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第四章 犯罪者共は学をつける
80.第一回有識者会議
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「レザ、シャルに提案があります。」
山中、また別の木陰にて。正義の看守シャルルと治癒士レザは対面していた。キュキュ組ともガジュ組とも違う。互いに非戦闘員であるが故に、二人の間に殺気は飛びかわない。ただ冷静な会話だけが行われていく。
「シャルはこの戦いに意義を感じていません。加えて例の中継機とやらも……見た所シャルル達を映してはいないようです。」
「あれは生徒達の教材用。加えて市民への娯楽用だからね。派手なスキルも繊細な技術も持たない僕らには誰も興味がないって事だよ。」
「なるほど、では尚更好都合です。シャルル達はこの戦闘をボイコットしましょう。勝敗は適当にコイントスでもすればいいですし。シャルル達にはもっと、他にするべきことがあるはずです。洗脳の件の話し合いとか。」
シャルルが口に出した二文字を聞いて、レザの眼鏡が曇る。この二文字を聞いてガジュならシャルル自身にかけられていたものの事を思い浮かべるのだろうが、相手がレザなら別だ。こっちはこっちで、自分にかけられた洗脳の事を思い浮かべる。
「ガジュを追放された時、貴方達は何者かに操られていたのではありませんか?そしてそれは今も尚継続している。あるいは継続しているフリをしている。」
「ははっ……。驚いた。上手く隠しているつもりだったんだけどね。まさか君みたいな小さな子に見破られるとは思わなかったよ。君、頭がいいんだね。」
「シャルはこの世界の事を知りません。知らないからこそ疑問に思うのです。ガジュのように無思考に生きてはいません。」
もう完全に戦闘の意思はないのだろう。レザの手にかろうじて握られていた短剣はいつの間にかしまわれ、その場にあぐらをかいて座り始める。戦闘を放棄するかのようなその行動に従い、シャルルも握っていた棍棒を鞄にしまい、男の前に正座する。
「何から話そうか……というか話すことは特にないんだ。僕らはガジュ追放事件の事を何も覚えていない。よく覚えていないが、僕はあの一件を全てハクアの独断だと思い込み、ハクアは僕の独断だと思っていた。」
「操られていたのはお二人だけですか?あの魔道士の方は。」
「彼女は多分全くの無関係だ。操られていないのは勿論、彼女が主犯という事もないだろう。彼女はいつだって何も知らされていない。蚊帳の外とは彼女の為にある言葉だと言ってもいい。」
「分かりました。では何故これまでその件を黙っていたんですか?ガジュ本人に弁解すれば、和解も可能だったのでは?まぁガジュの事ですから……骨の二、三本は折られるかもしれませんが。」
シャルルが一番気になっている部分はそこである。誰が操られていて、その目的は何で、真犯人が誰なのか。そういった事を推察するには、ありとあらゆる知識が不足している。シャルルの中で対応できる最大点はガジュとハクアの関係性だろう。
「何も分かっていないからさ。僕らは何者かによって操られ、ガジュを追放させられた。何者かの目的がわからないままガジュと和解することは、多くの危険性を孕んでいる。」
「それでも、ガジュに伝えておくことは必要なのでは?何者かに干渉されないような場所で簡潔に事実を伝えることぐらいは可能だと思います。必要なら、シャルも手を貸しますし。」
「超高性能のテレポートスキルだっけ。確かにそれぐらいは可能かもしれないけど……僕らが洗脳されたということは、リエの冒険者協会の内部にまで手を伸ばすことが出来る存在ということだ。そんな奴を完全に撒くことなんて不可能だと思わないかい?」
シャルルの提示した論がことごとく否定され、次の言葉を紡ぐこともできず押し黙る。自分が考えられる程度のことは軒並みハクアとレザの間で熟考された後なのだろう。それを経た上で、彼らは裏切り者を演じる道を選択しているのだ。
「それなら、シャルルも犯人探しに協力します。勿論ガジュが貴方達を殺すのも完璧に阻止して、です。シャルは、人を操るような奴が一番許せません。」
「それは助かるよ。犯人探しはともかく、ガジュの手綱を握るのは僕らより君達の方が向いていそうだ。」
「犯人の心当たりはあるんですか。」
「まだ。ただ、大方予想はついてる。魔族って知ってるかい?僕らもジュノから聞いただけの情報だからあまり詳しいことは分からないが、奴らが犯人ということならこの理不尽な状況を説明できる。」
ここに来ても、出てくるのは同じ名前だ。『チャリオット』に『テンパランス』。シャルルが既知の魔族は二種類だけだが、そのどちらも果てしない力を持っている。確かに奴らなら、ハクアともあろう男を一切バレることなく洗脳することも可能。シャルルがそう考え、魔族に関する情報共有を図ろうとした時、遠くの山から爆発音が響く。
そしてそこに見えたのは……一匹の巨人であった。
「な、何ですかあれ!?魔物、いやあんな魔物がいるなんて聞いた事がありません!」
「あれは……。はぁ、だからあんな子を仲間にするのは止めろと言ったんだ!」
「訳知りですか!?早く教えて下さい!あっちは確かユンが行った方向のはずです!」
「あれは僕らの仲間、ジュノだよ。彼女は……さっき話に出た魔族。その一人なんだ。」
後悔に満ちたレザの言葉が鼓膜を突くと同時に、シャルルは素早くレザに近づき【投獄】を発動する。このままでは、ユンが死ぬ。確実とも言える未来を見据え、シャルルの体は山中から消えていった。
山中、また別の木陰にて。正義の看守シャルルと治癒士レザは対面していた。キュキュ組ともガジュ組とも違う。互いに非戦闘員であるが故に、二人の間に殺気は飛びかわない。ただ冷静な会話だけが行われていく。
「シャルはこの戦いに意義を感じていません。加えて例の中継機とやらも……見た所シャルル達を映してはいないようです。」
「あれは生徒達の教材用。加えて市民への娯楽用だからね。派手なスキルも繊細な技術も持たない僕らには誰も興味がないって事だよ。」
「なるほど、では尚更好都合です。シャルル達はこの戦闘をボイコットしましょう。勝敗は適当にコイントスでもすればいいですし。シャルル達にはもっと、他にするべきことがあるはずです。洗脳の件の話し合いとか。」
シャルルが口に出した二文字を聞いて、レザの眼鏡が曇る。この二文字を聞いてガジュならシャルル自身にかけられていたものの事を思い浮かべるのだろうが、相手がレザなら別だ。こっちはこっちで、自分にかけられた洗脳の事を思い浮かべる。
「ガジュを追放された時、貴方達は何者かに操られていたのではありませんか?そしてそれは今も尚継続している。あるいは継続しているフリをしている。」
「ははっ……。驚いた。上手く隠しているつもりだったんだけどね。まさか君みたいな小さな子に見破られるとは思わなかったよ。君、頭がいいんだね。」
「シャルはこの世界の事を知りません。知らないからこそ疑問に思うのです。ガジュのように無思考に生きてはいません。」
もう完全に戦闘の意思はないのだろう。レザの手にかろうじて握られていた短剣はいつの間にかしまわれ、その場にあぐらをかいて座り始める。戦闘を放棄するかのようなその行動に従い、シャルルも握っていた棍棒を鞄にしまい、男の前に正座する。
「何から話そうか……というか話すことは特にないんだ。僕らはガジュ追放事件の事を何も覚えていない。よく覚えていないが、僕はあの一件を全てハクアの独断だと思い込み、ハクアは僕の独断だと思っていた。」
「操られていたのはお二人だけですか?あの魔道士の方は。」
「彼女は多分全くの無関係だ。操られていないのは勿論、彼女が主犯という事もないだろう。彼女はいつだって何も知らされていない。蚊帳の外とは彼女の為にある言葉だと言ってもいい。」
「分かりました。では何故これまでその件を黙っていたんですか?ガジュ本人に弁解すれば、和解も可能だったのでは?まぁガジュの事ですから……骨の二、三本は折られるかもしれませんが。」
シャルルが一番気になっている部分はそこである。誰が操られていて、その目的は何で、真犯人が誰なのか。そういった事を推察するには、ありとあらゆる知識が不足している。シャルルの中で対応できる最大点はガジュとハクアの関係性だろう。
「何も分かっていないからさ。僕らは何者かによって操られ、ガジュを追放させられた。何者かの目的がわからないままガジュと和解することは、多くの危険性を孕んでいる。」
「それでも、ガジュに伝えておくことは必要なのでは?何者かに干渉されないような場所で簡潔に事実を伝えることぐらいは可能だと思います。必要なら、シャルも手を貸しますし。」
「超高性能のテレポートスキルだっけ。確かにそれぐらいは可能かもしれないけど……僕らが洗脳されたということは、リエの冒険者協会の内部にまで手を伸ばすことが出来る存在ということだ。そんな奴を完全に撒くことなんて不可能だと思わないかい?」
シャルルの提示した論がことごとく否定され、次の言葉を紡ぐこともできず押し黙る。自分が考えられる程度のことは軒並みハクアとレザの間で熟考された後なのだろう。それを経た上で、彼らは裏切り者を演じる道を選択しているのだ。
「それなら、シャルルも犯人探しに協力します。勿論ガジュが貴方達を殺すのも完璧に阻止して、です。シャルは、人を操るような奴が一番許せません。」
「それは助かるよ。犯人探しはともかく、ガジュの手綱を握るのは僕らより君達の方が向いていそうだ。」
「犯人の心当たりはあるんですか。」
「まだ。ただ、大方予想はついてる。魔族って知ってるかい?僕らもジュノから聞いただけの情報だからあまり詳しいことは分からないが、奴らが犯人ということならこの理不尽な状況を説明できる。」
ここに来ても、出てくるのは同じ名前だ。『チャリオット』に『テンパランス』。シャルルが既知の魔族は二種類だけだが、そのどちらも果てしない力を持っている。確かに奴らなら、ハクアともあろう男を一切バレることなく洗脳することも可能。シャルルがそう考え、魔族に関する情報共有を図ろうとした時、遠くの山から爆発音が響く。
そしてそこに見えたのは……一匹の巨人であった。
「な、何ですかあれ!?魔物、いやあんな魔物がいるなんて聞いた事がありません!」
「あれは……。はぁ、だからあんな子を仲間にするのは止めろと言ったんだ!」
「訳知りですか!?早く教えて下さい!あっちは確かユンが行った方向のはずです!」
「あれは僕らの仲間、ジュノだよ。彼女は……さっき話に出た魔族。その一人なんだ。」
後悔に満ちたレザの言葉が鼓膜を突くと同時に、シャルルは素早くレザに近づき【投獄】を発動する。このままでは、ユンが死ぬ。確実とも言える未来を見据え、シャルルの体は山中から消えていった。
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