追放投獄全部乗り越えて復讐を、執着無双の脱獄者〜夜だけ最強?いえ闇の中ならいつでも最強です〜

鮎川重

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第二章 ユギ村の災害

26.ゆきやこんこ

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「よーし、ここら辺にも印を書いておいてくれ。」

 翌日。ガジュ達は恐らく早朝と思われる時間に目を覚まし、村の周辺を練り歩いていた。目的はシャルルに印を書かせること。彼女の【投獄】を活用するには絶対に必要なプロセスだ。

「ねぇガジュ~。こんな寒い中僕達は何をしてるの?昨日のガジュの説明もあんまり理解できなかったからさぁ……。もっと簡潔に説明して欲しいな。」
「あーまぁ要するにだな。ハクア達は北西の山を起点にスノアスキュラの【結界】を順番に壊していく。そして俺達はそれに対抗して、スノアスキュラを待ち伏せするんだ。」
「スノアスキュラの【結界】は日に日に面積を狭めています。だから村周辺に片っ端からシャルの印を書いておいて、スノアスキュラがその地点に来たら即座に【投獄】でテレポート、からの討伐という流れだとシャルは理解しています。」
「そういうことだ。キュキュ、スノアスキュラの音がしたらすぐに教えてくれ。お前ならそれが出来るだろ。」

 ガジュ達の持つ有効な手札は二つ。シャルルの無制限テレポートと、キュキュの獣人としての能力。
 獣人、ひいては亜人が差別されているのは何も見た目だけの問題ではない。人間の知性と魔物や獣の身体能力、加えてスキルと、研究者によっては「亜人こそが人間の進化体である」とする者もいるほどの生物としての能力の高さ。人々はそれを恐れているのである。
 彼女の耳ならこの狭い村の中で蜘蛛が雪中を這う音ぐらい、簡単に聞き分けられる。

「俺達はハクア達のようにお利口な討伐はしない。圧倒的索敵力で村の中心に陣を張り、見つけた奴を片っ端から叩き殺すんだ。」
「なるほど、確かにその方法ならハクアを上回れるかもね。あっちは大した機動力もないだろうし、僕らが【結界】を虫食い状に壊していけば、【結界】を追跡して蜘蛛を探してるハクア達の妨害にもなる。」
「とにかく大事なのはスピードだ。見つけたら一秒でぶっ飛ばすぞ。」

 永遠に夜が続くこの深雪の地において、ガジュの【闇の王ナイトメア】はそこそこの力を発揮している。月明かりが雪に反射してある程度の明るくなってしまっているから大体六十%ぐらいだろうか。蜘蛛一匹捻り潰すには充分すぎる力である。
 ガジュが己の腕にたぎる力を確かめた時、遠くの山から爆発音が響く。

「どうやら……百分の一が死んだみたいだな。あいつらも行動開始してるって訳だ。」
「すみませんすみません遅れを取って!こっちも聞こえました。西に八百メートルぐらいの所です。」
「よっしゃ行くぞシャルル!『クリミナル』四人揃っての初仕事だ!」

 雪に耳を当てて索敵していたキュキュが耳をピンと立てて跳び上がる。いくらカサカサうるさい大型の蜘蛛とはいえ八百メートルも先の微かな音が聞こえるのは驚きだが、仲間である以上は心強い。キュキュの報告を聞き、ガジュ達はシャルルの元へ。即座に【投獄】が使用され、ガジュ達は少し離れた雪の上へと移動する。

「ここら辺にスノアスキュラがいるの?見た所一面雪なんだけど。」
「あの蜘蛛は地面の中を這い回るからな。だからこそ雪の中に音が響くんだ。」

 ガジュはそう言いながら分厚いコートを脱ぎ捨て、腕をまくる。索敵と移動はキュキュとシャルル、戦闘はガジュとユンの領分だ。

「ユン!シャルル達を抱えてちょっと離れろ!ここら辺一帯吹き飛ばすぞ!」
「うぇ、めんどくさい役回りだなぁ……。そうだキュキュちゃん【強化】使ってよ!僕は非力な女の子だからさ!」
「すみませんすみません気が効かなくてすみません。【強化】!」

 ユンには『魔拳』があるから足と手に魔力を集中すれば人二人運ぶのぐらい楽なものだろうと思って声をかけたが、ガジュのそんな考えを凌駕するほど怠惰なのがユンという人間だ。ユンはキュキュのスキルの恩恵を受け、軽々とその場から飛び上がる。

 だがまぁこれで準備は万全だ。安全は確保、久方ぶりの本気を出そうじゃないか。

 ガジュは息巻き、拳を振り上げる。

「よっしゃぁ!!!蜘蛛狩りおっ始めんぞぉ!!!」

闇の王ナイトメア】の力を発揮してまたテンションのぶち上がったガジュが白銀の大地を打ち砕き、雪の塊と蜘蛛の死骸が空に舞う。響き渡る爆音と共に、ガジュにとっても久々の地上での戦闘が幕を開けていった。
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