追放投獄全部乗り越えて復讐を、執着無双の脱獄者〜夜だけ最強?いえ闇の中ならいつでも最強です〜

鮎川重

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第四章 犯罪者共は学をつける

69.馬鹿と学者

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「さて、激励は済ませた。後は本格的に策を練るだけだな。」

 授業という名の決起集会終了後の教室。ユン達がいつものように魔物討伐に出向こうかとしたところ、ガジュから声がかかる。  
 あのギラギラした目つきと大きな声。ユンもなんとなく嫌な予感はしていたが、どうやらそれは大正解だったようだ。

「まさか今からやる気?僕ら黒曜等級に上がるためにこの学校にいるんだよ?僕が言うのもなんだけど……働いた方がいい思うな。」
「いや、魔物退治なんてのは二の次だ。一に復讐、二に報復、三、四がなくて五に叛逆。それ以外に何がある。」
「そんなキラキラした目で言われてもなぁ。ま、いいや!僕はお昼寝するから好きに会議しておいてよ。ふわぁ、おやすみ。」

 争いを見るのは好きだが、そこまでの過程に興味はない。ユンはそんなことを態度で示すように眠りにつき、ガジュは残りの一人に目を向けていく。

「はぁ……せめてルウシェとキュキュがいる研究室まで行かせてください。シャル一人で今のガジュを相手したくありません。」
「まぁそうだな!どうせあいつらも俺達昼コース側の人間だし、ルウシェなら作戦を練るのも得意だろ。キュキュは生徒でも何でもないが……まぁ勝つためだ!適当に理由をつけて参戦させよう!」
「それはどうかと思いますが……。まぁ行きましょう。ユンも運んであげてくださいね。」

 常日頃からピンと伸ばした背筋を少し折り曲げ、シャルルは教室を後にする。ガジュもその後に続き、眠りこけたユンを背中に乗せてルウシェの研究室を目指していった。

 ◇◆◇

「ふむ、それで私のところへ来たわけだね。ベリオット冒険者学校創立祭、あれは非常に楽しいお祭りだからね。私も教師の一員として全力を尽くすつもりだよ。勿論、君もだからねケモ耳君。」
「へ、あ、は、はい。す、すみませんすみません。」

 今日は医者とナースだろうか。例のごとく珍妙なコスプレ服に身を包んだルウシェは、ガジュの話を大層楽しそうに聞いてくれた。ルウシェは変態ではあるものの教師としてはかなりまとも。共に教鞭を振るうものとしてガジュもそのことは理解しているが、やはりこの服装とテンションだけは慣れる気がしない。

「ルウシェ、お前は俺達が教えたり学んだりしている間、キュキュに一体何をやってるんだ。言っておくがそいつは危険人物だからな?それも本人に自覚がないから制御不能だ。あんまり弄ぶと殺されるぞ。」
「あぁ十分理解しているとも。私はケモ耳君に精神的負荷をかけて実験しているのだよ。知っての通り、スキルは基本的に一人に一つ。これが前提条件なんだが、ケモ耳君は異例中の異例だ。そもそもスキルは脳みその一部が変形した異能体と呼ばれる器官によって発動されるとされているんだがーー」
「待て待て。結論から話せ結論から。お前らみたいな研究者は話が長いんだ。」
「ふむ、それもそうか。まぁ端的に言うと、ケモ耳君は多重人格じゃない。言うなれば彼女は三人の集合体なんだ。どういうことかは分からないが……彼女には異能体が三つある。」

 その言葉を聞き、ガジュの視線は自然とキュキュの頭部へと向く。異能体が三つ、ということはつまり脳の形状そのものが人間と異なっているわけだ。亜人の類ではたまにあることだが、キュキュの場合は犬の獣人。犬も人も脳の構造は然程変わらないはずであるし、ここに関してはキュキュの血統は関係ないのだろうか。

 ガジュの頭をそんな思考が駆け巡っていき、忘れかけていた真の目的を思い出す。

「ってそんなことを考えている場合じゃないんだよ。ルウシェ、お前頭いいだろ。どうすればハクア達を叩き潰せる。俺達の対戦相手である夜コースの生徒達はどれぐらいの実力なんだ。」
「なんだ、もうケモ耳君の学術的考察はいいのかい?話そうと思えば後数百時間は話せるんだが……。」
「難しいことを考えても仕方ないからな。キュキュの人格を制御する方法が分かったら教えてくれ。それより、今はハクアだ。ハクアを叩き潰す事だけ考えろ。」
「ルウシェ、この頭の悪い人間に学説を話すのは無駄です。どうせ半分程度しか理解してくれません。早く作戦を考えてあげてください。」

 横で気怠げに話を聞いていたシャルルが口を挟み、ルウシェがようやく口をつぐむ。ガジュとルウシェでは知能に雲泥の差がある上、今のガジュは狂気的なまでにハクアのことしか考えていない。そのことをようやく理解したようで、ルウシェは横にいるキュキュの頭を撫でながら再び話し始める。

「戦に勝つことにおいて、重要なのは敵を知ることよりもまず仲間を知ることだ。今覇王君に呼びに行って貰っている人物がいるんだが……まずは彼と話してから策を練るといい。」
「あぁ?誰と話せってんだよ。生徒の事なら流石に知ってるぞ。」
「生徒について知らなかったら私は教員仲間として君をぶっ叩いているよ。君に会ってもらいたいのはどちらかといえばその……ハルカ君?だったかそんな名前の彼に近しい存在だ。」
「ハルカではなく、ハクア。相変わらず君は人の名前を覚えるのが苦手だな。人の名前を覚える事はコミュニケーションにおいて初歩的であり最重要の工程だ。特に君は教員だろう。生徒の名前一つ覚えられず出席番号で呼んでいると聞いたぞ。ここが将来を担う若者達の育成機関である以上、もっと生徒個人に目を向けて教育するべきだ。」

 チマチマとクルシュに小言を述べながら研究室に入ってくる小柄な男。顔には大きな眼鏡がかけられ随分と聡明な印象を覚えるが、彼の胸元にはガジュにとっても因縁深い、黒曜の勲章が輝いていた。
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