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第一章 アルカトラからの脱出
8.囚われた子犬
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「だぁぁぁぁぁ!!!面倒くさいんじゃぁぁぁ!!!」
広大なアルカトラのゴミ箱の一角。先ほどまで火花を散らしていた所が霞んで見える程大きく座標が動き、ガジュ達はまた監獄に入れられていた。
【投獄】
シャルルの持つそのスキルは予想以上に強力なものだった。少し棍棒に当たっただけで瞬時に収監、素早くそこから脱出して階段を目指そうとしても今度はシャルルが自身にスキルを使ってテレポート追跡。
「敵を倒す」という事が目標であれば大したスキルではないが、こと「囚人を逃さない」という目標になった時これ程強力なスキルはないだろう。
強力なスキルとアルカトラのゴミ箱。その二つの組み合わせに、ガジュ達は苦戦を強いられていた。いたちごっこと呼ぶべき戦闘の中ガジュ達は一旦脱出を諦め、入れられた檻の中で作戦会議を開始する。
「いやー思った以上に面倒くさいスキルだね。テレポートが間に合わなくなるぐらいの時間あの子の動きを止められたらワンチャンあるかも知れないけど……僕の魔法じゃそんな長時間足止め出来ないや。」
「俺の方ももう少し部屋が暗ければどうにかなるかもしれないが、このままじゃとても無理だな。振り払うにしても棍棒に当たらず奴を倒すにしても、身体能力が足りなすぎる。」
「あー暗くなればなるほど強くなるんだっけ。じゃあ電気を消すのに集中する?高い位置の檻に転送されればなんとかなるかもよ。」
「一個二個ならともかく全部となると無理だろ。一つ壊した時点で電気から遠い檻に転送するようにし始めるだろうしな。」
圧倒的手詰まり感。考えられる策の全てを封じられた状況に嫌気が差してガジュが床に寝転がると、彼はある違和感を覚えた。
「おいユン、お前なんか臭くないか。いくら囚人だからって体ぐらいは拭けよな。」
「なっ!美少女に何を言うのさ!僕はお風呂に毎日入ってる綺麗な囚人だからね!?肌だってこの通りトゥルントゥルンだよ!」
「じゃあこの獣臭い匂いは何なんだ一体……?って、わぁ!?」
普段言葉の荒いガジュにしては珍しい怯えた声。その声が向かった先には、何か茶色い塊がうずくまっていた。ボロボロの布と汚れた指先からしてほぼ間違いなくこの檻に元からいる囚人だろう。ここはアルカトラのゴミ箱、【投獄】によって送られた先に囚人がいることは想定できる。というかむしろこれまで遭遇しなかった事が驚きだ。
ただガジュを何よりも驚かせたのは、うずくまった物体の頭頂部に生えた獣のような耳であろう。
「獣……人……?」
「あれ、まだ気づいてなかったの?さっきシャルちゃんも言ってた通りこの階層は種族犯罪者集団収容階層。つまり悪いことはしてないけどそ・う・い・う・種族だから逮捕された亜人達の監獄だよ。」
亜人。
人ではない種族、獣や魔物、あるいは精霊などと性交するという禁忌を犯した結果生まれた忌むべき存在。こと知性の低い獣との混結である獣人はより一層の差別を受ける。知識としては持っているが、極めて一般的生活を送ってきたガジュにとっては、その存在自体初めてのものであった。
「凄いな……本当に人間の耳と獣の耳と生えてるんだな。この耳の感じともふもふの尻尾からして犬との獣人か。」
「ひっ、すみませんすみません。従順に飼い主の言うことを聞く犬畜生を利用して性交におよんですいません。私の先祖はどうしようもない畜生です。あ、畜生は犬の方ですね!あはははは。」
初めて遭遇した獣人の姿を良く見ようとガジュが囚人に近づいた途端、犬耳の囚人はその少し低い声でペラペラと話し始めた。そのあまりのスピード感と卑屈さにガジュは軽く尻餅をつき、感じた怯えは怒りに変わる。
「おいユン、あの幼女といいこの獣人といい何でアルカトラはうるさい奴ばっかりなんだ。あれか!?普段抑圧されてる反動とかいうのか!?」
「うーん確かにその節はあるかも……。けどこの子のこれはどちらかというと種族によるものだと思うよ。獣人への差別は凄まじいからね。卑屈になるのも仕方がないんだよ。」
「まぁそれは知ってるが……。」
「すみませんすみません。生きててすみません。私なんか所詮は犬っころ。舌出してペラペラ喋るしかないんですやかましくてすみません。そうだ、いっそ吠えましょうか?ワオンワオン!」
生まれた瞬間から犯罪者として扱われ、この窮屈な檻に閉じ込められ、ユンのような好待遇を受けることもなく汚れた人生を送る。その悲惨な運命を考えれば卑屈になるのは当然だろうが、ここまで饒舌なのは個人の問題だろう。そんな事を思っているうちに、ガジュの頭に名案が浮かぶ。
「なぁ、えーと名前知らないけどお前!運動神経はいい方か!?」
「すみませんすみません。獣人なんて所詮獣九割の下等生物ですから考える頭はありませんが動くことだけは得意です。まして犬っころなんて外を駆け回って糞便を撒き散らしながら吠えるのが仕事ですから。お手でもお座りでも何なりとお申し付けくださいすみません。」
結局のところシャルルを突破できない最大の要因は手札の少なさ。ガジュはスキルの発動条件が限定的で、ユンの魔法は奇天烈な物ばかり。ならば新しい手札を増やせばいいのである。ガジュには目の前の従順で饒舌で陰鬱な犬耳少女が逆転の切り札に見えていた。
広大なアルカトラのゴミ箱の一角。先ほどまで火花を散らしていた所が霞んで見える程大きく座標が動き、ガジュ達はまた監獄に入れられていた。
【投獄】
シャルルの持つそのスキルは予想以上に強力なものだった。少し棍棒に当たっただけで瞬時に収監、素早くそこから脱出して階段を目指そうとしても今度はシャルルが自身にスキルを使ってテレポート追跡。
「敵を倒す」という事が目標であれば大したスキルではないが、こと「囚人を逃さない」という目標になった時これ程強力なスキルはないだろう。
強力なスキルとアルカトラのゴミ箱。その二つの組み合わせに、ガジュ達は苦戦を強いられていた。いたちごっこと呼ぶべき戦闘の中ガジュ達は一旦脱出を諦め、入れられた檻の中で作戦会議を開始する。
「いやー思った以上に面倒くさいスキルだね。テレポートが間に合わなくなるぐらいの時間あの子の動きを止められたらワンチャンあるかも知れないけど……僕の魔法じゃそんな長時間足止め出来ないや。」
「俺の方ももう少し部屋が暗ければどうにかなるかもしれないが、このままじゃとても無理だな。振り払うにしても棍棒に当たらず奴を倒すにしても、身体能力が足りなすぎる。」
「あー暗くなればなるほど強くなるんだっけ。じゃあ電気を消すのに集中する?高い位置の檻に転送されればなんとかなるかもよ。」
「一個二個ならともかく全部となると無理だろ。一つ壊した時点で電気から遠い檻に転送するようにし始めるだろうしな。」
圧倒的手詰まり感。考えられる策の全てを封じられた状況に嫌気が差してガジュが床に寝転がると、彼はある違和感を覚えた。
「おいユン、お前なんか臭くないか。いくら囚人だからって体ぐらいは拭けよな。」
「なっ!美少女に何を言うのさ!僕はお風呂に毎日入ってる綺麗な囚人だからね!?肌だってこの通りトゥルントゥルンだよ!」
「じゃあこの獣臭い匂いは何なんだ一体……?って、わぁ!?」
普段言葉の荒いガジュにしては珍しい怯えた声。その声が向かった先には、何か茶色い塊がうずくまっていた。ボロボロの布と汚れた指先からしてほぼ間違いなくこの檻に元からいる囚人だろう。ここはアルカトラのゴミ箱、【投獄】によって送られた先に囚人がいることは想定できる。というかむしろこれまで遭遇しなかった事が驚きだ。
ただガジュを何よりも驚かせたのは、うずくまった物体の頭頂部に生えた獣のような耳であろう。
「獣……人……?」
「あれ、まだ気づいてなかったの?さっきシャルちゃんも言ってた通りこの階層は種族犯罪者集団収容階層。つまり悪いことはしてないけどそ・う・い・う・種族だから逮捕された亜人達の監獄だよ。」
亜人。
人ではない種族、獣や魔物、あるいは精霊などと性交するという禁忌を犯した結果生まれた忌むべき存在。こと知性の低い獣との混結である獣人はより一層の差別を受ける。知識としては持っているが、極めて一般的生活を送ってきたガジュにとっては、その存在自体初めてのものであった。
「凄いな……本当に人間の耳と獣の耳と生えてるんだな。この耳の感じともふもふの尻尾からして犬との獣人か。」
「ひっ、すみませんすみません。従順に飼い主の言うことを聞く犬畜生を利用して性交におよんですいません。私の先祖はどうしようもない畜生です。あ、畜生は犬の方ですね!あはははは。」
初めて遭遇した獣人の姿を良く見ようとガジュが囚人に近づいた途端、犬耳の囚人はその少し低い声でペラペラと話し始めた。そのあまりのスピード感と卑屈さにガジュは軽く尻餅をつき、感じた怯えは怒りに変わる。
「おいユン、あの幼女といいこの獣人といい何でアルカトラはうるさい奴ばっかりなんだ。あれか!?普段抑圧されてる反動とかいうのか!?」
「うーん確かにその節はあるかも……。けどこの子のこれはどちらかというと種族によるものだと思うよ。獣人への差別は凄まじいからね。卑屈になるのも仕方がないんだよ。」
「まぁそれは知ってるが……。」
「すみませんすみません。生きててすみません。私なんか所詮は犬っころ。舌出してペラペラ喋るしかないんですやかましくてすみません。そうだ、いっそ吠えましょうか?ワオンワオン!」
生まれた瞬間から犯罪者として扱われ、この窮屈な檻に閉じ込められ、ユンのような好待遇を受けることもなく汚れた人生を送る。その悲惨な運命を考えれば卑屈になるのは当然だろうが、ここまで饒舌なのは個人の問題だろう。そんな事を思っているうちに、ガジュの頭に名案が浮かぶ。
「なぁ、えーと名前知らないけどお前!運動神経はいい方か!?」
「すみませんすみません。獣人なんて所詮獣九割の下等生物ですから考える頭はありませんが動くことだけは得意です。まして犬っころなんて外を駆け回って糞便を撒き散らしながら吠えるのが仕事ですから。お手でもお座りでも何なりとお申し付けくださいすみません。」
結局のところシャルルを突破できない最大の要因は手札の少なさ。ガジュはスキルの発動条件が限定的で、ユンの魔法は奇天烈な物ばかり。ならば新しい手札を増やせばいいのである。ガジュには目の前の従順で饒舌で陰鬱な犬耳少女が逆転の切り札に見えていた。
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