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三章
37話
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ゼリーを食べ終え、シャングアの自室に戻った二人は、用意されていた昼食を摂った。その後は昼前と同じように過ごす。以前は退屈だと思っていたエンティーだったが、心が満たされ、シャングアと同じ空間で過ごす事に心地よさを感じている。
そして、その夜。
「シャングア! 俺と一緒にベッドで寝よう!」
寝間着姿のエンティーは決意の眼差しでそう言いながら、寝る前の挨拶をしに来たシャングアの腕を掴む。
「え!?」
エンティーの予想外の行動にシャングアは驚き、振り払うことが出来ず硬直する。
「だって、昨日も床で寝ていたでしょう? 体に悪いし、俺達の噂を解消になっていないと思う」
昨日の夜は誓約の儀の時と同じように、シャングアは寝袋を使って床で眠った。
今日も同じだが、このまま誓約者としての関係が進まないのは良くない。
αにとって誓約のΩは、次のαを産むための存在。それはどう足掻いても覆せない。いつ運命の番が現れるか分からず、このまま恩を仇で返すようなことはしたくはない。誓約の儀の時には躊躇いと戸惑いがあったが、飛竜の暴走前に聞いた噂を思えば、ずっとこの関係を維持するのは難しい。徐々に、お互いに迫り圧力となってくるだろう。今すぐでなくとも、お互いが許せる関係になれるように、足並みを揃えていく必要があるとエンティーは考えている。
「事実作りは出来ていると思うよ」
エンティーの手を振りほどかず、シャングアは静かに言う。
「そうだけれど……」
何かを言いたそうにするエンティーを見て、シャングアはベッドの端に腰を掛けて待つ。
「時々一緒にいるって状況のままだと、周囲の人からずっと怪しまれ続けると思う。だから、友達以上に親密なんだって見える様に、二人でいる状況に慣れたいんだ」
どう伝えれば良いか悩みながら、エンティーはシャングアに言う。
「……わかった。今日は隣で寝させてもらうよ」
「ありがとう。迷惑をかけてごめん」
シャングアは少し悩んだのちに了承し、エンティーは腕を解き感謝と謝罪を述べる。
ベッドは二人が横に並んでも充分な広さがある。シャングアは反対側へと移動し、エンティーとほんの少しだけ距離を離して、ベッドに座る。
「おやすみ」
「うん。おやすみ。シャングア」
小箪笥に置かれていた蝋燭を消しシャングアはベッドへと横たわると、二人は距離を保ちながら徐々に眠りへ落ちる。
時折、エンティーは夜中に目が冴える。
昼間よりも頭が冴え、身体が軽く感じられる。けれど、仕事は昼にしか出来ないので、なんとかして眠りにつかなければならない。
目を閉じながら、眠れと己に念じるエンティーは寝返りを打とうとするが、視線を感じ硬直する。シャングアの視線であるとすぐに分かったが、どうすれば良いのか分からない。
2人で眠るなんて慣れていないから、起きてしまったのかもしれない。
それに間違いないとエンティーは、寝ぼけたふりをして起きようとしたが、突然彼の手が頭に触れ、流れる様に銀色の髪を静かにやさしく撫でる。
呼吸音が近い。
発情期は完全には来ていない筈だ。
訳が分からず混乱し、頭の中が真っ白になるエンティーは身を強張らせる。
シャングアが、エンティーの白く細い腕に甘噛みをした。
そして、その夜。
「シャングア! 俺と一緒にベッドで寝よう!」
寝間着姿のエンティーは決意の眼差しでそう言いながら、寝る前の挨拶をしに来たシャングアの腕を掴む。
「え!?」
エンティーの予想外の行動にシャングアは驚き、振り払うことが出来ず硬直する。
「だって、昨日も床で寝ていたでしょう? 体に悪いし、俺達の噂を解消になっていないと思う」
昨日の夜は誓約の儀の時と同じように、シャングアは寝袋を使って床で眠った。
今日も同じだが、このまま誓約者としての関係が進まないのは良くない。
αにとって誓約のΩは、次のαを産むための存在。それはどう足掻いても覆せない。いつ運命の番が現れるか分からず、このまま恩を仇で返すようなことはしたくはない。誓約の儀の時には躊躇いと戸惑いがあったが、飛竜の暴走前に聞いた噂を思えば、ずっとこの関係を維持するのは難しい。徐々に、お互いに迫り圧力となってくるだろう。今すぐでなくとも、お互いが許せる関係になれるように、足並みを揃えていく必要があるとエンティーは考えている。
「事実作りは出来ていると思うよ」
エンティーの手を振りほどかず、シャングアは静かに言う。
「そうだけれど……」
何かを言いたそうにするエンティーを見て、シャングアはベッドの端に腰を掛けて待つ。
「時々一緒にいるって状況のままだと、周囲の人からずっと怪しまれ続けると思う。だから、友達以上に親密なんだって見える様に、二人でいる状況に慣れたいんだ」
どう伝えれば良いか悩みながら、エンティーはシャングアに言う。
「……わかった。今日は隣で寝させてもらうよ」
「ありがとう。迷惑をかけてごめん」
シャングアは少し悩んだのちに了承し、エンティーは腕を解き感謝と謝罪を述べる。
ベッドは二人が横に並んでも充分な広さがある。シャングアは反対側へと移動し、エンティーとほんの少しだけ距離を離して、ベッドに座る。
「おやすみ」
「うん。おやすみ。シャングア」
小箪笥に置かれていた蝋燭を消しシャングアはベッドへと横たわると、二人は距離を保ちながら徐々に眠りへ落ちる。
時折、エンティーは夜中に目が冴える。
昼間よりも頭が冴え、身体が軽く感じられる。けれど、仕事は昼にしか出来ないので、なんとかして眠りにつかなければならない。
目を閉じながら、眠れと己に念じるエンティーは寝返りを打とうとするが、視線を感じ硬直する。シャングアの視線であるとすぐに分かったが、どうすれば良いのか分からない。
2人で眠るなんて慣れていないから、起きてしまったのかもしれない。
それに間違いないとエンティーは、寝ぼけたふりをして起きようとしたが、突然彼の手が頭に触れ、流れる様に銀色の髪を静かにやさしく撫でる。
呼吸音が近い。
発情期は完全には来ていない筈だ。
訳が分からず混乱し、頭の中が真っ白になるエンティーは身を強張らせる。
シャングアが、エンティーの白く細い腕に甘噛みをした。
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