追放投獄全部乗り越えて復讐を、執着無双の脱獄者〜夜だけ最強?いえ闇の中ならいつでも最強です〜

鮎川重

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第四章 犯罪者共は学をつける

87.お叱り

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「はぁ……。君達、まずは全員そこに座りたまえ。」

 翌日。何やかんやで創立祭の全日程を乗り越えた一同は、空き教室でヘサに正座を命じられていた。いつもの問題児四人は勿論、今回は『カイオス』の面々もそこに並んでいる。

「最早何から問い詰めるべきかを議論したいところだが……取り敢えずは礼を言おう。ガジュ氏、私の宿敵であるチャリオットを倒してくれたこと、心から感謝する。」
「あれで良かったのかよ、お前も一発ぐらいぶん殴りたかっただろ。」
「構わない。私は君と違って復讐に駆られていた訳ではないからな。仲間を殺した危険な魔族を、純粋に危惧していた。一人の冒険者としてな。」

 チャリオットはガジュの全力の一撃によって粉砕。ただ鎧の欠片だけを残して消滅した。ガジュからすれば本当に倒せたのか不安でならないが、ヘサ曰く、【測量】の反応が一つ減っているから間違いなく死んでいるらしい。

「特別講師だと言うのに四分の三がカメラを壊した事についても叱りつけたいが……。そうだな。この流れでガジュ氏から叱りつけようか。一体何だあの戦いぶりは。魔族に気をつけろと私は言ったはずだが。」
「体を乗っ取られた件なら、自力で脱出したからいいだろ。むしろ魔族の介入を受けても、意思が強ければ自力で追い出せるってことが分かったんだ。今後を考えればプラスとも言える。」
「詭弁が過ぎる。本当に実験台になろうとして意図的に体を乗っ取られたならばともかく、君は復讐に駆られていただけだろう。」

 ここまで言われては最早言い返すことも出来ず、ガジュは大きな体を縮こまらせて下を向く。確かにチャリオット出現時のガジュは完全に我を失っていた。いざハクアと戦うとなった時の興奮は予想以上、あの時のガジュの頭には何の意思も残っていなかった。

「その後の一件もだ。何だあのデマは。ハクア氏の仲間が凶暴化した?あまりにもデタラメが過ぎるだろう。確かに彼女は大きく姿を変えたが、チャリオットは全く別物だ。」
「けど皆信じてくれただろ?この通り、死にかけの奴もいるし、物的証拠も十分だ。」
「映像証拠がそれを否定しているがな。後から辻褄を合わせる身にもなってくれたまえ。」

 戦闘中にその係はユンに押し付けた覚えがあるが、実際手を回すのはヘサのような真面目な人間だ。何とも可哀想な事だが、この件についてガジュは特に反省していない。間違いなくあの場ではあれが最善だったし、戦闘終了直後にシャルルから激怒の暴行を受け、未だに背中が痛む点を除けば、全てが完璧な作戦であった。

「話の矛先をここで一旦変えようか。結局……その子は一体何者なんだね。ハクア氏。」

 ヘサの視線がガジュから移動し、つぎはぎだらけで抜け殻、というよりずた袋に近い状態のジュノに話が移る。結局のところ、ガジュもこの少女が何者かは分かっていない。ただシャルルが【投獄】で一同を連れてきた時、一番瀕死だった上に一番正体不明だったから利用した。ただそれだけの関係だ。

「彼女はジュノ。俺達『カイオス』の一員であり……魔族だ。元、を付けた方がいいかも知れないがな。」
「元?」
「あぁ。ガジュ達とユギ村で別れた後、試練の迷宮近くの森で拾ったんだが、彼女が言うには『自分は生まれたての魔族であり、始祖の冒険者ユノに憧れて魔族の巣を抜け出してきた。』とのことだった。明らかに怪しかったが……当時の俺達は魔族の事を詳しく知らなかったし、ジュノはとんでもなく優秀だったから仲間に引き入れたんだ。『試練の迷宮はユノが作ったダンジョン、それ故に踏破すれば何かヒントが掴めるかも知れない』という甘言でな。」

 ハクアの語る極めて突飛な話にガジュ含め事情を知らなかった組が口を開け、『カイオス』ら知っていた組は後めたそうな表情で俯く。
 魔族の存在はガジュもつい最近まで知らなかったし、ハクアからジュノの優秀さは聞いている。確かにその状況であればジュノを仲間に引き入れるのも当然、というかガジュでも絶対にそうするだろう。

 ガジュがそこまで理解したところで、この件における重要人物のユンが口を開く。

「魔族を仲間にしちゃったことは別にどうでもいいんだけどさ、この子はそもそもどういう魔族なの?」
「ジュノの本名は『ジプシー』。可能性と未熟さの象徴らしく、他の魔族のように人と契約して力を貸すことは出来ないそうだ。まぁ俺に魔力を供給しているあれが実質的な契約なのかも知れないが、チャリオットのように人の体を奪うことは不可能だ。」

 魔族を味方にする。その上で最大の懸念点は間違いなくそこだろう。チャリオットやテンパランスのように人の体を奪うのであれば迂闊に近くにおいておけないが、その点はハクアによって素早く否定される。
 そして続け様に、ユンは更なる懸念を重ねていった。

「体の件は?その体、どうみても彼女のものじゃないよね。そもそも魔族って実態を持たないんでしょ?テンパランスやチャリオットを見る限り核となる部分ぐらいはあるみたいだけど、ジュノの体は全部生身だよね。突然巨大化した件は?」
「ジュノは未熟だから、他の魔族のように霞となって移動したり実体化させる事ができず、出会った時も生首ひとつだった。だから俺達で体を用意したんだ。ジュノが誤解を産む表現をしたかも知れないが……彼女の体は一から作った人工物だ。まぁ技術力の問題でだいぶ歪になったがな。巨大化した方は魔物の死体を使った試作品だ。」

 恐らく嘘を付くつもりなど毛頭ないのだろう。ハクアは一切の澱みなくユンの質問に答え、手元のジュノをつつく。今の彼女の状態は死んでいるわけでも何でもなく、ただ壊れた依代に閉じ込められたような状態なのだろう。新たに依代を用意すれば、再び蘇る。どうやらそういうことらしい。

 そう思った頃には、再び人々の視線はガジュに集まっていた。といっても今回はヘサが睨んでいるからではない、因縁の相手たるハクアが、一心にガジュを見つめていたからだ。

「ジュノの件を話した事だ、この際こっちのケリも付けておこう。」
「あぁ?何だ、ここでもう一回おっ始めるか?ここは室内だからな、電気さえ消せば圧倒的に俺が有利だぞ。」
「真逆だ。ガジュ、和解しよう。俺は今から……お前に全てを話す。」

 魔族の次は恨みべきハクア。次々とガジュに手が差し伸べられ、復讐の炎が揺らいでいく。
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