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24話 オパールの義眼
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中央広場で戦闘があった為に、屯所内の空気は張り詰めている。ネフィリアード達を心配や情報提供を求む声に応じながら、2人は第一部隊が使用する事務室へと入室した。
出入り口の扉の横には、コートやマントを掛けるためのラック。共同で使う事務机が4台、ネフィリアードと事務が得意な魔女達専用の事務机が更に5台、ローパーテーションが設けられた対向式のレイアウトが成されている。資料や書類が収められた本棚が並び、その傍らにお菓子や紅茶の缶、ティーセットが入った食器棚が設置されている。休憩用に座り心地が良さそうなソファの上には猫のクッションが置かれ、ローテーブルにはレースのクロスが敷かれている。
34人の部隊にしては物が少ない様に思えるが、常に全員が同じ時間に勤務しているわけでは無い。大まかに昼間と夜間の二手に分かれて、街の巡回や事件の捜査を行っているからだ。特に曲者の多い第一部隊は時間が少しでも空くと、訓練室や図書室、中には箒で空を飛び出したりと好きに動くので、事務室にいる隊員は多くても6人程度なのだ。
今回は誰も居らず、2人きりとなってしまった。
「私は手紙を書くから、アリュスはソファに座って休んでくれ」
8台の事務机から少し離れた孤島の様な上司の席へと、ネフィリアードは座った。
「俺もそっちに座る」
アリュスは事務椅子を持ち上げると、彼の事務机の横に置いた。
「隊員達が持ち寄った小説や絵本が置いてあるから、読んでいても良いんだぞ」
「俺だけ遊んでる様で、嫌だから」
そう言いながら椅子に座るアリュスを見て、ネフィリアードは微笑みを浮かべる。
「ありがとう。良ければ、少女達と所持していた杖を詳細に絵に描いてくれないか?」
「わかった。やる」
ネフィリアードは机の引き出しから、万年筆と鉛筆、そして便箋の束を取り出す。彼が流れる様に万年筆のペン先を走らせて文章を書く傍らで、アリュスは便箋の裏面を使用してスケッチを描き始める。
「ねぇ、俺はまだ必要?」
「必要だとも。私は残り二人の魔力をよく知らない。魔力の感知能力は人によって精度や範囲が違うから、複数人居た方が良い」
ぽつりぽつりと会話を交わしつつも2人は手を止めず、書き上げた。
「白翼の団へ届けてくれ」
ネフィリアードが告げると、小さな布袋に入れたエメラルドを絵と便箋の上に置いた。便箋が勝手に動き出し、小さな布袋包み込むと、紙とは思えない丸い塊に変形する。まるで粘土細工のように翼や嘴、足が伸び、鳥へと整形が成されると何処かへ飛び立った。
「白翼?」
「城の警備と女王陛下の護衛を担当する魔法騎士だ。面識のある私であっても、陛下に直接は物を送れない。彼女達を経由し、渡してもらうんだ」
「途中で紙鳥が捕まって何かされる可能性あるし、安全対策は必要だよね」
アリュスは納得をしつつ、顔を動かした際に右目の上に流れてしまった黒髪を耳に掛ける。
「義眼の調子はどうだ?」
「良好。よく見えてる」
オパールの瞳の義眼は、ネフィリアードの手製の逸品である。
保護された当時のアリュスには、目が無かった。そこでネフィリアードは、魔力を原動力とするオートマタの職人に義眼の制作を依頼した。しかし、拒絶反応が出てしまった。アリュスの血液の役割を担う魔力が、義眼と繋がろうとしたからだ。
通常のガラスや宝石ではなく、魔法で生み出された結晶を材料に義眼を作れないか。
素材を調べる中でその考えに至り、ネフィリアードはアリュスの監視の合間に職人に作り方を教わり、試行錯誤を重ねた。
そして半年かけてオパールの瞳の義眼が完成し、魔力の通るアリュスの目として今も機能をし続けている。
「それは良かったが……どうして、片方だけなんだ?」
ネフィリアードは義眼を二個制作したが、当の本人は右目しか使っていない。頭蓋骨には大きな割れ目などの損傷はなく、難なく入る筈だ。
常々疑問に思っていた彼は、ここで訊いた。
「片方が慣れてる、から?」
上手く説明できない様子のアリュスに対して、ネフィリアードは安直な質問をしてしまったと後悔をした。
アリュスは自我が芽生えて以降、ほんの僅かであるが帝国での記憶を持ち合わせていると判明した。どれも風景のみで、生い立ちやどの様な生活を送って来たか不明だが、身体が覚えている。その回答はかつての彼が事故や病気、何らかの理由で片目の状態だったことを意味している。
「そうだったのか。いつか使いたくなったら、使ってくれ」
「うん。そうする」
特に気にしていない様子のアリュスは頷いた。
安堵に似ているが心地の悪い渇きを喉が訴えかけ、ネフィリアードは紅茶を入れようと立ち上がった。
「ただいまぁ」
その時、地下水路内を捜査していたコルエと金茶色の髪の魔女が戻って来た。
リュアンナの同僚のニケだ。高身長に筋肉質な体に、短く切られた金茶色の髪は癖があるのか外に跳ね返りがある。活発そうな明るい印象を受けるその隊員の腕には、筒状に丸められた大きな紙が抱えられている。
「おやぁ? アリュスくん。良い飾りを付けているじゃないか」
アリュスの被る魔女の帽子を彩る結晶の花を見て、コルエは楽しそうに言った。
出入り口の扉の横には、コートやマントを掛けるためのラック。共同で使う事務机が4台、ネフィリアードと事務が得意な魔女達専用の事務机が更に5台、ローパーテーションが設けられた対向式のレイアウトが成されている。資料や書類が収められた本棚が並び、その傍らにお菓子や紅茶の缶、ティーセットが入った食器棚が設置されている。休憩用に座り心地が良さそうなソファの上には猫のクッションが置かれ、ローテーブルにはレースのクロスが敷かれている。
34人の部隊にしては物が少ない様に思えるが、常に全員が同じ時間に勤務しているわけでは無い。大まかに昼間と夜間の二手に分かれて、街の巡回や事件の捜査を行っているからだ。特に曲者の多い第一部隊は時間が少しでも空くと、訓練室や図書室、中には箒で空を飛び出したりと好きに動くので、事務室にいる隊員は多くても6人程度なのだ。
今回は誰も居らず、2人きりとなってしまった。
「私は手紙を書くから、アリュスはソファに座って休んでくれ」
8台の事務机から少し離れた孤島の様な上司の席へと、ネフィリアードは座った。
「俺もそっちに座る」
アリュスは事務椅子を持ち上げると、彼の事務机の横に置いた。
「隊員達が持ち寄った小説や絵本が置いてあるから、読んでいても良いんだぞ」
「俺だけ遊んでる様で、嫌だから」
そう言いながら椅子に座るアリュスを見て、ネフィリアードは微笑みを浮かべる。
「ありがとう。良ければ、少女達と所持していた杖を詳細に絵に描いてくれないか?」
「わかった。やる」
ネフィリアードは机の引き出しから、万年筆と鉛筆、そして便箋の束を取り出す。彼が流れる様に万年筆のペン先を走らせて文章を書く傍らで、アリュスは便箋の裏面を使用してスケッチを描き始める。
「ねぇ、俺はまだ必要?」
「必要だとも。私は残り二人の魔力をよく知らない。魔力の感知能力は人によって精度や範囲が違うから、複数人居た方が良い」
ぽつりぽつりと会話を交わしつつも2人は手を止めず、書き上げた。
「白翼の団へ届けてくれ」
ネフィリアードが告げると、小さな布袋に入れたエメラルドを絵と便箋の上に置いた。便箋が勝手に動き出し、小さな布袋包み込むと、紙とは思えない丸い塊に変形する。まるで粘土細工のように翼や嘴、足が伸び、鳥へと整形が成されると何処かへ飛び立った。
「白翼?」
「城の警備と女王陛下の護衛を担当する魔法騎士だ。面識のある私であっても、陛下に直接は物を送れない。彼女達を経由し、渡してもらうんだ」
「途中で紙鳥が捕まって何かされる可能性あるし、安全対策は必要だよね」
アリュスは納得をしつつ、顔を動かした際に右目の上に流れてしまった黒髪を耳に掛ける。
「義眼の調子はどうだ?」
「良好。よく見えてる」
オパールの瞳の義眼は、ネフィリアードの手製の逸品である。
保護された当時のアリュスには、目が無かった。そこでネフィリアードは、魔力を原動力とするオートマタの職人に義眼の制作を依頼した。しかし、拒絶反応が出てしまった。アリュスの血液の役割を担う魔力が、義眼と繋がろうとしたからだ。
通常のガラスや宝石ではなく、魔法で生み出された結晶を材料に義眼を作れないか。
素材を調べる中でその考えに至り、ネフィリアードはアリュスの監視の合間に職人に作り方を教わり、試行錯誤を重ねた。
そして半年かけてオパールの瞳の義眼が完成し、魔力の通るアリュスの目として今も機能をし続けている。
「それは良かったが……どうして、片方だけなんだ?」
ネフィリアードは義眼を二個制作したが、当の本人は右目しか使っていない。頭蓋骨には大きな割れ目などの損傷はなく、難なく入る筈だ。
常々疑問に思っていた彼は、ここで訊いた。
「片方が慣れてる、から?」
上手く説明できない様子のアリュスに対して、ネフィリアードは安直な質問をしてしまったと後悔をした。
アリュスは自我が芽生えて以降、ほんの僅かであるが帝国での記憶を持ち合わせていると判明した。どれも風景のみで、生い立ちやどの様な生活を送って来たか不明だが、身体が覚えている。その回答はかつての彼が事故や病気、何らかの理由で片目の状態だったことを意味している。
「そうだったのか。いつか使いたくなったら、使ってくれ」
「うん。そうする」
特に気にしていない様子のアリュスは頷いた。
安堵に似ているが心地の悪い渇きを喉が訴えかけ、ネフィリアードは紅茶を入れようと立ち上がった。
「ただいまぁ」
その時、地下水路内を捜査していたコルエと金茶色の髪の魔女が戻って来た。
リュアンナの同僚のニケだ。高身長に筋肉質な体に、短く切られた金茶色の髪は癖があるのか外に跳ね返りがある。活発そうな明るい印象を受けるその隊員の腕には、筒状に丸められた大きな紙が抱えられている。
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