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朝のおはなし 2
しおりを挟む「いただきます」
千秋の淹れてくれたコーヒーにミルクも入れて、朝食をいただく。美味しい。頭も痛くない。二日酔いではない。でも、昨日の記憶がほとんどないんだよなー。
ふと、千秋に見つめられていることに気がついた。
「美味しい」
「よかった」
千秋はうれしそうに笑うと、自分も食べ始めた。
昨日は、半年付き合った彼氏に振られて、仲間内で失恋パーティーだと飲む口実にされて、バーでお前が主役だと言って、どんどん飲まされて、そんなに弱くないのにへべれけにされて…。そこまでは思い出したんだけど…。途中で合流してきた中に、千秋がいた…気はする…。
「あのー…」
「ん、何?」
サラダを挟んだトーストを頬張った千秋が聞く。一口が大きいなあ。いっぱい食べる男って好き。
「昨日、僕たち…した?」
もう一口頬張ろうとした千秋は、それを中断して、もぐもぐごっくん。口中のものを飲み込んだ。
「し、た、よ」
目を見つめて、思わせぶりに微笑む。あーやっぱり。
「俺が二回いって、彗くんはめちゃくちゃ頑張って一回いったよ。あんまり酔っぱらってたもんだから、なかなかいけなかったみたい。大変だった」
「はあ…なんかごめん」
「写真、見る?」
「えっ!写真??」
「撮っていいって言ったからさ」
「うそうそっ!見せて!!」
千秋が差し出したスマホの画面には僕の痴態が映し出されていた。シーツの上に横たわった状態のバストアップが主で、結合部の写真が二枚あった。
「うえええええ!!」
「ごめん!嫌だったら、消す!消すから」
「消してーー!!それだけ?他にない?」
「ない!ない!あーかわいいのに…もったいない…」
「やだよ!かっこ悪い!消してよ!?」
「わかったって!消すから…ホラ、画像フォルダ見て。消したよ」
「うううう…」
千秋からスマホを受け取って画像フォルダを確認する。昨晩のバーでの他愛ない写真や料理の写真が並んでいる。僕が潰れてカウンターに突っ伏して寝ている写真もあったが、これくらいはいい。
「アリガト…」
千秋にスマホを返す。返されたスマホを無防備にテーブルに置いて、千秋は食事を再開した。僕もトーストにジャムを塗って食べ始めた。
「昨日はなんのパーティーだったの?誕生日?」
「むぐ…とんでもない…僕の…失恋…の…だよ」
「そ、そうだったんだ。どうりでなんかへんだと思った。絶対、彗くんの好みだからって連れて行かれたんだ…」
悪友たちの顔が脳裏に浮かぶ。
「すみません…」
「えっ、謝らないでよ…楽しかったし」
うつむく僕の顔をのぞきこみ、ひそめた声で千秋は言った。
「セックスもよかったし…」
写真は見たけど、記憶にない…!
「そういえば、俺って、元カレに似てるの?」
「え?なんで?」
「だって、好みだって言われたからさ。俺にくっついて離れなかったし」
くっついて離れなかった?なんという失態。それは置いておいて。
「似てない!似てない!!」
僕はぶんぶんと頭を振った。
「四十近いうすら禿のおっさんだよ!ぜーんぜん似てない!」
俺を振った相手はこんなイケメンではない。
「そうなんだ…俺が好みなのは本当?」
「う、うん…」
こういう、一見冷たそうな感じの美形が好き。本当に冷たかったら嫌だけど。細身で筋肉質なのも好き。
「俺も、彗くんのこと、好みだよ」
表情も変えずにさらりと千秋は言った。
「笑顔がかわいいし、困った顔もかわいいし、声もかわいい」
恥ずかしいな…。
「エッチの時もかわいい」
やめてくれ!
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