追放投獄全部乗り越えて復讐を、執着無双の脱獄者〜夜だけ最強?いえ闇の中ならいつでも最強です〜

鮎川重

文字の大きさ
89 / 124
第四章 犯罪者共は学をつける

88.和解の時

しおりを挟む
「ハクア……!何を急に!」
「いいんだレザ。和解だけじゃない、その先の話もする。」

 訳知り顔のレザが口を挟み、ハクアがそれを手で制しながら立ち上がる。突然の和解提案にガジュの頭は張り裂けそうだが、周囲の面々はそうでもなさそうだ。
 八人も周りにいるというのに、ガジュ同様困惑しているのはラナーナただ一人。ヘサに関しては自前の頭脳で事のあらましを察しているのだろうが、他は全員、既に事情を知っているような顔をしている。

「端的に説明しよう。俺達はかつて、お前を追放しアルカトラへと投獄した。だがあれは俺含め『カイオス』の面々の意思ではない。」
「はぁ?何だ、まさかお前らもシャルル同様操られていたって言うのか?ふざけんじゃねぇぞ。」
「そのまさかだ。最も俺らが操られていたのは全くの別人、いや人ですらない。名前までは不明だが……魔族、それが全ての元凶だ。」

 一片の曇りもない澄み切った瞳で、ハクアがただただ真実だけを告げていく。ガジュ達がチョココロネと引きこもりに翻弄されている間、ハクアはハクアで色々と情報を集めたのだろう。ユギ村で出会った時の迷いに満ちた瞳との差が、それを物語っている。

 だが、ガジュがそう易々と納得するはずもない。

「信じると思うか?言い訳にしか聞こえない、そのクソみたいな話を。」
「信じてくれとしか言いようがない。俺達はお前を追放する気なんて毛頭なかった。お前を弱いと思っていたことは事実だが、弱いからと言って邪険にするほど俺達の人間性は腐っていない。」

 ガジュは誰よりも仲間を大切にする人間だ。それは幼少期に無力なハクアを守って生きていたからであり、それは守られていた側からしても変わらない。剣もなければ魔力もない、ただの少年だったハクアはずっとガジュに守られ、ガジュの背中を追って育ってきている。

「お前らは、その話にいつ気付いたんだ。そんだけ確固たる自信を持って喋ってるってことは、ある程度情報を集めた上でここにいるんだろ。」
「気付いたのは最初に試練の迷宮に行った時だ。魔族が犯人だと気付いたのは、二度目に行った時。ジュノと共に探索した事で、色々と情報を得ることが出来た。」
「じゃあ何故ずっと黙ってた。さっさと言えば良かっただろうが。そうすれば俺がアルカトラを命懸けで脱獄する必要も、ユギで竜を叩き殺す必要もなかった。」
「守る為だ。敵の正体も分からない、動機も分からない状態で全てを明かしても、再び操られるのがオチだからな。」

 ここら辺の話も、ガジュとラナーナ以外は概ね知っているのだろう。特に誰かが割り込むこともなく、ただ淡々と。ガジュとハクアは言葉を交わしていく。

「じゃあ何故今俺に話した。結局犯人が魔族と分かっただけで、それ以上の進展はしていないんだろ。それなら話す意味はないはずだ。これまで通り、仲良く喧嘩しておけばいい。」
「理由は二つだ。一つは、俺とレザが再び操られる事はないと確定したこと。これはジュノが仲間になった時に彼女の口から宣言されている。魔族同士の干渉は薄らと感じ取れるらしい。そしてもう一つは、お前が魔族に打ち勝った事。」
「さっきから思ってたが、お前らはそのジュノとかいう新顔を信用しすぎじゃないか。そいつがお前らを操ってる、って可能性をお前は完璧に否定出来るのか?」
「出来る。お前はレザのスキルを覚えてるか?」

 レザ・アスターク。
 魔法の中でも治癒魔法に特化した術士で、冒険者協会の中でも数少ない治癒士を名乗る男。

 八年間の冒険者生活を共にした仲間の情報を真剣に思い出そうとするも、ガジュの頭に欲しい情報は一ミリも降りてこない。その苦悶の表情を読み取ったようで、流石に張本人から援護が入る。

「知らなくて当然だよ。使える場面が限定的すぎてほとんど披露する機会がなかったからね。【朗々】。相手の喉仏に触れると、相手は嘘がつけなくなる。普通に生きてれば人の喉仏を触る機会なんて無いし、冒険者が拷問をする機会なんて早々無い。これまではろくに役に立たなかったけど相手がジュノなら別だった。」
「出会った時は生首、だったか。なるほどな。」

 ガジュが納得し、今度は拳を握る。裏切りの件がハクア達の意思ではないという事は分かった。分かったからこそその先の話が重要だ。この和解はそうスマートに行くものではない、ただ矛先が変わるだけの話である。

「それで、次はどの魔族をぶっ飛ばせば良いんだ。俺が魔族を倒したタイミングで打ち明けたって事は、そういう事だろ。」
「そうだ。ガジュ、いや『クリミナル』には俺達『カイオス』と協力して全ての元凶たる魔族を叩き殺して貰いたい。」
「だからその魔族がどこにいるかって聞いてんだ。魔族が犯人だと分かってるってことは、何かしらのヒントを掴んでんだろ。」
「あぁ。俺達ももう少しで全ての真相に辿り着けそうだったんだ。だが力が足りず道半ばで帰宅した。そう、試練の迷宮からな。」

 まぁ、話の流れからしてそうだろう。薄々感じていた想像上の言葉がそっくりそのままハクアの口から飛び出し、ガジュはゆっくりと立ち上がる。正直言ってまだジュノのこともハクアのことも信頼したわけではない。だがまぁ、真相を突き止めに行くぐらいはいいだろう。

「行くぞ、試練の迷宮。全部のカタをつけるためにな。」

 世界中の冒険者は、結局あそこに帰着する。それは、因縁を抱えた男達にしても同じことだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

酔っぱらったせいで、勇者パーティーを洗脳してしまった

透けてるブランディシュカ
ファンタジー
悪友のせいで酔ったら。(※重複投稿しています)仲仁へび

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

処理中です...