
一瞬、どこか遠いところを見つめているかのような表情をした。万華鏡を机に置き、こちらを見つめる瞳は吸い込まれそうなほど美しかった。
「なにはともあれ、君がここに訪れた事実がこの不思議な空間を認めているんだ」
気づかないうちに体に力が入っていたようで、握り締めていたこぶしに汗がにじむ。怪しい。全身全霊でそう感じる。でもなぜだろうか、昨日のように今すぐ帰りたいとは思わない。知りたい、と興味がわいてくる。
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