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第三章 冒険者になろう
35.雑魚に手段は選べない
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「ガジュ・アザッド。戦闘を開始しろ。」
柵の向こう側から聞こえる無慈悲な合図。それと共にガジュは大きく息を吸い、シャイニングフロッグに向かって走り出す。ガジュの最低目標である四十点が何秒で得られる得点なのか分からない以上、急ぐ以外に選択肢などないのである。
「お天道様と蛙の発光のせいで【闇の王】の効果は皆無。今の俺はただの筋肉野郎だが……こっちには経験があるんだよ!」
「ゲロゲ~ロ。」
アルカトラは室内という事もあり常時【闇の王】が多少発動していたし、ユギもスノアスキュラの影響で闇に包まれていた。だが今回は屋外、それも快晴中の快晴。辺りを取り囲む門にはしっかりと松明が焚かれているし、いつものような力押しは不可能。
だがそれでもガジュには経験と知識がある。今回は五体も目の前にいるが、シャイニングフロッグは元来単独行動を好む魔物だ。発光性の小さな虫だけを食することで体を発光させており、その輝きによって雌を引きつけ繁殖する。二足歩行を行う点も特徴的であり、戦闘を行う際は舌から発する毒を武器に、俊敏な動きで相手を地道に破壊していくのである。
「気をつけるべきは舌先だけ。二足歩行なのは俺たち人間も同じだからな。毒ナイフ持った人間と喧嘩するのと変わらないんだよ!」
「ゲロゲ?」
相手はただのちょっと毒があって光るだけの蛙。ガジュは最も近くにいた蛙の腹を殴り、全身の筋肉を爆発させてみたものの……結果は散々なものだった。
「ぐはっ……。」
「ゲロゲロゲェ!」
ガジュの拳はシャイニングフロッグの太ましい腹を凹ませる事もなく、ただ無力に跳ね返される。そうして崩れた体勢にシャイニングフロッグの蹴りが入り、体は簡単に吹き飛ばされてしまった。その隙を魔物が逃してくれるわけもなく、五匹の蛙達がガジュを取り囲み殴る蹴るの暴行と毒吐を繰り返していく。
「死ぬ……死ぬ死ぬ死ぬ!」
ユンの記録の三十二秒はとうに過ぎ、ガジュは何とか蛙の猛攻から逃れようと服を脱ぎ上に放り投げる。この街に来てすぐ買った薄っぺらい服とはいえ、空に投げれば影ができる。といっても横には松明、目の前の蛙もピッカピカだから精々効果量は十%程度だが、蛙から逃げるぐらいならば可能。
ガジュは何とか体勢を整え、再び蛙達と睨み合う。
「あぁクソ……結局俺はスキル無しじゃ蛙程度にすら勝てない実力ってことかよ!」
「一分経過。」
痛みを堪えながら次の一手を考えていると、役人の時間連絡が入る。
まずは状況を整理するところからだ。
【闇の王】を頼ることは不可能、さっき使った服はもう蛙の手によってボロボロ。かといってガジュの素の筋力では蛙に傷一つ付ける事ができない。というかそもそも先ほどの攻撃でガジュはかなりの瀕死状態。どう考えても、このままいけば不合格どころかガジュの命が尽きる。
「手段を選んではいられない、か……。」
ガジュは冒険者協会に自分が真っ当な人間であることを証明しにきている。それ故にある程度のモラルと常識を持って行動しようと思っていたが、そんな場合ではなくなった。例え非難されようと、やるしかないのである。
「おら、こっちだ蛙共!」
「ゲロゲ~!」
シャイニングフロッグ達は聴覚に依存した生き物だ。ガジュはその性質を利用してシャイニングフロッグ達を誘導し、蛙達を柵の付近に集めていく。この場で最も火力のある生物はガジュではなくシャイニングフロッグ。ならばその火力を利用しない手はない。
「頼むから怒らないでくれよ冒険者協会……!冒険者ってのは時に手段を選ばない生き物なんだよ!」
三方を取り囲んだ蛙達。背後にある柵に体を押し付けたガジュは足元に落ちていた石ころを掴み、一匹の蛙の口に手を突っ込んで石ころを喉奥に押し込んでいく。
ガジュの知るシャイニングフロッグのもう一つの生態。それは普段から発光性の虫という特殊な餌ばかりを食べているが故に、シャイニングフロッグは通常の蛙が持っている胃袋を吐き出す機能が異常なまでに発達しているというもの。時にその勢いは圧倒的な火力を発揮し、木製の柵ぐらいは簡単に破壊するのである。
「痛みぐらいは我慢しろよ……俺の体ぁ!」
吐き出された金色の内臓がガジュの体と背後の柵を吹き飛ばし、血と木片が飛沫となって空を舞う。そうして生まれた影は……ガジュにとってこれ以上ない好機を産んでいた。
一秒もない時間に合わせて拳を振り抜き、眼前の蛙、そして柵と板で囲まれた試験会場までも。ありとあらゆるものがガジュの手で破壊されていった。
「はぁ……ガジュ・アザッド、記録二分二十一秒。」
うむ、何とも言えない秒数である。
柵の向こう側から聞こえる無慈悲な合図。それと共にガジュは大きく息を吸い、シャイニングフロッグに向かって走り出す。ガジュの最低目標である四十点が何秒で得られる得点なのか分からない以上、急ぐ以外に選択肢などないのである。
「お天道様と蛙の発光のせいで【闇の王】の効果は皆無。今の俺はただの筋肉野郎だが……こっちには経験があるんだよ!」
「ゲロゲ~ロ。」
アルカトラは室内という事もあり常時【闇の王】が多少発動していたし、ユギもスノアスキュラの影響で闇に包まれていた。だが今回は屋外、それも快晴中の快晴。辺りを取り囲む門にはしっかりと松明が焚かれているし、いつものような力押しは不可能。
だがそれでもガジュには経験と知識がある。今回は五体も目の前にいるが、シャイニングフロッグは元来単独行動を好む魔物だ。発光性の小さな虫だけを食することで体を発光させており、その輝きによって雌を引きつけ繁殖する。二足歩行を行う点も特徴的であり、戦闘を行う際は舌から発する毒を武器に、俊敏な動きで相手を地道に破壊していくのである。
「気をつけるべきは舌先だけ。二足歩行なのは俺たち人間も同じだからな。毒ナイフ持った人間と喧嘩するのと変わらないんだよ!」
「ゲロゲ?」
相手はただのちょっと毒があって光るだけの蛙。ガジュは最も近くにいた蛙の腹を殴り、全身の筋肉を爆発させてみたものの……結果は散々なものだった。
「ぐはっ……。」
「ゲロゲロゲェ!」
ガジュの拳はシャイニングフロッグの太ましい腹を凹ませる事もなく、ただ無力に跳ね返される。そうして崩れた体勢にシャイニングフロッグの蹴りが入り、体は簡単に吹き飛ばされてしまった。その隙を魔物が逃してくれるわけもなく、五匹の蛙達がガジュを取り囲み殴る蹴るの暴行と毒吐を繰り返していく。
「死ぬ……死ぬ死ぬ死ぬ!」
ユンの記録の三十二秒はとうに過ぎ、ガジュは何とか蛙の猛攻から逃れようと服を脱ぎ上に放り投げる。この街に来てすぐ買った薄っぺらい服とはいえ、空に投げれば影ができる。といっても横には松明、目の前の蛙もピッカピカだから精々効果量は十%程度だが、蛙から逃げるぐらいならば可能。
ガジュは何とか体勢を整え、再び蛙達と睨み合う。
「あぁクソ……結局俺はスキル無しじゃ蛙程度にすら勝てない実力ってことかよ!」
「一分経過。」
痛みを堪えながら次の一手を考えていると、役人の時間連絡が入る。
まずは状況を整理するところからだ。
【闇の王】を頼ることは不可能、さっき使った服はもう蛙の手によってボロボロ。かといってガジュの素の筋力では蛙に傷一つ付ける事ができない。というかそもそも先ほどの攻撃でガジュはかなりの瀕死状態。どう考えても、このままいけば不合格どころかガジュの命が尽きる。
「手段を選んではいられない、か……。」
ガジュは冒険者協会に自分が真っ当な人間であることを証明しにきている。それ故にある程度のモラルと常識を持って行動しようと思っていたが、そんな場合ではなくなった。例え非難されようと、やるしかないのである。
「おら、こっちだ蛙共!」
「ゲロゲ~!」
シャイニングフロッグ達は聴覚に依存した生き物だ。ガジュはその性質を利用してシャイニングフロッグ達を誘導し、蛙達を柵の付近に集めていく。この場で最も火力のある生物はガジュではなくシャイニングフロッグ。ならばその火力を利用しない手はない。
「頼むから怒らないでくれよ冒険者協会……!冒険者ってのは時に手段を選ばない生き物なんだよ!」
三方を取り囲んだ蛙達。背後にある柵に体を押し付けたガジュは足元に落ちていた石ころを掴み、一匹の蛙の口に手を突っ込んで石ころを喉奥に押し込んでいく。
ガジュの知るシャイニングフロッグのもう一つの生態。それは普段から発光性の虫という特殊な餌ばかりを食べているが故に、シャイニングフロッグは通常の蛙が持っている胃袋を吐き出す機能が異常なまでに発達しているというもの。時にその勢いは圧倒的な火力を発揮し、木製の柵ぐらいは簡単に破壊するのである。
「痛みぐらいは我慢しろよ……俺の体ぁ!」
吐き出された金色の内臓がガジュの体と背後の柵を吹き飛ばし、血と木片が飛沫となって空を舞う。そうして生まれた影は……ガジュにとってこれ以上ない好機を産んでいた。
一秒もない時間に合わせて拳を振り抜き、眼前の蛙、そして柵と板で囲まれた試験会場までも。ありとあらゆるものがガジュの手で破壊されていった。
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うむ、何とも言えない秒数である。
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