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25話 南を指す
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「ネフィリアードから貰った」
アリュスの素直な答えに、コルエは満面の笑みを浮かべる。
「うんうん。素敵だよ。君は花が似合う子だからね。折角だから、四季の魔女になってはどうかな?」
幼馴染の反応を楽しもうとしたコルエだったが、当の本人に額を軽く突かれた。
驚いたように大きく見開いた彼女の猫目の中に、ネフィリアードが映る。
「……アリュスを巻き込むな」
「僕は本当のこと言ったまでだ。ネフィだって、彼が四季の花を操る姿を見たいだろう?」
「それよりも、地下水路の調査の報告をしてくれ」
否定をしないと言うことは、願望はあるようだ。面白いものが見られたとばかりに幼馴染へ不敵な笑みを浮かべると、コルエは筒状の丸められた紙の一枚を開いた。
「報告の為には準備が必要だ。その間に、お茶を淹れてもらえるかな?」
紙には、魔方陣と思しき曲線と文字が描かかれている。
魔方陣とは魔法もしくは魔術を使うために、予め書いておく図形だ。
種類や属性によって図形が変わり、強力な式である程に詠唱文の量に比例する形で陣は大きくなる。コルエは地下水路に描かれていた規模を2人に見せるために、あえて等身大の模写を行ったのだ。
「わかった。淹れるから、手早く終わらせてくれ」
ネフィリアードとアリュスは食器棚へと向かい、紅茶の準備を始める。
火の魔法が付与された湯沸かし用のポットに水差しの水を注ぎ入れ、ティーポットに紅茶を入れる。その作業をアリュスは見守り、魔女2人は着々と準備を進める。
「よし。できたよ」
あっという間に、コルエ達の準備が終わった。ソファとテーブルは壁側に寄せられ、広くなった空間に6枚の紙を繋いで出来た魔方陣が敷かれている。
直径が約4メートルの魔方陣は、大きな円の中に12つの小さな円が描かれた特殊な形式だ。全てを同時に発動させる為の術式であるのは明白だ。1人では到底発動できない規模であり、ツリーの無数の飾りに対する影響力を含めて、あの少女と2人以外にも仲間がいる可能性が上がっていく。
「案の定、ツリーの真下の床に書かれていたよ。5つは鑑識の報告書に書かれていたツリーの飾りに向けて。6つはツリーに対しての魔方陣だった」
ネフィリアードから紅茶の入ったティーカップを貰い、コルエは上機嫌で言った。
ツリーに対しては〈横揺れ〉〈縦揺れ〉〈周囲の建物にぶつかる〉〈枝を振り回す〉〈枝を落とす〉〈最後には真っ二つに折れる〉の行動を魔法によってツリーに強制しようとしていた。さらにその12の小さな丸を囲う大きな円には、魔女だけでなく地下水路に流れる魔力を利用できるように、そして担当者達の魔法を解除するための式が書き込まれている。
爆発等の危険性はあるが、手加減にも似た単純さを感じる。
「ツリーの真下までの道中には、類似した魔方陣はあったか?」
「どうだったかな? 難なく通れたから、覚えていないや」
「……無意識に解除しているパターンだな」
紅茶を飲むコルエを見て、ネフィリアードはため息をついた。
コルエは攻撃魔法以外にも、魔法や呪いの解除を得意としている。天才肌である彼女はすれ違うように、時には服に付いた糸くずを取る様に容易く解除してしまう。戦闘時は重宝されるが、捜査の際には証拠が消えてしまうので悩ましい癖である。
「ニケ。どうだったか教えてくれ」
彼女は軍服の内ポケットから手帳を取り出し、ネフィリアードに渡した。
「幻影魔法の10種の陣。鼠の使役魔法は3種が確認されました。種類こそ多いですが、どれも初歩中の初歩です。幻覚は少しでも違和感を覚えれば看破できます。使役に関しては、監視目的と考えられます」
人影や物音など恐怖を駆り立てる幻影。そして指折り数える程度の鼠に掛けられた使役魔法。子供向けのお化け屋敷の様な可愛げすら感じてしまい程に、弱い魔法ばかりだ。
「足止めではなく、誘導だな」
ここに重要なものがある。進め。見つけろ。
そう言うかのように、通路や壁に等間隔に幻覚魔法の魔方陣が設置されていた。
手帳を返却したネフィリアードは、改めて床に敷かれた魔方陣の模写を見る。
12の小さな陣の内、1つだけ何も描かれず空白の状態だ。
「ねぇ、この空白、どの方角?」
魔方陣を黙って見つめていたアリュスは、ニケに問いかける。
「南です」
「だってさ」
アシュルはネフィリアードを見上げる。
少女が現れた方角は南。そして逃げた方角も南。
そして、つい先ほど結晶で造られた小鳥が、南側で破壊されたのをネフィリアードは完治した。
最初から〈南へ来い〉と言っている。
王都クリアステルの南側と考えるのは安直である。だが、そうであると判明した場合、王都を守る黒翼の団の管轄外になってしまう。
魔女の国ロズマキナが統治する極北大陸の南の地。南防衛拠点アネモス。
極北大陸の中でも最も帝国と距離が近い事から、戦場の最前線となった地方だ。被害も相応に大きかったが、唯一の貿易拠点として王都の次に早く復興が成され、その機能を遺憾なく発揮している。
「……今は王都での情報収集と警備に集中し、女王の返事を待つ。他の部隊にもその様に伝えよう」
四方の拠点を守る魔法騎士の長。赤、青、黄、緑と分かりやすい色合いで配置されている。南は赤翼の団が守りを固める騎士団長は、5年前に新しく就任された。
特にこれと言った問題を耳にしていない。反女王主義者と言う噂は無く、むしろ女王や商業組合などの責任者達と頻繁に連絡を取り合い、外国との関係をどう築き上げるべきか模索する人だ。裏の顔があると考えても、現段階では判断は出来ない。
ネフィリアードは、女王だけでなく赤翼の団と連絡を取り合う必要があると考え、慎重な姿勢を取った。
アリュスの素直な答えに、コルエは満面の笑みを浮かべる。
「うんうん。素敵だよ。君は花が似合う子だからね。折角だから、四季の魔女になってはどうかな?」
幼馴染の反応を楽しもうとしたコルエだったが、当の本人に額を軽く突かれた。
驚いたように大きく見開いた彼女の猫目の中に、ネフィリアードが映る。
「……アリュスを巻き込むな」
「僕は本当のこと言ったまでだ。ネフィだって、彼が四季の花を操る姿を見たいだろう?」
「それよりも、地下水路の調査の報告をしてくれ」
否定をしないと言うことは、願望はあるようだ。面白いものが見られたとばかりに幼馴染へ不敵な笑みを浮かべると、コルエは筒状の丸められた紙の一枚を開いた。
「報告の為には準備が必要だ。その間に、お茶を淹れてもらえるかな?」
紙には、魔方陣と思しき曲線と文字が描かかれている。
魔方陣とは魔法もしくは魔術を使うために、予め書いておく図形だ。
種類や属性によって図形が変わり、強力な式である程に詠唱文の量に比例する形で陣は大きくなる。コルエは地下水路に描かれていた規模を2人に見せるために、あえて等身大の模写を行ったのだ。
「わかった。淹れるから、手早く終わらせてくれ」
ネフィリアードとアリュスは食器棚へと向かい、紅茶の準備を始める。
火の魔法が付与された湯沸かし用のポットに水差しの水を注ぎ入れ、ティーポットに紅茶を入れる。その作業をアリュスは見守り、魔女2人は着々と準備を進める。
「よし。できたよ」
あっという間に、コルエ達の準備が終わった。ソファとテーブルは壁側に寄せられ、広くなった空間に6枚の紙を繋いで出来た魔方陣が敷かれている。
直径が約4メートルの魔方陣は、大きな円の中に12つの小さな円が描かれた特殊な形式だ。全てを同時に発動させる為の術式であるのは明白だ。1人では到底発動できない規模であり、ツリーの無数の飾りに対する影響力を含めて、あの少女と2人以外にも仲間がいる可能性が上がっていく。
「案の定、ツリーの真下の床に書かれていたよ。5つは鑑識の報告書に書かれていたツリーの飾りに向けて。6つはツリーに対しての魔方陣だった」
ネフィリアードから紅茶の入ったティーカップを貰い、コルエは上機嫌で言った。
ツリーに対しては〈横揺れ〉〈縦揺れ〉〈周囲の建物にぶつかる〉〈枝を振り回す〉〈枝を落とす〉〈最後には真っ二つに折れる〉の行動を魔法によってツリーに強制しようとしていた。さらにその12の小さな丸を囲う大きな円には、魔女だけでなく地下水路に流れる魔力を利用できるように、そして担当者達の魔法を解除するための式が書き込まれている。
爆発等の危険性はあるが、手加減にも似た単純さを感じる。
「ツリーの真下までの道中には、類似した魔方陣はあったか?」
「どうだったかな? 難なく通れたから、覚えていないや」
「……無意識に解除しているパターンだな」
紅茶を飲むコルエを見て、ネフィリアードはため息をついた。
コルエは攻撃魔法以外にも、魔法や呪いの解除を得意としている。天才肌である彼女はすれ違うように、時には服に付いた糸くずを取る様に容易く解除してしまう。戦闘時は重宝されるが、捜査の際には証拠が消えてしまうので悩ましい癖である。
「ニケ。どうだったか教えてくれ」
彼女は軍服の内ポケットから手帳を取り出し、ネフィリアードに渡した。
「幻影魔法の10種の陣。鼠の使役魔法は3種が確認されました。種類こそ多いですが、どれも初歩中の初歩です。幻覚は少しでも違和感を覚えれば看破できます。使役に関しては、監視目的と考えられます」
人影や物音など恐怖を駆り立てる幻影。そして指折り数える程度の鼠に掛けられた使役魔法。子供向けのお化け屋敷の様な可愛げすら感じてしまい程に、弱い魔法ばかりだ。
「足止めではなく、誘導だな」
ここに重要なものがある。進め。見つけろ。
そう言うかのように、通路や壁に等間隔に幻覚魔法の魔方陣が設置されていた。
手帳を返却したネフィリアードは、改めて床に敷かれた魔方陣の模写を見る。
12の小さな陣の内、1つだけ何も描かれず空白の状態だ。
「ねぇ、この空白、どの方角?」
魔方陣を黙って見つめていたアリュスは、ニケに問いかける。
「南です」
「だってさ」
アシュルはネフィリアードを見上げる。
少女が現れた方角は南。そして逃げた方角も南。
そして、つい先ほど結晶で造られた小鳥が、南側で破壊されたのをネフィリアードは完治した。
最初から〈南へ来い〉と言っている。
王都クリアステルの南側と考えるのは安直である。だが、そうであると判明した場合、王都を守る黒翼の団の管轄外になってしまう。
魔女の国ロズマキナが統治する極北大陸の南の地。南防衛拠点アネモス。
極北大陸の中でも最も帝国と距離が近い事から、戦場の最前線となった地方だ。被害も相応に大きかったが、唯一の貿易拠点として王都の次に早く復興が成され、その機能を遺憾なく発揮している。
「……今は王都での情報収集と警備に集中し、女王の返事を待つ。他の部隊にもその様に伝えよう」
四方の拠点を守る魔法騎士の長。赤、青、黄、緑と分かりやすい色合いで配置されている。南は赤翼の団が守りを固める騎士団長は、5年前に新しく就任された。
特にこれと言った問題を耳にしていない。反女王主義者と言う噂は無く、むしろ女王や商業組合などの責任者達と頻繁に連絡を取り合い、外国との関係をどう築き上げるべきか模索する人だ。裏の顔があると考えても、現段階では判断は出来ない。
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