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第二章 ユギ村の災害

27.セカンドバトルの幕開け

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「おらぁ!二十一匹目!」

 あれから一時間程。完璧に確立された索敵、移動、抹殺の流れによってガジュ達のスノアスキュラ討伐作戦は好調に進んでいた。

「いや~順調順調。みんな優秀だねぇ。」
「ユンはもう少し働くべきです。四人で一つのパーティだというのに一人だけ仕事が少なすぎます。」
「シャルルの言う通りだ。最初は俺も暴れられて楽しかったが、流石にそろそろ疲れてきた。というか【闇の王ナイトメア】の効果が薄れてきてる。」

 ガジュはそう言いながら空をぼんやりと眺める。あっちも似たような効率で動いているとすれば、ハクア達とガジュ達でもう合計五十匹ほどはスノアスキュラを討伐しているだろうか。
 スノアスキュラの数が減った分一匹一匹の【結界】でカバーする範囲が広くなり、その代わりに効果が弱まっているのだろう。暗かった空はどんどんと明るくなっている。日が差して来ればガジュの力は弱まるばかり。疲労だけが体に蓄積していく。

「日が差してるのはいいんだけどさぁ。なんか寒すぎない?夜が続くのも寒さが厳しいのもスノアスキュラの影響なんでしょ?ならなんでこんなに寒いのさ。というかどんどん寒くなってるよね?こんなに寒くちゃキュキュちゃんの尻尾程度じゃ暖まらないよ。」
「すみませんすみません。私の尻尾が薄くてすみません。犬じゃなくてもっと暖かい獣の亜人ならよかったですね。すみませんすみません。」
「確かに寒いな……。ハクアが思ったよりスノアスキュラ討伐に手こずってるのか?あいつに限ってそんなことはないと思うが。」

 なんだかんだ言ってもハクア達『カイオス』は金剛等級だ。狩るのが面倒なだけで一個体が弱いスノアスキュラ如きに苦戦するはずがない。ガジュがそう思考しながら寒さに肩をすぼめていると、キュキュからタイミング良く声がかかる。

「また音がしてます。丁度北西の方からです。」
「北西……?何だ本当にあいつら働いてないのか?まさか北西の山に行ってない?いやそれなら俺達とどこかで遭遇するはずだしそもそも爆発音してたしな……。」
「すみませんすみません。色々と考えてらっしゃるところすみません。北西の方からしている音、これまでのとは全く別の音です。虫の軽い音ではなくて……何かもっと大きな生物が動いているような。」

 キュキュが申し訳なさそうに言葉を紡ぎ、ガジュ達は頭をひねる。勿論この村にだって魔物はいて、ガジュが村にいた頃は日夜そういったものを撃破していた。だが所詮その程度の魔物達だ。【闇の王ナイトメア】の能力を誤解していた頃のガジュが楽勝で勝てる魔物にハクア達が苦戦するはずもない。

 そう考えた時、ガジュの頭に最悪の想定がよぎる。

「もしかしたら……本命はスノアスキュラじゃないのかもしれないな。」
「え、災害種が前菜ってこと?いやいやまさかそんな。やだよ、ユンちゃんこれ以上働かないよ!?」
「シャルル、北西の山に一番近い印にテレポートしてくれ。」
「分かりました。ガジュの想定が確かなら村人に危険が及びます。急ぎましょう。」

 気怠げなユンを無視し、ガジュ達は緊迫した表情でシャルルに近づく。終わらない寒さと存在感を感じないハクア。この二つの組み合わせから考えられる可能性は……ユンの嫌いな面倒臭い事態しかないだろう。

 ◇◆◇

「元々北西にはあまり行く予定がなかったので印があるのはここまでです。後は歩いてください。」
「よし、じゃあ全員俺に捕まれ。キュキュは【強化】の対象を俺に変えて効果時間最短、効果量最高でスキルを使ってくれ。」
「は、はい!【強化】!」

 北西の山の麓に転移したガジュ達は身を寄せ合い、ガジュの指示に従って三人は一斉に彼の大きな体にしがみつく。【闇の王ナイトメア】と【強化】。身体能力強化系のスキルが二つ重なれば山登りなんて一瞬だ。ガジュは雪の大地を踏み締め、空へと高く跳ね上がる。

 そうして跳び上がった空中でガジュ達が目にしたものは……思いもよらないものだった。

「おいおい……何だあの化け物は……。災害種どころじゃない、災害そのものじゃないか。」

 山の中を這い回る巨大な蛇。その体には蒼い鱗とたてがみが生え揃い、蛇というより龍に近しい存在のそれの口には、森の針葉樹と蜘蛛が大量に詰め込まれていた。
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