37 / 39
37話 外国産の魔動車
しおりを挟む
そうして歪な朝食が終わり、空になった皿が片付けられていく。
縄で縛られていた魔女達は解放されたが、チョーカーに紐が括り付けられる。それは犬を散歩させる際にリードを首輪に付ける動作に似ている。魔女達はリードを持つメイドに従い、会議室から退室した。
彼女達は何処へ行くのか気になったネフィリアードは、会議室の周囲を監視していた結晶の虫に向けて頭の中から指示を出した。ハエトリグモの形をした小さな結晶はその命令を受信すると、ある魔女のズボンの裾の裏地にしがみついた。
「帝王とそのペットの防寒着は?」
食後の紅茶を飲んだ後、外出の準備をしようと立ち上がったフローラはメイドに訊いた。
「はい。こちらに」
メイドの少女が、黒のジャケットとカーキーのロングコートを持って来る。大きさから前者がネフィリアード、後者がアリュス用だ。体毛に覆われたネフィリアードよりも、アリュスはさらに防寒対策が必要と判断されたのだろう。
その配慮に感謝すべきだが、何を考えているのか読み取れない。
「外国で作られたコートだよ。大体の大きさで購入したから、少しきつくても我慢してね」
「わかった」
返事をするネフィリ―アドの後ろでコートを受け取ったアリュスは、フローラの言葉に小さく頷いた。
「よし! おでかけだー!」
2人が上着を羽織ったのを確認すると、フローラは威勢の良い声を上げる。
メイド達は扉を開け、2人はフローラの後について廊下へと出た。
朝食に向かう時に比べ、廊下を歩いているメイド達の数が増えている。フローラ達に気付くと壁沿いに移動し、深々と頭を下げる。13歳か14歳ほどの少女達だ。10歳前後に見える背の低い少女もいるが、個人差があるので正確な年齢は判断できない。
あの魔女達以外、大人がいない。
多感な年頃の筈の少女達の表情はひどく落ち着いており、私語は聞こえず、黙々と仕事をこなしている。
「今日はアタシのオススメの場所を案内してあげる!」
外へと出ると、天井部分が無い魔動車が待機していた。
4人乗りとロズマキナで開発された車とほぼ同じ大きさだが、魔力を動力とする機械は木製の外装で覆い隠されている。複数の色合いの異なる木が使用された流線型の魔動車は、確かなノウハウが刻まれているのが見て取れる。だが、雪の多いロズマキナでは装甲の強度やタイヤの種類に不安がり、外ではなく拠点内で走らせて楽しむ品に見えた。
「外国製の車! いいでしょう?」
「あぁ、うらやましよ。これを遠い国から仕入れるなんて、かなりの金額だったんじゃないか?」
相手の調子に合わせつつ、気になる事を交えながらネフィリアードは訊いた。
「どうだろうね。彼女達が買ったものだから、アタシは知らないや」
彼女達とは、あの魔女達を指している。
話しの流れから、魔動車含め屯所に置かれた調度品や家具の数々は、魔女達が購入したと考えられる。しかし、あれだけの数を購入するには、かなりの額が必要だ。税を私的に利用し、治安維持を担う者が趣向品を頻繁に購入するとなれば、徐々に情報が洩れるはずだ。
特産である織物や染物だけでは賄いきれない。何処かに資金源となる事業があり、売買を拠点全体で隠し続けた事になってしまう。
騎士団長は、一体どこへ行ったんだ。
「さぁ、帝王乗って乗って! 良い場所に連れていってあげる!」
「君が運転するんだ?」
運転席へと座ったフローラを見て、アリュスは問いかける。
「ペットがアタシに声をかけるなんて……まぁ、いいや。そうだよ。アタシって何でもできるからさ」
フローラの意識がアリュスに向いている中、ネフィリアードは頭の中で外に出られた結晶の生物達に周囲の偵察をするよう指示を出す。
「もちろん。安全運転で行くから、心配はいらないよ」
「頼もしい限りだね」
アリュスはそれ以上追及せず、ネフィリアードを見る。彼はその視線に気づくと小さく頷き、共に魔動車に乗り込んだ。
フローラは2人が着席したのを確認すると、魔動車を起動させる。
魔動車の操縦は、船のものよりも二回りほど小さくした舵で行われる。魔力を動力へと変換する金属製の箱に組み込まれた魔方陣が展開され、操縦の陣ときちんと繋がっているかフローラは1つ1つ確認をする。
国が決めた運転許可証の取得資格は18歳からとなっている。フローラはまだ幼いものの、動作確認が手馴れていた。未成年の魔動車の運転を含め魔動車に関する法律や罰則について、国から拠点へと報せてある筈だ。
それをフローラは無視をしている。この拠点は完全に彼女達の支配下にある。
「それじゃ、行くよー!」
舵を両手で握ったフローラは、魔動車を始動させる。
縄で縛られていた魔女達は解放されたが、チョーカーに紐が括り付けられる。それは犬を散歩させる際にリードを首輪に付ける動作に似ている。魔女達はリードを持つメイドに従い、会議室から退室した。
彼女達は何処へ行くのか気になったネフィリアードは、会議室の周囲を監視していた結晶の虫に向けて頭の中から指示を出した。ハエトリグモの形をした小さな結晶はその命令を受信すると、ある魔女のズボンの裾の裏地にしがみついた。
「帝王とそのペットの防寒着は?」
食後の紅茶を飲んだ後、外出の準備をしようと立ち上がったフローラはメイドに訊いた。
「はい。こちらに」
メイドの少女が、黒のジャケットとカーキーのロングコートを持って来る。大きさから前者がネフィリアード、後者がアリュス用だ。体毛に覆われたネフィリアードよりも、アリュスはさらに防寒対策が必要と判断されたのだろう。
その配慮に感謝すべきだが、何を考えているのか読み取れない。
「外国で作られたコートだよ。大体の大きさで購入したから、少しきつくても我慢してね」
「わかった」
返事をするネフィリ―アドの後ろでコートを受け取ったアリュスは、フローラの言葉に小さく頷いた。
「よし! おでかけだー!」
2人が上着を羽織ったのを確認すると、フローラは威勢の良い声を上げる。
メイド達は扉を開け、2人はフローラの後について廊下へと出た。
朝食に向かう時に比べ、廊下を歩いているメイド達の数が増えている。フローラ達に気付くと壁沿いに移動し、深々と頭を下げる。13歳か14歳ほどの少女達だ。10歳前後に見える背の低い少女もいるが、個人差があるので正確な年齢は判断できない。
あの魔女達以外、大人がいない。
多感な年頃の筈の少女達の表情はひどく落ち着いており、私語は聞こえず、黙々と仕事をこなしている。
「今日はアタシのオススメの場所を案内してあげる!」
外へと出ると、天井部分が無い魔動車が待機していた。
4人乗りとロズマキナで開発された車とほぼ同じ大きさだが、魔力を動力とする機械は木製の外装で覆い隠されている。複数の色合いの異なる木が使用された流線型の魔動車は、確かなノウハウが刻まれているのが見て取れる。だが、雪の多いロズマキナでは装甲の強度やタイヤの種類に不安がり、外ではなく拠点内で走らせて楽しむ品に見えた。
「外国製の車! いいでしょう?」
「あぁ、うらやましよ。これを遠い国から仕入れるなんて、かなりの金額だったんじゃないか?」
相手の調子に合わせつつ、気になる事を交えながらネフィリアードは訊いた。
「どうだろうね。彼女達が買ったものだから、アタシは知らないや」
彼女達とは、あの魔女達を指している。
話しの流れから、魔動車含め屯所に置かれた調度品や家具の数々は、魔女達が購入したと考えられる。しかし、あれだけの数を購入するには、かなりの額が必要だ。税を私的に利用し、治安維持を担う者が趣向品を頻繁に購入するとなれば、徐々に情報が洩れるはずだ。
特産である織物や染物だけでは賄いきれない。何処かに資金源となる事業があり、売買を拠点全体で隠し続けた事になってしまう。
騎士団長は、一体どこへ行ったんだ。
「さぁ、帝王乗って乗って! 良い場所に連れていってあげる!」
「君が運転するんだ?」
運転席へと座ったフローラを見て、アリュスは問いかける。
「ペットがアタシに声をかけるなんて……まぁ、いいや。そうだよ。アタシって何でもできるからさ」
フローラの意識がアリュスに向いている中、ネフィリアードは頭の中で外に出られた結晶の生物達に周囲の偵察をするよう指示を出す。
「もちろん。安全運転で行くから、心配はいらないよ」
「頼もしい限りだね」
アリュスはそれ以上追及せず、ネフィリアードを見る。彼はその視線に気づくと小さく頷き、共に魔動車に乗り込んだ。
フローラは2人が着席したのを確認すると、魔動車を起動させる。
魔動車の操縦は、船のものよりも二回りほど小さくした舵で行われる。魔力を動力へと変換する金属製の箱に組み込まれた魔方陣が展開され、操縦の陣ときちんと繋がっているかフローラは1つ1つ確認をする。
国が決めた運転許可証の取得資格は18歳からとなっている。フローラはまだ幼いものの、動作確認が手馴れていた。未成年の魔動車の運転を含め魔動車に関する法律や罰則について、国から拠点へと報せてある筈だ。
それをフローラは無視をしている。この拠点は完全に彼女達の支配下にある。
「それじゃ、行くよー!」
舵を両手で握ったフローラは、魔動車を始動させる。
10
あなたにおすすめの小説
夜が明けなければいいのに(洋風)
万里
BL
大国の第三皇子・ルシアンは、幼い頃から「王位には縁のない皇子」として育てられてきた。輝く金髪と碧眼を持つその美貌は、まるで人形のように完璧だが、どこか冷ややかで近寄りがたい。
しかしその裏には、誰よりも繊細で、愛されたいと願う幼い心が隠されている。
そんなルシアンに、ある日突然、国の命運を背負う役目が降りかかる。
長年対立してきた隣国との和平の証として、敵国の大公令嬢への婿入り――実質的な“人質”としての政略結婚が正式に決まったのだ。
「名誉ある生贄」。
それが自分に与えられた役割だと、ルシアンは理解していた。
部屋に戻ると、いつものように従者のカイルが静かに迎える。
黒髪の護衛騎士――幼い頃からずっと傍にいてくれた唯一の存在。
本当は、別れが怖くてたまらない。
けれど、その弱さを見せることができない。
「やっとこの退屈な城から出られる。せいせいする」
心にもない言葉を吐き捨てる。
カイルが引き止めてくれることを、どこかで期待しながら。
だがカイルは、いつもと変わらぬ落ち着いた声で告げる。
「……おめでとうございます、殿下」
恭しく頭を下げるその姿は、あまりにも遠い。
その淡々とした態度が、ルシアンの胸に鋭く突き刺さる。
――おめでとうなんて、言わないでほしかった。
――本当は、行きたくなんてないのに。
和風と洋風はどちらも大筋は同じようにしようかと。ところどころ違うかもしれませんが。
お楽しみいただければ幸いです。
【完】三度目の死に戻りで、アーネスト・ストレリッツは生き残りを図る
112
BL
ダジュール王国の第一王子アーネストは既に二度、処刑されては、その三日前に戻るというのを繰り返している。三度目の今回こそ、処刑を免れたいと、見張りの兵士に声をかけると、その兵士も同じように三度目の人生を歩んでいた。
★本編で出てこない世界観
男同士でも結婚でき、子供を産めます。その為、血統が重視されています。
パブリック・スクール─薔薇の階級と精の儀式─
不来方しい
BL
教団が営むパブリックスクール・シンヴォーレ学園。孤島にある学園は白い塀で囲まれ、外部からは一切の情報が遮断された世界となっていた。
親元から離された子供は強制的に宗教団の一員とされ、それ相応の教育が施される。
十八歳になる頃、学園では神のお告げを聞く役割である神の御子を決める儀式が行われる。必ずなれるわけでもなく、適正のある生徒が選ばれると予備生として特別な授業と儀式を受けることになり、残念ながらクリスも選ばれてしまった。
神を崇める教団というのは真っ赤な嘘で、予備生に選ばれてしまったクリスは毎月淫猥な儀式に参加しなければならず、すべてを知ったクリスは裏切られた気持ちで絶望の淵に立たされた。
今年から新しく学園へ配属されたリチャードは、クリスの学年の監督官となる。横暴で無愛想、教団の犬かと思いきや、教団の魔の手からなにかとクリスを守ろうする。教団に対する裏切り行為は極刑に値するが、なぜかリチャードは協定を組もうと話を持ちかけてきた。疑問に思うクリスだが、どうしても味方が必要性あるクリスとしては、どんな見返りを求められても承諾するしかなかった。
ナイトとなったリチャードに、クリスは次第に惹かれていき……。
【完結】ここで会ったが、十年目。
N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化)
我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。
(追記5/14 : お互いぶん回してますね。)
Special thanks
illustration by おのつく 様
X(旧Twitter) @__oc_t
※ご都合主義です。あしからず。
※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。
※◎は視点が変わります。
黄色い水仙を君に贈る
えんがわ
BL
──────────
「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」
「ああ、そうだな」
「っ……ばいばい……」
俺は……ただっ……
「うわああああああああ!」
君に愛して欲しかっただけなのに……
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
いい加減観念して結婚してください
彩根梨愛
BL
平凡なオメガが成り行きで決まった婚約解消予定のアルファに結婚を迫られる話
元々ショートショートでしたが、続編を書きましたので短編になりました。
2025/05/05時点でBL18位ありがとうございます。
作者自身驚いていますが、お楽しみ頂き光栄です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる